蛇足2
私の身体の持ち主である少女の名前は
私はリンと意思疎通を図ることにした。どこかのカードゲームアニメの主人公みたいにもう一人の自分と会話することは云々と唸ってみたり実際に呼びかけてしたりしても無理みたいなので、しょがなく書面で会話を交わすことにした。そして寝る。なんか私の意識が無い間にしかリンは起きて来れないみたいだから。寝ればきっとリンの意識が表に出ると思う。
恐らくこうしてリンの意識が表に出てきたという事は、今後はリンがこの身体の主導権を握っていくのだろう。つまり徐々に私の自我は薄まる。私という存在は元の世界に戻るのか死んで輪廻に還るのか、分からないけどとにかくこの世界から消える。勘だけど。
しかしだ。このままリンに身体を返すと不都合がある。というのも私は別に身体を返却することに躊躇はないとはいえ、私がこれまで二年弱続けてきたVtuberとしての活動がそれを阻む。リンにそのことについて何も話さずに身体を渡してしまったらリンが困ってしまうだろう。なんたって懸念点はみこみーだ。私に連絡が付かなくなれば家凸してくるに違いない。絶対にそうだ。住所とか知られちゃってるから。負債を相続してしまって申し訳ない。代わりにお金はそこそこ稼げたので許してほしい。許せ。
まあともかく。
要するに、これからリンにしなくてはならない最重要事項はVtuber活動の引継ぎである。これからリンには私が今行っているVtuber活動を教授しなくてはならない。勿論Vtuber活動を続けるかどうかはリン次第だ。多分Vtuberという言葉なんて一ミリも知らないだろうから、まずはそこから教えなきゃならないだろう。リンは確か中学1年で引きこもりを始めたらしいし、Vtuber活動を行うにおいて必要なトークスキルや利害関係の折衝経験もないはず。もしVtuber活動をしたいと言われれば更に手取り足取り教えなきゃならない。そうなれば私としては嬉しいが、みこみーにも事情を噛み砕いて説明して手伝ってもらう必要がある。
と言ってもリンとはまだファーストコンタクト。まだそのことを詳らかに書く必要は無い。今回は私が何故かリンの身体に一時的に憑依してしまっていたこと、それからリンが眠っている(?)間にどのくらい時間が経って、何があったかを軽くノートに書き記すことにした。ネットで活動をしていることは軽く添える程度に書いておいた。初回から沢山情報を与えて混乱させるのは私としては望むべくもない。何よりリンはまだ女子中学生で、精神年齢が二留男子大学生(笑)な年齢の私と比べてまだまだ子供。或る程度配慮すべき事柄である。何よりそんなことより伝えなくてはならないことが山ほどある。因みに私の性別については濁すことにした。相手は女子中学生。良い年した男に自分の身体を取られたと言われればキモがられて話しすらしてくれなそうだ、なんて予測が立ったからだ。いやでもいつかは言うから。いつかは。
斯くして私は起きてから二時間も経たずに布団を被る。まだリンがどんな少女かは分からないけど、願わくばVtuber活動を続けて欲しいと思う。分かってる。これは私の我儘だ。Vtuber文化が花開いてほしいと思う私のエゴだ。折角私とみこみーで引っ張ってきたのだから、なんて思いが私の心中で拡大してしまっている。でも理解している。抑えねばならない。こんな自分勝手な欲望は。リンはVtuberなんてどうでもいいだろうし、何なら現実の人間関係を重視するならVtuberなんてやらない方が良い。Vtuberに救われる私のような人間がいる一方で、Vtuberになればどうしても現実を切り捨てる場面がやってくるから。リンに身体を返すだけの目的で生きてきた私には現実なんてものが無かったからそれでいい。みこみーだって元から現実よりネットに入り浸っていた生粋の日陰者だ。それに自ら選んだというのもある。でもリンはダメだ。微かに残る年上としてのお節介として、現実を享受してほしいという厚かましい思いを感じてしまう。
ぐちゃぐちゃ考えながら布団に入っていると、睡魔はすぐに訪れた。生活が少し乱れているからだろう。昨日も寝不足気味だったし。でも好都合。私は眠気に身を任せた。
次に目が覚めたのは昼過ぎだった。午後2時40分。我ながら生活習慣ゴミクソだな、とか思いつつ瞼を擦る。そうだ。ノート。恐らく何か書かれているはずだ。
