Ep.8"心のこもったゴミ"

 さて、やって来ましたうさぎさん平原。

 そこかしこでプレイヤーだと思われる人達がうさぎと戦っている。

 俺も街の門を離れて石を拾いつつ平原を歩く。


「キュッ!」

「おっ」


 うさぎが飛び出してきた。白くてもふもふしてる。ただ、目が殺意でギラついている。


「キュキュッ!!」


「よっ」


 真っ直ぐ飛び込んできたうさぎを避ける。俺でも見てから避けれるほどの速さだ。と思ったがAGI1が悲劇を起こす。正面衝突は免れたが、腕を弾かれた。HPが2削れる。

 気を引き締めて短剣を構える。持ち方、構え方何も分からないのでとりあえず包丁持ちだ。


「キュキュッ!!」



 また飛び込んできた。

 今度は短剣をうさぎが飛び込んでくるであろう場所に避ける。

 するとうさぎは自分から短剣に当たりに行くことになった。

 だが、俺のSTRが低いのかうさぎのVITが高いのかうさぎの頭に当たっただけで押しのけられた。だが、頭には血の代わりに一筋のダメージエフェクトが見て取れる。どんだけ削れたかは分からないがダメージを与えたことは確かなようだ。


「キュイッ! キュッ!」


うさぎが怒りに震える。鳴き声をあげて威嚇する。


「なるほど。このSTRちからだとやはり物理エンジンの助けが必要か? 要検証だ」


 考え事は置いといて、今度はこちらから短剣を振りかぶって攻撃を仕掛ける。


「ほっ!」


「キュイッ!!」


 今度はしっかりと刃がくい込んだ。首元に。

 恐らく急所だったのだろう。HPがゼロになったのかポリゴン片になりながら大気に散っていく。足元にはドロップ品であろう毛皮と肉が落ちていた。

 どうやらこのゲームでは直接ストレージに入る仕様では無いらしい。

 毛皮と肉を手に取ってみる。


 ――――――――――

 名称:うさぎさんの毛皮

 希少値:1

 品質:F


 うさぎさんの白くてもふもふした毛皮。

 肌触りがよく、衣類によく使用される。

 良く取れるため安い。

 ――――――――――


 ――――――――――

 名称:うさぎさんのお肉

 希少値:1

 品質:F

 

 うさぎさんのお肉。

 獣臭さや草っぽい香りがなく、甘い。

 とても美味しい。

 良く取れるたが、消費が多いためそこそこの値でで売れる。

 ――――――――――


 うーん。表記に悪意を感じる。モンスターの名前をうさぎさんにすんな! もっとモンスター感のある名前にしろよ!

 まぁいい。それから【治癒体質】のおかげかHPが回復していた。

 次行こう!


 ☆ ☆ ☆


 只今午前11:30です。昼前までの成果がうさぎさんを20匹倒した。

 ついでにレベルがふたつ上がり戦闘スキル【短剣】が生えてきた。ステ振りは街に戻ってからやろうと思う。そしてうさぎさんのレアドロップがこちら。


 ――――――――――――

 名称:うさぎさんの骨

希少値:1

品質:F

 うさぎさんの遺骨。

 そこまで硬い訳では無いため武器には向いていない。

 栄養は豊富のため肥料に向いている。

 あまり取れないためそこそこの値で売れる。

 ――――――――――――


 うーん。遺骨言うなし。やはり悪意を感じる。だが金になる。


 ドロップしたのが毛皮×20、肉×20、骨×1だ。ドロ率はレアドロでも5%はありそうだ。まぁ、ソシャゲの星四より排出率が高いと思ったらいい感じなんじゃないか?


 ☆ ☆ ☆


 街に戻ってきた。いや、すっかり忘れてた。うん。どこに何があるのかわかんねぇ。

 そう。俺は、シャッフルの餌食になった。

 1時間に1度建物の場所が入れ替わるということをすっかり忘れていたため、街に入った瞬間に迷ってしまった。ログアウトは宿屋のベットが推奨されているため、宿屋を探さなければならない。昼食が12:00からなのであと20分程で見つかればいいのだが。


 しばらく探して噴水を見つけた。噴水はポータルでもあるのでここから生産ギルド前に飛べる。いざゆかん。

 ふわっとした感触に包まれ景色が塗り替えられる。


「おぉ」


 ほんとに一瞬だった。凄いな。


 ギルドで換金すると合計が4000Gとなった。一気に金持ちになった気分だ。受付嬢に宿屋の今の位置を聞くとちょうどギルドの向かいにあるのが宿屋だと言うので感謝を告げて宿屋を目指す。


 宿屋のおばちゃんに部屋をかりたい旨を伝えて使用料の500Gを支払う。これでゲーム内時間で1日使用可能らしい。その間なら何度ログアウトしようが良いらしい。NPCはログアウトのことを深眠しんみんと言っている。まぁそんなことは別にどうでもいいかと気にしないでおきつつベッドへダイブする。

 昼からは生産ギルドの設備を借りつつ何か作ってみようかなと思いログアウトした。


 ☆ ☆ ☆


 再びログイン。先程ログアウトしたら腰の上に妹がのっていたのでびっくりした。心臓に悪いのでやめてもらいたい。


 さて、宿屋から出たのはいいのだがよくよく考えたらシャッフルされているのだったと気づく。だが、今回も運が良かったのか目の前に“魔術ギルド”があったのでポータルを解放して生産ギルドに向かった。


 生産ギルドの販売所にて500Gの初級鍛治道具セットを買った。それと素材となるものを何も持っていなかったので1番安かった“粗末な銅”を買った。10個で2500Gだった。所持金が残り500Gになってしまったのだが、それも設備のレンタル代として、消えていった。

 しくしくしく。


 鍛治設備の前へと陣取る。500Gで借りられたのは炉と金床と金槌、冷水と温水のみ。これ以上は金を積まないと無理だそうだ。

 やはりお金が全てであるな。


 さてこの銅は見るからに酸化しているが今はどうしようもないのでそのまま炉に入れる。やり方はスキル【生産】の【鍛治】が教えてくれる。

 しばらくしてから真っ赤になった銅を取り出し金床の上で固定しつつ金槌で叩いていく。


 あ、手が滑った。え、難しいぞコレ。


 冷めてきたらもう一度炉に入れる。これを繰り返していき理想の形に整えていく。


 あ、別のとこ叩いてしまった。どうしよう。


 形を整えたら最後にまた炉に入れる。そこから出したらしばらく置いといて冷水に一気に入れる。この工程を焼入れという。


《レベルアップしました》


 できたァ!!!“粗末な銅”1個で短剣なら1つはできるはずが全て使って1個だけ! 9回の失敗を経てようやく完成したこれの性能は!


 ――――――――――――

 名称:粗末な短剣(劣)

 製作者:小魚K

 耐久力:20/20

 要求値:STR10

 希少値:PM

 品質:G


 小魚Kが初めて作った銅出できた短剣。出来上がったのは表に出せないゴミのようなものだが、心のこもったゴミである。

 ――――――――――――


 お、おおぉぉ……ゴミ言うな。心のこもったゴミって何やねん。感動を返せ。

 腹立つなぁ。よし、金貯めてもっと作ろう。システム如きすぐ見返してやるわ。

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