Ep.6"俺のモノ"
さて、デスペナで時間も食ってしまった事だし時計台へ向かうか。いい感じの時間でもあるし。道はずっと真っ直ぐだから迷うことも無さそうだ。
時計台の前まで来た。まだ時間には少し時間に余裕があった。
そうだ。色々あったからログの確認をしよう。死ぬ直前になんか聞こえた気もするし。
メニューからログを見てみる。
――――――――――
《ログ》
Real Time:6月5日
Game Time:6月5日
初めてログインする。
辺境迷宮都市“ラビリソス”に初めて降り立つ。
プレイヤー名"ランド"に殺害される。
称号【薄命】を獲得。
特殊スキル【
噴水広場にて蘇生。
――――――――――
突っ込みたいことは幾つかあるが。
……えっ何その初心者とスキル。どうすりゃ詳しく見れるの?
えーと、なんだって? ステータス欄で長押しをする。あいわかった。
―――――――――
称号
【薄命】
命短き燃えよ英雄。
何か死んでて草。By運営
《獲得条件》
初ログインから3秒以内に死に直面し、そこから1秒以内に完全に死ぬ。
《報酬》
特殊スキル【
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――――――――――
スキル
【
【儚き光】
任意の量のHPを消費し、次の攻撃を消費したHPに比例した最高の一撃とする。
発動詠唱は【それは儚き{消費HP}の光】。
【???】
封印中。条件を満たしてください。
【???】
封印中。条件を満たしてください。
【???】
封印中。条件を満たしてください。
使用条件
HPが満タンである。
代償
スキル発動中はスキル、アイテムでの回復不可。
途中でのキャンセル不可。
効果終了後、全ステータスが10%ダウンする。
――――――――――
なんだ……なんなんだ! この強そうで、使えそうで、使いにくいスキルは! 最高の一撃ってなんだよ。どれくらい威力増すんだよ。しかも俺のSTRは11だ。攻撃力なんて皆無に等しい。使えねぇ……。
「兄貴か?」
そう声をかけてきた人がいた。見ると髪を赤く染めただけの妹がいた。腰には剣が吊るされている。俺がわかる防具は胸当てとすね当てしかない。着てる服が防御力も値段も高いのかもしれないけど。
その後ろには女の子が3人いた。
「妹か?」
「確認。今日の朝食は?」
「くっそ甘いミルフィーユ」
「妹の今日の下着の色は?」
「黒だった。勝負下着だな」
「いつも勝負下着」
「何との戦いだよ」
「己」
「なるほど」
「最後の問題。先週の妹のスリーサイズは?」
「上から72、54、78」
「ん、いつも通り"カーマイン"と名乗っている」
「俺もいつも通り"小魚K"と名乗っている」
俺が妹とお互いを確認していると1人前に進み出てきた。
金髪でいかにもカツアゲしてますって言ってそうな杖を持ったギャル子だ。
「おい、そこの男。ナニうちのカーマインちゃんにセクハラしとんじゃい」
「言いがかりはやめて欲しい」
「言いがかりじゃねー! 下着の色とかスリーサイズ聞いてたじゃん!」
こいつさっきの話聞いてたのか?
「うちのカーマインちゃんは男にあんなこと聞くはずない!」
あ、聞いてたっぽいな。でも認めたくないと。
「妹よ。説明してやれ。お前のカーマインちゃんじゃない。俺のモノだと」
「私、聞いたよ? それとどっちのモノでもないから」
「なんでよ!」
「兄貴だから? あと私は私だから?」
何故疑問形? 確信持とうぜ?
「だとしたらなんで兄が妹の下着の色とかスリーサイズを知ってるのよ!」
「え、だってこいつ家で服着てないし。それにスリーサイズも毎週日曜になんかでかい声で報告してくるから」
「嘘でしょ……」
見た目ギャルでも中はピュアっぽいな。てかほかの2人のうち騎士っぽい1人も絶句してるし。
「んで、ギャル子の名前は?」
「誰がギャル子だ!」
「そんな叫んでて疲れない?」
「誰のせいよ! はぁ。私はメグミよ。魔法使い志望よ。よろしく」
ギャル子だな。おうけい。
「……いや、そっちも名乗れよ!」
ズビシッと杖を打ち込まれた。HPが半分削れた。痛い。
「小魚Kだ。ご存知の通り
「私はカーマイン。剣士やってる」
それはみんな知ってる。あいや、俺は知らなかった。
そんなふうに話をしていたら1人がこちらに来た。
茶髪のショートボブ。騎士が着てるような鎧を全身にまとっている。デザインがどこかで見たことあるような気がする。 もしかして確か
「私の名はマリリン・ルイン。よろしく頼む」
「よろしく。ところでそれは6代目の仮面カイザー、ワイルディの近衛騎士長マリリン・ナ・ナイツ。またの名を始まりの騎士仮面ナイトルインかな?」
(あ、始まった)
妹とマリリン以外2人がぽかんとこちらを見ている。妹がなんか言っていたが気にしない。
まず口を開いたのはマリリンさんだった。
「驚いた。まさか知っているとは」
「まぁ、ルインは1番存在感のない騎士長ですからね。出演回数は3回。合計出演時間は7分31秒。初登場は第35話。妹が敵に人質に取られた時、皇帝を守るための剣を―――」
「2回目の登場は第40話。王城の異変を感じとり、看守の制止を振り切り城へ向かう。まず痺れたね。そこではメイドの1人が怪人となり生身の皇帝に―――」
「最後の登場は最終回である第43話。黒幕である怪人となったメイド長へと走りながら同時変身! くぅ、最高だった! しかしルインは最初の一撃で―――」
「君、なかなか話がわかるじゃないか。私のことはマリリンと呼んでくれ」
「お前こそ。俺のことはケイと呼んでくれ。また話そう、マリリン」
まさかこんなところで
さて、
最後の1人は終始ニコニコしてこちらを見ていた。装備も体つきもスピードに特化していそうである。しかも見た事のある顔だ。
そう、こいつが妹のリア友だ。アバターはほぼ変えなかったらしい。
「お兄さん! ボクの名前はなんでしょか!」
「アパラチア山脈だな」
「なんでその方向にボケたの?」
こいつは俺が何を言ってもケラケラ笑いやがる。なにもしなくても笑いやがる。何が面白いのだろうか? いつか真顔を拝んでみたいものだ。
「ボクはアキャリだよ!」
「何故キャにした?」
「アカリはもう使われてたんだよぅ」
なるほど。ダブったのか。ご愁傷様。
「自己紹介も終わったし街を歩こうか」
「ちなみに街の名前は
「え、"ん"じゃなくて"そ"なの?! 紛らわしっ」
「だよねー。それにね、お兄さん。ここって迷宮都市って謳ってるのに迷宮が存在しないんだよ!」
迷宮都市なのに迷宮がない? 迷宮入りの難事件だな。
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