机に私が書いたページをそのまま開きっぱなしで置いておいたノートは遠目からでも捲られていることが分かった。良かった。私が寝ている間にリンが起きて、ノートを読んでくれたのだ。
私は恐る恐る近づいてみる。リンの返答は文章の羅列とは程遠い、たった一行だった。
『そうですか。なら私の身体あげます。私は別に要らないので。好きにしてください』
……何と言うか。
本来なら成人としてこの言葉に対して同情心を覚えたりこんなことを言わせてしまう環境に憤慨するところかもしれない。でも私は正直言って、困った。困ってしまった。どう対処すればいいか判断が難しい。
私という人間の性格は褒められた構造をしていない。社会経験も乏しい、ただの根暗な大学生でしかなかった。今もそれからあまり進化はない。だからこんな取扱注意とタグ付けされてそうな問題、どうしろと。そう率直に思ってしまう。
なにせセンシティブな問題だ。それは私が"私"として生きてきた期間で身に染みて分かってた。金銭的な援助はあるとはいえ両親からのネグレクト、学校での人間関係もほぼ間違いなく拗れている。虐められていたかもしれない。ご近所付き合いなんて恐らく皆無だ。そんな環境で人生にポジティブな意味合いを見出すことは不可能に近い。だから好きにしてください、なんて投げやりな言葉が出てきたのだろう。
どう対処するか。思案してみるが弥縫策すら浮かばず時間だけが過ぎゆく。
例えば、アニメの主人公みたいに声を掛ければいいのだろうか。
諦めるのはまだ早い、君にはまだ無限の未来と可能性がある。
とか熱く語ればいいのだろうか。
でもそんな言葉こそ、最も空虚だ。私の中学時代の校長も同じことを学校集会で言っていた。その時は表面上の意味だけ受け取って本質しか理解してなかった。だが堕落した大学生活を送った今なら理解できる。それは夢とか希望とか将来の展望とか、そういう何か胸に熱いものを秘めた人間に当てはまる言葉である。何にも熱意を感じずただベルトコンベヤーに流されて進学していく人間はなあなあの人生で終わる。特に他者への僻みや無気力感から何も行動しなければそれは顕著で、社会で漂流した先に待っているのはブラック企業かフリーターかニート。特に二留の私なんかはそうなっていただろう。
その意味を真に知っている私が生きろと喝を入れるのは違う気がする。絶対違う。
分かる、でも頑張ろうよ。
そう言うのは簡単で、でも思考放棄に等しい。私みたいな見知らぬ他人から言われてそう思えるくらいだったら最初からリンだって殻に閉じ籠っていない。
「理解……理解しなきゃならないかもしれないな。私は。リンのことを」
一時間考えても結論は出ず、代わりにポツリと独り言を漏らす。
分かったのはリンのことをもっと知らないといけないという事実のみだった。何か助言を送るにしろ、心を揺さぶるにしろ、リンのことをもっと知らないといけない。
リンの残していた日記は既に何度か読み返しているため、内容は覚えている。しかしリンは日記には具体的なことはほぼ書いていなかった。両親が何故この家に寄り付かないのかも、何故不登校になったのかも、希死念慮に近い感情を抱いているのかも。何も書いていない。書いてあったのは事実だけだ。殆どが日々のどうでもいい雑務と、それから将来の不安。時々思い出したかのように両親が最後に帰ってきてから何日経ったかも書いていたが、基本的には事実だけだった。
リンのことをもっと知るには、リンと対話する他ない。ノートで対話を続けるしかない。もっとリンの感情を引き出さないと、もし時が来て私が消えてリンが表に出てきてもすぐにでも自殺してしまいそうだ。いや、自殺は言い過ぎかも。それでもセルフネグレクトくらいはしそうで怖い。
しかし。問題がある。
私は女子中学生と話した経験なんて、中学時代以降無いのだ。更に言うなれば精神が病んでしまっていて、家庭環境も良くない思春期の女子に語るべき言葉を私は持っていない。だってスクールカウンセラーの分野だ。どうやって打ち解けていくのかなんてこれっぽっちも分からない。
なので、事情をぼかして現役女子高生のみこみーに聞いてみることにした。
『のんばんわ~。のん先輩が相談って珍しいですね。一体どうしました? 膝枕いります?』
「私専用の挨拶を勝手に考案して許諾も得ないで使用しないで。うん、ちょっと込み入った話になるから長くなるかも。膝枕はいらない」
通話を繋げた瞬間にボケ倒してくるみこみーに呆れつつも全部処理する私も私かもしれない。
気を取り直して。
