Ep.16"熟れた宝石"

 妹達と別れた後。ストレージを見ながら何が必要かを考える。

 フェイタルラビッツの角は50個以上ある。金属と顔料は買えばいい。道具も揃っている。足りないのは金と木材。

 よし、森に行こう。木を切り倒しつつ蛇を倒していけばいいかな?


 そう思い、準備をしていざ出陣。街をぬけ平原へ出る。襲ってくるうさぎさんを倒しつつ進む。久々の戦闘なのでうさぎさん相手でも気が抜けない。

 森に到着した。前は浅い場所で伐採していたが今日は少し深い所まで行ってみようと思う。この森は広い。ラビリソスを囲んでいる平原をさらにぐるっと囲んでいる。なのでボス方面へと行かないとプレイヤーに会うことはあまりない。

 邪魔されても嫌なので今日はボスと真逆のところに来ている。

 また、ソロなのでハイドスネークに備えて【危機察知】を、木材を効率よく得るために【伐採】というスキルもとった。


 ――――――――――

【危機察知】

 死角からの攻撃や隠れている敵に敏感になる。常時発動している。

 ――――――――――


 ――――――――――

【伐採】

 木を切り倒すスピード上昇。獲得出来る木材の質、数量の向上。自動で発動する。

 ――――――――――


 というわけで木を切り倒すところから始めよう。

 前はゴブリンの斧を使っていたが今日は“鋼の斧(劣)”を使う。自分で作った。剣とはまた違う技術が必要で大変だった。それでも最低限使用出来る出来上がりにはした。


 片側に切込みを入れる。受け口と言うやつだ。真横はまだやりやすかったが斜め上から切り進むのが難しいのだ。チェーンソーが欲しい。

 ゴブリンとハイドスネークが襲ってきたので返り討ちにした。意外と戦えた。

 なにより斧が強い。斬る、殴る、投げるという使い方ができる。これに突くが加わったらスコップじゃん。つまりスコップ最強?


 切込みとは反対側に追い口という切込みを入れる。これは水平に切ればいいので神経は使わなかった。しかし、切っている最中に木が倒れ始めたので急いで避難した。周りの木が倒れるのに巻き込まれてさらに何本か折れた。やっちまった感が半端ない。

 今後は倒れる方向といつ倒れてもいいように気をつけよう。


 ☆ ☆ ☆


 20本くらい切り倒した。木材も大量に集まった。

 日も傾いてきたのでそろそろ帰ろうかな。


 そう思ったときだった。


 森の奥の木のうち1本が光始めた。まるでかぐや姫の物語みたいだ。何事かと思って近づく。近づいて行くと不思議なことが起こっていた。

 なんと、ものすごいスピードで緑色の木の実が、いやが実り始めていたのだ。宝石の色が緑色から赤色になった。

 直感的に今取らなければと感じて急いで木に登り宝石をもぎ取る。数自体はそんなに多くない。

 全部取れるかと思ったが時間切れになったのか、残った宝石は一気に黒くなっていき遂に地面に落ちて地面に落ちて消えてしまった。

 自分の手に残った真っ赤に熟れた宝石? を見てみる。


 ――――――――――

 名称:ジュエルフルーツの果実

 希少値:8

 品質:A


 とても希少な果実。

 上品な甘みがあり、高級スイーツに使われる。巷では“食べる宝石”と言われている。

 しかし、採れるのは1本の木で年に1度のみである。また、皮が本物の宝石のように硬く、分厚く、綺麗なため、装飾にも使用される。

 ――――――――――


 え? えーっとぉ。……うん。ラッキーと思っておこう。

 確認したら全部で5個採れたようだ。ど、どうしよう! 1個は食べてみたい。現実では料理は良くするけどこっちでは1度もしたことがない。次の街まで行けたら料理挑戦してみよう。あ、でも生で食べてみたい。皮もアイミーさんのやつに使えばいいよね?

 うん。天の導きだと思おう。死んで落としても嫌だから急ごう。くっ、こういう時にこの鈍足は腹が立つ!

 働け! 俺の足!

 あ、でも帰る前に枝も採らせて! なんか希少そうだし!


 ☆ ☆ ☆


 ギルドまで無事に戻ってこれた。

 何故かフェイタルラビッツにたくさん遭遇した。なので強行突破してきた。モンスタートレインというなかれ。ちゃんと倒しきった。今日この日ほど初期装備が耐久値∞であることと【治癒体質】に感謝したことは無い。ただ、防具もボス戦前には揃えておきたいな。

 さて、アクセサリーの制作に入りたいと思う。作業場を借りて販売所で買った専用紙に作ろうと思っているアクセリーの図面を書いていく。

 この専用紙は図面と素材を記入することでどのステータスを上げるのかを設定できるようになる優れものだ。ただし上昇値は品質なども関与するため決めることが出来ない。その他追加効果も決めることは出来ない。

 完成品の正面、側面、裏面の見取り図を描く。次そのはパーツ毎の見取り図を描いていく。大きさとなんの素材を使うのかを決める。


 描き始めてから3時間。細かな修正と使用する素材の吟味をしていた。何故素材の吟味が必要かと言うと同じ名前のものでも品質やちょっとした色や柄が違うのだ。なので一つ一つを自分の目で見てどれを本番に使うかを決めなければいけない。

 運営さん、力入れるとこ間違ってると思う。

 ここで問題が発生した。似非宝石ことジュエルフルーツの加工方法が分からないのだ。販売所に“宝石用細工セット”なるものが売っていたがこれを使っていいのか分からない。しかもジュエルフルーツは数がないので失敗もあまり許されない。ギルド職員に聞こうとも思ったがなんか騒ぎになる予感がしたので止めておいた。

 どうするかは明日考えるとして片付ける。日付も跨いだことだし今日はもう寝る。おやすみなさい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る