Ep.14"キラキラしたもの"
アイミーさんからの依頼から5日目。何を作ろうか決めたいと思う。
昨日は妹たちに渡す“三日月のネックレス”を作っていたが、角を20個使って4個ぎりぎり作ることが出来た。しかも毒耐性まで付いた。染色にたまたま見つけたスミレを使ったからか作業の途中に紛れ込んだ俺の血(蛇毒抗体含有)が原因かは不明だ。
経験値的にも美味しく、レベルが上がったし【治癒体質】のレベルが上がった。さらに【生産】の中の【細工】からアーツが生えてきた。名前は【路の刻み手】。効果は自分が彫った跡を装飾した時、品質補正(極微)、追加効果付与(極微)で、完成したアクセサリーに追加効果が付与される確率がほんのちょびっと上がるアーツだ。
どうやら【生産】のスキルはどんな生産行為でも経験値は入るが、アーツを解放するための熟練度は鍛治なら鍛治、細工なら細工というように、別々になっているようだ。
新しく生えてきたスキルは【鋭敏な手先】。アクセサリー制作時にクリティカル補正極(微)、品質補正(極微)、追加効果付与(極微)という効果がある。正直いってもう少し前にこのスキル欲しかったし、やはり細工にもクリティカルがあったかと思った。削った時の音がこれまた気持ちいい音ならクリティカルらしいです。全然出したことないね。というかわかんねぇよ。地味すぎるんだよ。
なんて言うか全ての行動に対してクリティカル判定があるんじゃないかと思い始めた。
閑話休題。本題であるアイミーさんに贈るものを考えよう。まず三日月のやつ。あれは確定で入れよう。たくさん練習したから上手くやれるはずだ。
あれって中の円と外の円を上手く重ねるのが難しいんだよなぁ。
月と合わせるとしたら何がいいか。花? 太陽? スッポン? 何がいいんだろうか?
この街に花屋ってあるのかな? 有るんだろうなぁ。だってアイミーさんに花束を持ってくる男どもってもう日常風景になってるし。
街歩いてみるか。
☆ ☆ ☆
ぜはぁ、ぜはぁ、やっと、お、はぁ、追いついた。はぁ、はぁ、はぁ。
こんなにも息切れしている理由。それは、花屋が生産ギルドがある場所と街の真反対にあったからだ。運が悪いなと思い歩き、花屋に到着したと思ったら花屋を目前にシャッフルが起きたのだ。しかも生産ギルドが元あった方向。つまり反対側へと飛んで行った。この街は思いの外広いので端から端までは俺の足だと歩いて1時間くらいかかるのだ。それを3回繰り返した。もう足がパンパンだ。……誰だよ近所って言ったヤツ。誰も言ってねぇよ。
こんな疲労感まで作り込まなくてもいいだろと愚痴りつつ花屋“ヴィシニティ”に入る。
お店のおばちゃんに聞いてみる。
「月と相性のいい花って何ですか?」
「月かい? 坊ちゃん運がいいねぇ。それならあれしか無いだろう」
そう言って指さしたのは向日葵を銀色にしたような花。なんか花弁からキラキラとした雪のようなものが落ちている。
「なんて言う花ですか?」
「あれは“
なるほど、やはり向日葵の月版だったか。でもなぜに月に顔を向ける?
「向日葵と一緒だよ。向日葵は太陽が放出する魔力を追って、向月葵は月の放出する魔力を追って顔を向け続けるんだよ。そのおかげでモンスターに狙われやすくてね。滅多に入荷しないんだが運良く手に入ったのさ」
向日葵までもファンタジー設定なのか。てかレアアイテムなのかい。ラッキーだったな。
「じゃああのキラキラしたものは?」
「あれは魔力結晶のくずだよ」
魔力結晶? なんか強そう。
「魔力結晶はね、基本的には長い年月をかけて大気中の魔力が固体になって現れたものだよ。しかもそのままにしておくとまて大気に溶けてしまう」
「なんか希少そうだな」
「とんでもなく希少だよ。魔力の塊だからモンスターによく狙われるからね。でも、向月葵や向日葵はそれを年中作る。大きさはは雪みたいに小さいけど高純度の魔力結晶だよ。まぁすぐ溶けちまうけどね」
おばちゃんはそう言うと豪快に笑う。
「言っちゃ悪いがこんな街の花屋で扱っていい植物なのか?」
「良いんだよ。魔術触媒としては使えないしね。人間には星の魔力は扱えないからね。だから観賞用の用途しかないんだよ」
え、待ってまた重要そうなこと言ったよ。情報過多過ぎない?
整理しよう。
まず1番知りたかったこと。月と相性のいい花“
この花は月の魔力を追う。この時点で天体にも魔力というものがあるということが分かる。
向月葵や向日葵は高純度の魔力結晶を年中作る。
魔力結晶はモンスターによく狙われる。
星の魔力は人間には扱えない。
……。思考放棄しよう。考えるのは考察厨どもだけでいいんだよ。
希少そうだしある分全部買って帰るか。
「全部で何輪あるんだ?」
「2輪だよ。2輪で40000Gだよ」
高っ!
1輪で20000Gもするのか! だがまぁ、今の俺ならギリッギリ買える!
その花買った。ついでに植木鉢と土と肥料もちょうだい。
「毎度あり。水をあげて月に照らしておけば枯れることは無いよ」
生命力強っ。
おばちゃんありがとな。なんかあったらまた来るよ。
そう言い残して生産ギルドに向かう。……また真反対にあるや。ダル。
☆ ☆ ☆
「戻りました〜」
「あら、どこ行ってたの?」
そう声をかけてきたのはアイミーさん。基本的に向こうから話しかけてくることは無いので周りの嫉妬の目線がすごい。
「まぁ、資料を探しに」
「あと三日だけど完成する?」
「大丈夫です。既に構想はできていますから」
「期待してるわね」
そう言ってアイミーさんは奥の方に引っ込んで行った。
と、同時に周りの男どもが詰め寄ってきた。
「おう、坊主。ちょいとツラ貸せやァァ」
「悪いようにはしねぇからよォ」
「ぷッ」
顔イケメンなのにヤンキーのセリフ言ってるの面白っ!
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