「えっと……みこみーを現役JKと見込んで聞きたいんだけど、女子中学生とはどうやったら仲良くなれると思う?」
『それのん先輩が聞きますー?』
「え?」
『現役JKを根拠に聞いてきたなら女子中学生ののん先輩の方が詳しいに決まってるじゃないですかー』
あ。確かに。
リンのことを考えることに注力しすぎて私自身の立ち位置を忘れてた。もっと普通に聞けばよかった。
『まあそんな陰キャポンコツのん先輩も好きですから安心して私とオフ会しましょう』
「しないよ。あとありがと」
『なんで』
なんでじゃないが。
『こほん。まあそれについては何時かやってもらうので良いです。それで、私を差し置いて仲良くなりたい女の子がいると』
みこみーもずっと脱線したまま会話を続ける意思はないみたいで、一応話をレールに戻してくれた。
ただ何故かリンに対する敵意を感じるのは気のせいか。まあいいか。肯定しておこう。
「まあ、うん。そう」
『なるほどですね……因みにVですか?』
「違うよ。一応、現実かな」
リンのことを現実と呼ぶべきか分からないが、今の私の状態を説明できない以上は現実の女の子として説明した方が早い。しかし私の返事は意外だったのか、イヤホンから息を飲む音が聞こえてきた。
『現実……!? 現実で私以外に友達を作りたいと!? のん先輩、友達なら私がいますよね! 浮気ですか!? 言うに及んで浮気ですか!?』
「あのさ、私、これでも真面目な話をしてるつもりだから。もうちょっと何とかならない」
『あ、ハイ。すみませんでした……』
流石にウザくなってきたので少し声を低くして態度改善を促せばすぐに謝罪が返ってきた。私は少し安心した。素面でこの台詞を言うほどみこみーも常識知らずではないらしい。勿論信じてた。信じてたけど、これがガチかもしれないとほんの僅かに疑っていた自分もいたので本当に安心した。
『ええと、女子中学生なんですよね。どんな関係性なんですか、のん先輩とは』
「関係性……ちょっと待って」
難しい。誤魔化すにもどうだろう。同級生とか言えばすぐにバレるだろうし。何故かと言えばみこみーには私が学校に行ってないことは話してるから。
まあ、うん。隣人という事にしておくのが吉かもしれない。
「隣の家に住んでる子、かな。偶然会う機会があって、良い子なんだ。だけど私と同じように内気な子で、打ち解けたいけど方法がね。分からないなって」
現役引きこもりの私が外に出て、挙句の果てに知らない女子中学生と話すなんて傍から聞けばかなり怪しい。嘘っぽい。けどまあ、100%嘘と断じることはできないからこれでごり押ししよう。
『そうですかー。ということは学校も同じなんですかね』
「まあ、多分。学区は一緒だろうし、私立じゃないと思うし」
『あ、でものん先輩学校行ってないんですよね……じゃあ学校から話を広げるのは無理か……』
「いや。彼女も不登校だからどちにしろ無理」
『ええっ……不登校同士は惹かれ合う……?』
失礼な。小声でスタンド使いは的なことを言わないで欲しい。私とリンは事実上同一人物なのだから、不登校なのは当然だ。みこみーには言えないけど。
「みこみー、何か案はある?」
『そうですねぇ……やっぱり共通の話題があるのが一番いいと思いますよ』
「共通の話題かあ」
『その女の子の趣味とかご存知じゃないですか?』
リンの趣味。少し考えても思いつかなかったので、日記を思い返してみる。でも書いてあったのは日常の雑務ばかりで、娯楽関連は記載されてなかったはずだ。ハマっているドラマや映画やアニメも無かったみたいで、淡々とした家事に対する感想ばかりだった。恐らく当時から精神がギリギリだったのだと思う。
「知らないけど……多分無いと思う」
『どうして知らないのにそう思ったんです?』
「その、日記を読んだことがある。でもそれっぽい事は書いてなかった」
『日記を……でもそれは信憑性高そうですね。日記なんて1番のパーソナルスペースですから』
一瞬日記という言葉に引っ掛かりを覚えたのかもしれない。みこみーは言葉を切るが、本筋と関係ないと思い直して私の推測を補強する。
「うん。だから出来れば一般的に興味を惹ける話題があればと」
『むぃぉ?難しいですね。聞いてる感じだと服もコスメも興味無さそうですし』
そうなのだ。私もその話題についてはまるで分からないがリンも同じだと思われる。うん。それはともかく「むぃぉ?」って何? 可愛い唸り声を形にしようとして努力してる? この場面で?
