EP.2 吸血鬼少女と帰還
「――……かはっ! シロ! クロ!」
意識の覚醒と同時に、
しかし、辺りを見渡してもシロとクロは一切見当たらない。
そうしているうちに、気絶前の記憶が段々と戻ってくる。
「そう、か……シロとクロは……もうっ……」
「なーにを嘆いておるんじゃ人の子よ。そんなことをしている暇があったら妾をもとの場所に戻す方法をさっさと教えんかい」
「――え? え、えっとぉ……あなた、誰ですか?」
シロとクロにはもう会うことができないと再び知り、悲しみに暮れていたところを、銀髪の美少女によって中断させられる。
妾を元の場所に戻す方法……ってったって、こっちはあなたが誰かなんて―――
「妾は! 貴様が召喚した! 吸血鬼じゃ!!!」
「きゅう……けつ、き?」
そんな、吸血鬼なんて……召喚した覚えが、な、い……はず……
「……もしかして、気絶前の【
「ええい、じれったい! 貴様、召喚陣に血を混ぜたじゃろ!? 血の混ざった召喚陣は総じて吸血鬼の召喚陣へと変化するんじゃ!!」
「え、ええええ!? そ、そうだったの!!??」
で、でも……あの召喚陣から召喚されたんだったら―――
「あの召喚陣……永久契約用の召喚陣、だよ……?」
「……………………は?????」
その後、迷宮には美少女による言葉にならない悲鳴が鳴り響いた。
♢♢♢♢♢♢
「なんでじゃ!! 貴様が妾を召喚した理由はあいつを倒してもらうことじゃったんじゃろ!? なら永久契約でない方が強い契約獣は出てきやすいのじゃぞ!? そんなことも知らんのかこの初心者召喚士!!」
「い、いや、そんなこと言ったって僕永久契約以外できないし!! そのくらい知ってるから!! 結果助かってるんだからいいじゃんか!!」
「「ぜぇ……ぜぇ……はぁ……はぁ……」」
ぽかぽかと互いを殴りあいながら言い合いを続ける。
しかし、体力にも限界が来たようで……
「……はぁ、しちゃったものは仕方ないから。これからはよろしく。」
「……仕方なく、じゃ。別に、妾は貴様を認めたというわけではないからな? ……とまあ、体裁としては貴様が主であるし、契約してしまった以上主を死なせるとこちらにもペナルティがつく。貴様が死なん程度には働いてやる」
自身が突き出した手を、嫌そうではあったものの握り返す少女。
「僕の名前は
「妾はルナ・ツェペシュ。呼びにくかろうからルナとでも呼ぶがよい。……主よ」
顔を背けながらぼそりと口に出した言葉を僕は聞き逃さない。
けどまぁ……僕も疲れているから、今日のところは見逃し、て……
バタッ
♢♢♢♢♢♢
「――ここ、は……?」
目を開けると、そこには真っ白な天井が写っていた。
体を起こして、体をひねり周囲を確認する。
この部屋には、白いベッドとカーテンがたくさんあった。
「誰か! 先生呼んできて!」
ガラガラと扉の開く音がした後、よく通る女性の声が扉のあたりから聞こえてくる。
そうして、声の主はこちらへと近づいてきた。
「起きられたんですね、如月さん」
「あ……はい、一応?」
「なんで疑問形なんですか……まあ、ちょっと待っててください。先生を呼んできますので」
その数分後、白衣を纏った医者がやってきた。
「まずはご無事でなによりです。あ、一応確認ですが……自分が誰だかわかりますか?」
「はい。如月怜也です」
「おっけーです、と。次に、あなたの症状なんですが、まあ……精神的なストレスや肉体の疲労による気絶ですね。如月さんは探索者とのことでしたが、迷宮の攻略計画など少しこの際に見直されてみてもいいかもしれませんね」
あと一日程度様子を見て退院になると思います、とだけ言い残して部屋……もとい、病室を出ていった。
「ふぅ……で、いつまで隠れてるの?」
「いいじゃろ……このにおい嫌いなんじゃ……」
自身の懐の中から出てきたのには若干驚いたが、それよりも病院特有のにおいが嫌いなことにびっくりしている。
それはそれとして気になりはするので一応聞いてみる。
「ルナはなんで僕の服の内側から出てきたの?」
「これは従魔にのみ許された『
そーなんだー、と少しぼーっとしたような気持ちで聞き流す。
こら! と怒っている声がルナからするが、それすら気にならない。
頭が正常に働かない。
まだ心のどこかで、シロやクロのことを思っているのだろうか。
「はぁ、そんなことじゃ困るぞ、主。主には妾を魔界へ帰すという役目があるのじゃからな」
そんな風にルナにダメだしを食らってしまう。
パシン! と頬を両手で叩く。
シロとクロのことは忘れるわけではないが、いつまでも引きづっているわけにはいけない。
時間なんてあっという間に過ぎ去るのだから。
「ルナ、もう1回隠れられる?」
「出来るぞ。なんじゃ、もう出るのか?」
「ああ、もう十分回復したからね。それより、明日からは迷宮攻略だ。頼んだぞ、ルナ」
はぁ、とため息を1つ吐いたあと、目に見えないほどに小さくなって僕の服の中に隠れる。
隠れたか? とルナに聞いて返事が返ってきたのを確認したら病室を出て受付へと向かう。
受付の看護師さんには少し止められたが、半ば強引に会計を済ませて自宅(借りているアパート)へと帰る。
「ただいま〜っと、お腹は……空いてないな。なら、今日はもう寝よう」
そう言いながら自室にあるベッドに横たわる。
横になって1分が経つ前に眠りに落ちたのだった。
♢♢♢♢♢♢
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