EP.3 吸血鬼少女と探索者協会
翌日、いつも通りに起床した僕は朝の7時くらいに家を出る。それはもちろん、探索者協会へと向かうためだ。
探索者協会というところは、僕たち探索者を統括している組織であり、探索者が手に入れた魔石やらのアイテムを買い取り業者に卸したりする役目も担っている、僕たち探索者にとって、非常に大切な場所である。
「ルナ、どうする? 今日も僕の中に隠れていく? 一緒に歩く?」
「なんじゃ、今日はどこに行くんじゃ?」
「そりゃあもちろん――迷宮だよ」
結局、昨日と同じくルナは僕の服の内ポケットに隠れることとなった。
ファンタジー小説などでよく言われている陽光がニガテというのは本当らしい。
というか、よく言われているのはたいていのものが本当らしいのだ。
他にも、昨日のように消毒液のにおいが嫌いだったりと弱点は意外と多いようだ。
その分、僕たち人間はもちろんのこと、魔物なんかにも身体能力で勝っているようだ。
実は、僕たちが合成獣と戦ったあの部屋は上位の探索者を派遣した結果、もうなくなっていたみたいなのだ。
だから、もう他の探索者があんな目にあうことはないと言っていいだろう。
というか、なぜあんなことになったのかっていうのもわかっていないのだ。
「あら……れい君じゃない!」
れい君、という呼び方で僕のことを呼んでいるのは、探索者協会の職員をしている叔母の
「聞いたわよ、冒険者である以上ある程度は仕方ないけど、自分の身を1番に考えなきゃダメなんだからね?」
徠音さんは、協会に所属している僕の親族ということで、本来回ってこないはずの僕が入院したという情報が耳に入っているらしい。
「あはははは……気をつけます」
そんな会話を軽くしたあと、本題に入る。
「今日からまた迷宮に潜ろうと思うんですけど、近場にある迷宮教えて貰ってもいいですか?」
本題の前に、迷宮について少し説明しよう。
迷宮というのは、魔力だまりが転じて異空間に繋がる渦状の
迷宮には、これまで戦ってきたように魔物がいる。
そして、その迷宮の最奥にはボスと呼ばれる存在がいる。
ボスは、迷宮自体の
つまりはどういうことかと言うと、ボスを倒すということが迷宮自体を破壊することに繋がるということだ。
まあボスを倒さなければ迷宮は残り続けるのだが、それはそれで説明しなきゃいけないことがあるからまた今度として……そんなこんなで迷宮は日々破壊され、生まれている。
毎日どんな迷宮があるかを確認しておくっていうのは冒険者にとって非常に大切なことなのだ。
と、では話を戻そう。
「えーっとね、昨日れい君が行ってた迷宮はもう破壊されちゃってなくなったよ。あとは、ちょっと遠目にあるA級迷宮も破壊された……くらいかな。新しく出来たのだと結構近場にC級とD級の迷宮が出来たのと、遠くにE級とB級の迷宮が出来てた気がするよ。名前はおいおいだねー」
「そうですか……なら、昨日の今日ですし近くのD級迷宮に攻略許可申請お願いします」
「おっけー了解。いつからにする?」
「10時くらいからでお願いします」
「はーいわっかりました、と。うん、受理されたよー。頑張ってきてねー」
徠音さんは熟練の協会職員のため、僕と会話をしながらスムーズに処理していく。
許可も出たので、迷宮についての情報だけ軽く集めてから準備して迷宮へと向かった。
♢♢♢♢♢♢
東京の葛飾区にあるD級迷宮へとやってきた。
軽く出現する魔物の情報などを見たところ、ここは
まあ、屍鬼は打撃耐性と魔法耐性が高めで、耐久面に秀でている魔物のため、狩りがしにくいという特徴がある。
なので、ご覧の通りに人が全くと言っていいほどいない。
まあこちらとしてはそれが好都合ではあるのだが。
「ルナ、出てきて」
「よっと、『解除』」
早速低級の屍鬼がぞろぞろと現れてきたので、ルナに出てくるよう言うと、ルナは自身に発動させていたスキルを解除し、いつもの姿に戻る。
「じゃ、いくよ」
「わかっておるのじゃ。【血装】」
ルナは、一言で赤黒い薙刀と僕用の赤黒い短剣を顕現させる。
見てないから知らないのだが、今呟いた【血装】の1つ上の技として【血装顕現】という技があって、合成獣のときはそちらを使ったらしい。
しかし、そちらは非常に血液消費の効率が悪く、性能はいいが燃費が悪いという使いやすくはないという感じらしい。
燃費の悪い技を使っても、血液の補充があればなんとかなりはするらしいのだが、今現在血液の補充をするためには僕から直接吸血を行うしかない。
僕は今病み上がりで血液の量も完全に戻ったわけではないために、燃費をよくしておくことにこしたことはないのだとか。
「【
武器とルナに強化魔法をかける。ルナ自身が、吸血鬼ということで魔法に対する抵抗力がかなり高めらしく、シロやクロの時のような強化率とはいかない。
大体の感覚だが、シロとクロのときは1.3倍って感じで、ルナは1.08倍ってところだと思う。
もうあるのかどうかわからないレベルではあるが、そこは元々の基礎数値が高いからノーカウントってことで……
「じゃあ主はそこで周りを警戒しておれ。妾があいつらを倒してくるのじゃ」
「ん、頼んだ」
そう言うと、ルナは屍鬼めがけて走り出す。
ここで一つ豆知識。
屍鬼というのは、いわばゾンビのようなもの。普通にやっても倒し切れず再生してしまう。
再生能力は屍鬼のランクの高さに比例していくから、この辺の屍鬼だとそこまで高くないかもしれないけど、厄介には違いない。
それを一体ルナはどう攻略していくのだろうか。
はてさて、実に見ものである。
♢♢♢♢♢♢
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