私の疑念を遮るように『でものん先輩ー』と間延びした声。
『ならもう強引な手段しか無いと思いますよ。例えば無理矢理どこか連れて行くとか、外食で気分を紛らわしてあげるとか、いやもうそれ拉致誘拐って感じで私がのん先輩にしたいまであるんですがんんっ! 環境が人格を作る以上環境を変えてあげるのが一番です!』
「おーけー。中盤の言葉は聞かなかったことにするから」
私はとんでもない犯罪者予備軍と友人になってしまったみたいだ。ごめんリン。今後は態度次第で手を切っても良いと思う。
とはいえ、みこみーの言うことも一理ある。リンを取り巻く環境は確かに悪い。親は帰って来ず、本人も殆ど引きこもりに近い暮らしを何年も続けているのだから精神状態が危うくなるのも頷ける。しかも最も多感な思春期なのだ。
「参考になったよみこみー。ありがとう」
『どういたしまして! ところでのん先輩そんなガキとお出掛けするより私と今度オフ会』
「あ、そういうの大丈夫です。それじゃまた後で」
ピロン。
通話を切った。これさえ無ければ良い人なんだけどもと思わずにいられない。
─── ─── ───
数日経っても解決策は思いつかない。何故ならどこかに連れて行くと言っても候補が思いつかなかったからだ。
考えてみれば当然のことである。私だって前世で世界中を旅するバックパッカーでもないただの引き籠り同然の大学生(笑)だったことからして、外の世界なんて知る由も無い。何より少し精神が病んでいる女子中学生を喜ばせる場所ってどこだろう。ディズニーとユニバとか行っても別に楽しく思わないだろう、というか一人で行っても疎外感を覚えるだけじゃないかなと思う。
外食といってもリンが食に興味があるとも思えず、じゃあ映画館やゲームセンターはといえばこれも多分興味ないだろう。どうすればいいんだマジでさ。
そもそも仮に何処かに連れて行ったとしても、私はリンと話すことは出来ない。もう一人の私状態ではないからだ。私が寝た時にリンが出てくる仕様らしいから、私がコミュニケーションを取れる手段は少ない。リアルタイムで意思疎通はまず出来ず、やれるのは今続けているように手紙を残すか……あとホームビデオみたいに動画で取るとか? それもアリなのかもしれない。
加えて思うのは、どこかに行ったとしてどうやってリンに変わるのかという懸念点。現時点で寝ないと意識を交代することが出来ないのは実証済みで。まさか寝るのか私。遊園地とか動物園のベンチで寝るのか私。事件解決前の毛利小五郎じゃないんだぞ。
環境を変える、か。
今思ったけどもそれって別にどこかへ行くとか何かを食べるとか、そういう安易な感動経験である必要性は無いんじゃないだろうか。
「でも家族なぁ……あまり簡単に突きたくないんだよな……」
思いついたのはリンの家庭環境。しかしそこにメスを入れるのは慎重にならざるを得ない。他人である上に一年以上この家で暮らしてきた私が今更この話に割り込むのも違うような気がする。
何より連絡先も分からない。本気になれば適当に車とか携帯とか何かしらの契約書類が保管されているだろうし、見つからないことも無いんだろうけども私にはそこに踏み込む一歩の勇気が無い。結局は私が意気地なしで面倒見が頗る悪いという結論に達しそうで、薄暗い劣等感が湧きだす。
次第に思考は他に他にと探るように、それに釣られて自然と手が部屋中の物を物色し始める。とはいえ既に私が知らない物もこの部屋には存在しないので、数分と意欲は持たず徒労に終わる。
いっそのこと、これら包み隠さず全てみこみーに話してしまうのも一つの手段だとか、そんな考えも過る。コミュニケーション能力は低くないし、ああ見えてみこみーは頭が良いから言えば何とかしてくれるという予感はある。でもそれをするのは禁忌に等しい。リンの事情を勝手に曝け出すのは私にポリシーに反する。私はずっと今の状況は一時的な物であって恒久ではないと思っているし、リンが元通りになった時に全て棄損無く返還せねばならないのである。
リンへの手紙の役割を果たしているメモ帳をまた一ページぐしゃぐしゃに丸めると、ゴミ箱に投げかける。
文章を書くのは得意ではない。私の学の浅い文字ではリンの心に楔を打つことも出来ないだろう。
そもそもだ。私に出来ることなんてたかが知れている。最初から分かっていた。精々出来ると口に出来そうなのはお世辞にも修めたとは言えない大学で学んだ学部レベルの専門知識を並べ立てること、それからVtuberとしての様々なトークやあれこれ……Vtuber?
