Ep.7"作ったり売ったり"
迷宮が存在しない迷宮都市。そう言われる由縁はすぐに明らかになった。
鐘がなる。それと同時に地面が沈んだ。いや、違う。周囲の建物が空に
その建物たちは空中を縦横無尽に飛んでゆく。
「兄貴。逃げるよ」
「何から? 何処へ?」
「空飛ぶ家から空き地へ」
妹様大先生の話によると飛んでいる家はどこに着陸するのかは不明。前まで道だと思っていたところも次の瞬間には壁になっていたりするらしい。また下敷きになった人は死ぬ。圧死だ。
そう。これこそが迷宮都市と言われる由縁であり、ベータテストプレイヤーが足並みを揃えることになった理由。建物が空を飛んでいる時に外に出れたとしても次のシャッフルで潰され死亡。
蘇生地点である噴水も飛んでいるため復活しても空から落ちて死亡。
デスペナルティが回復することがほぼ無かったらしい。
だが【迷宮感覚】というスキルが発見されたことによりこれが解決。
このスキルは空き地や道になる予定の場所がなんとなくわかるようになるらしい。また、この街限定で迷わなくなるという効果がある。
これにより死亡事故が減っていき、ついにシャッフルの攻略に成功した。この時の喜び様は凄まじかったのだと言う。
「ここなら安全。ちなみに【迷宮感覚】の取得条件はこの街のポータルを全て解放すること」
ポータルとはファストトラベルを可能とする水晶玉のことだ。基本街にひとつ設置されていて、水晶玉の半径10メートルが転移できる範囲だ。
ポータルって街にひとつなのにここには複数あるのか? と疑問に思ったがこの街は街並みがシャッフルによって変わるため、主要施設にはミニポータルが設置されているらしい。これを使うと他のミニポータルの場所にワープできる。ただしこの街限定だ。でも便利だ。
「この街のポータルは噴水にある。ミニポータルは領主館と戦闘ギルドと生産ギルド、魔術ギルドの前にあるから頑張って」
説明を受けているとシャッフルが終わったのかゆっくりと降りてきた。デカくてがっしりとした建物だ。“戦闘ギルド”“生産ギルド”と書いてある建物が向かい合ってる。
俺にも運が回ってきたのだろうか?
「ケイ、解放と登録してきたらどうだ?」
マリリンが勧めてきた。が登録ってなんだ?
「ギルドカードと言う名の身分証明書の発行ということだよ。これがないとギルドから出されるクエストを受けることが出来ないんだ。あと街に入るのにも金がかかる。ギルドのどれか1つに登録してたら十分だから」
ただ、ギルドによってクエスト内容などの細部は違うらしい。
戦闘ギルドはその名の通り戦うことが主となるらしい。クエストも討伐や素材の納品等が多いらしい。
生産ギルドはものを作ったり売ったりすることが主になる。武器防具の生産納品、消耗品の生産納品のクエストが多い。店を開いたり露店をする時もここで手続きをしなければならない。
魔術ギルドはまだ誰も登録したことがないので謎に包まれている。だって魔術使えないし。
といった説明をギャル子から受けた。
「だったら生産ギルドだな」
そう言うといつもニコニコしているアキャリもびっくりしたようにこちらを見た。どうやらみんな一緒に戦うもんだと思っていたらしい。
「残念ながら俺はスキルもステータスも生産寄りだ。というかまともに戦えない」
なんせ取得スキルが【生産LvⅠ(Ⅲ)】【跳躍LvⅠ】【変装LvⅠ】【念力LvⅠ】【治癒体質LvⅠ】【短命LvⅠ】。STRもINTも11だからな。
ただ、取得スキルもあれだしステータスも低いので秘匿させていただく。
「ごめんだけど、生産系で生き残れるの? 作られたものの大半がNPCの方が性能いいよ?」
「まじか。でもなるようになるさ」
んじゃ、登録してくるか。と思って行こうとしたら呼び止められた。別れる前に便利情報を教えてくれるらしい。
採取したもの等を鑑定する時はスキル【○○知識】が必要だと教えて貰った。その知識に関連する書物を1冊読めば覚えられるらしい。生産系の俺には必須スキルだな。図書館もこの街にあると教えてもらったので行ってみよう。
最後にフレンドに追加をした。彼女らは今から狩りに行くらしい。俺が戦闘系だったら彼女らの適正レベル帯まで連れてってパワーレベリングをさせたそうだが、それもできなさそうとのことなのでここでお別れとするそうだ。
まぁ、俺もその方が都合がいいんだけどな。
というわけで生産ギルドに入ってみる。
☆ ☆ ☆
さて、生産ギルドについて説明をしよう。
ギルドには貢献度というものがあり、それによって出来ることが違ってくると言う。生産ギルドでは貢献度が高ければ高いほど良い設備や道具を買うことが出来るし、お店もいい物が買えるらしい。その他色々待遇が良くなるらしい。
貢献度のランクはG〜AそしてSと上がっていくようだ。分かりやすい。
なんで異世界設定なのに英語があるんだとか言ってはいけない。御法度である。
この階級が身分証――ギルドカード――に名前と一緒に表示される。犯罪を犯したら自動でカードに印が付くらしい。何その機能と思った。
ちなみに受付嬢は可愛いかった。求婚してるプレイヤーもいたが、用心棒っぽい人に外につまみ出されてた。まるで摘まれた子猫みたいで少し笑ってしまった。
ただ、ひとつ大変だったのは……俺が性別女だと思われたことである。そんなに女っぽいのか俺は? と言うか認識阻害さん仕事してないよね。
ギルドには資料庫というものがあったのでそこで幾つか本を読み込んだ。
因みにリアルでの特技が速読だったりする。そのため思ったより早く読み終えた。というか半分以上が絵だったので簡単に読めた。
おかげで【植物知識】【鉱石知識】【魔獣知識】が手に入った。
武器防具類や獲得アイテムは知識系スキルが無くても詳細が見れるらしい。ただ自分で手に持たないとダメらしい。都合がいいのか悪いのか分からないがゲームなのでそんなものかとも思った。
☆ ☆ ☆
気を取り直して金を稼ぎに行く。生産活動を始めようと思っても道具がない。初級鍛道具セットが500Gで売られていた。お金の単位はゴールド。覚えやすくて助かる。
しかし、ゲーム開始当初はプレイヤーは1銭たりとも持っていない。よってモンスターを倒すなりクエストを達成するなりして金を稼がなければならない。
というわけで平原に行こうと思う。正式名称は“うさぎさん平原”通称“平原”だ。出てくるモンスターが全てうさぎらしい。
行ってみよう。
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