「Vtuberか……これもホームビデオの亜種みたいなものになるかな」
偽物である私はリンへ何も言うことは出来ない。同情すら口にするのは烏滸がましい。
しかし冬川のんならどうだろうか。
私ではなくのん先輩と呼ばれるキャラクターなら。仮初で虚飾で、それ故に飾り立てる必要のない私なら。
私でも言葉になることがあるかもしれない。
そうと決まった私の行動は我ながら早かった。
───── 灰崎淋 ──────
私が親に捨てられたと気付いたのは中学校に入学して最初の春の事だ。
どうにも実感は湧かないけれど私は所謂愛人の子というものらしい。
父親が若い頃に不倫して、不倫相手の股から生まれ出たのが私だった。
私の父親は私が生まれたことを知ると、当時の妻と無理矢理離婚して不倫相手である私の母と結婚した。しかしすぐにまた離婚すると、また別の妻を作った。典型的なクズ野郎だ。その時に親権を母が投げ捨てて父が拾ったので私は父の家で過ごしている。両親揃ってクズ野郎だ。
父の家と言ったがそれも正確ではない。
ここは父の親の家だ。既に亡くなっているらしく、それを父が相続して私が住んでいた形だ。
ここに父は住んでいない。戸籍上の母も住んでいない。
それもそうで、ここは二人にとって丁度いいお払い箱だったのだ。
父は人間味が薄く、私に関心を示したことは無かった。
私を引き取った理由も自身の倫理観を世間に疑われないための方便だと私は勝手に思っている。クズ野郎でサイコパスなのだ。
母については数回会った程度だからあまり知らない。ただ、私のことを良くは思っていなかったことは知っている。何せ前妻の娘で、しかもそれが不倫相手と来た。どう考えてもまともじゃない。一番まともじゃないのは父だが。
最初の頃は父と暮らしていた。心地良いとは言えなかった。家の中は沈黙とヤニの香りが支配していて、未だに喉の奥に不快感が絡みついて離れなかったことを夢に見る。
妻が出来ると家に一人になった。少し楽になった。同級生とも話が合わない私は友達もおらず、一人の瞬間が溜まらなく楽だったのだ。
しばらくすると父と一緒に出掛ける機会が出来た。
その時に銀行の預金口座の使い方を教わった。今にして思えばこの時、父の頭の中では私は放逐される運命だったのだろう。金だけはやるから後はご勝手に。父が考えそうなことだ。
そうして小学校六年の夏に父の実家に引っ越すと、翌年の春に姿を消した。
最初こそやっと肩の荷が下りたと感じた。解放の時だ。私の目の前から柵が消失した。それを喜ばないほど大人じゃない。
だけどもすぐに落ち着いて、現実と目が合った。
中学校は行かなかった。行こうとすれば行けたのだろう。あの父は基本的には信じられないほどクズだと思うがそれでも自身の社会性を疑われるような行為は好まない。入学の手続きくらいはしてくれていたと思う。
だが行かなかった。
選択したのは私だった。
言い訳もできないほど、私だった。
担任の先生が来た。呼び鈴が久々になったから多分そうかなと思っただけであるが、確信もあった。
考えてみれば当たり前のことだ。
入学初日からずっと来ない生徒など、教師からすれば指導の対象だ。それどころかその内児童相談所だってやってくるかもしれない。
そう身構えて、息を呑んで暮らしていたのだが意外なことにその後誰かが訪問することは無かった。代わりに届いたのは通信教育の教材だった。
理由は何となく分かった。
父だ。
多分だけど、そう。
確たる証拠なんて無い。だけど父は金があった。持ち家とは言え私をこうして一人暮らしさせて毎月20万円を振り込む程度には金があったし、もしかしたら権力とかもあるのかもしれない。そうじゃなくても私が自分で行かない選択を取っている以上、父もそれを悟って通信教育で義務教育させていますと表にアピールしたのかもしれない。生徒本人の意志となれば教師だって介入はしにくいんじゃないだろうか。今時熱血教師なんていないだろうし。
学校に行かない私はなにか特別な行動をしたかといえば、そこでも何もしなかった。
ゲームもしないし読書もしない。テレビも見なければ何もしない。勉強だってしなかった。
父と同居していた頃から続いている隅っこでただ時が過ぎ去るのを待つ習慣だけが私を包んだ。
これが私に残された現実だった。
欠片の未来すら見えない、夢も希望も、絶望も奈落も無い、平坦な現実だった。
死人のように日々が過ぎて、風船のように膨らむ希死念慮と全身が馴染み始めた頃に私はぐわんと視界が揺らいだ。
すぐに気付いた。
最近あまりものを食べていなかったと。食べ物自体は家にあるのに最後に物を口にしたのは二日前とか三日前とかで、それも少量だった。
これで死ぬなら仕方ないと思った。いや、それは嘘。良かったと思った。
死にたいと思っていたわけではない。けど無意味で無価値で退屈な時間がやっと終われば、今度こそ解放される。本気でそう思った。
けど……死んでいなかった。
私はまだ生きていたみたいだ。
意識が戻った時、視界は暗かった。
異世界転生でもしたかと一瞬は好奇心が疼きそうになったけど、すぐに自分の部屋だと分かった。電気が消えていただけで見覚えのある室内だったからすぐに気付く。
これまでずっと寝ていたかと思ったけど、それは無いと察することは簡単だった。カレンダーは一年以上進んでいて、その割には私の部屋は埃を被っていないし冷蔵庫にもやたら新しい食品がギチギチと詰め込まれていた。次点で私以外の誰かが家にいて、私を看病していたのかと考えたけどそれも違った。家の中の生活感が変わらず一人暮らしのそれだった。洗面台には歯ブラシが一つ、洗い終わって乾かしている最中の食器は一人分。風呂場に干された洗濯物も私が持ってる服だけ。仮に私以外がここにいて長期間寝ている私をサポートするなんてしていたなら一人分にはならないはずだ。
私しかいないこの家で、一年以上横になっていたなら私はとっくに死んでる。
つまり非現実的だけど、そうすると私がここにいる理由は一つしかない。
きっともう一人の私、いわゆる二重人格とか、そういう精神的な乖離が起こったんじゃないかと。
不思議と混乱は無かった。元々アイデンティティは喪失気味。厭世的だったのも大きい。こうなる前も私は可能ならアフリカの恵まれない子供に自分の身体を上げたいと思っていたことがある。こんな大上段の考えは人に話せば不快に思われるんだろうけど私は一人で、友達はいない。家族もいないようなもの。なら別にこのくらい自分勝手な願望を抱えていても文句を言われる筋合いはないし言われる相手もいない。
でも、歪な形だけど奇しくもそれは叶ったのかもしれない。私は二重人格の可能性に思い至った時、ぼんやりとならこのままでいいやと思った。誰も私のことを知らないんだから、外から見たら二重人格の私も私でしかない。安いこの人生、全然あげようと思える。
二重人格は私よりも大分人間的な生活をしていたみたいだった。
それになんか活動もしている気がする。何せ部屋に見たことがない大きい箱型のパソコンがあって、金属製のアームが付いた立派なマイクが横にはセットされている。あとよく見ればパソコンのモニターの上にはカメラもつけられている。なるほどと思った。youtuberとして顔を出していたりするのかもしれない。想像してみて、ちょっと嫌だった。自分と同じ顔の人間の動画がインターネットに転がっていて、知らない誰かから無責任な批評をされているかもしれないことを考えると萎える気がした。人生あげても良いけどそれだけはやめてもらうよう交渉してみるか、悩むところだ。
ともあれ私は二重人格説を確信にするために寝る直前に置き手紙してみた。眠かったので一言だけ書いて、ベッドに転がった。
次に起きた時に私から返答があった。
読んでみた感想は長かった。あと凄い丁寧な文。私の想像だと二重人格って主人格に敵愾心とか劣等感とか抱えてそうだと思っていたんだけど違ったみたいだった。というか二重人格ではなく、普通に暮らしていたら私の身体に気付いたら乗り移っていたとか宣っている。そんなことありえて堪るか。恐らく私の二重人格は辻褄を合わせるために無い記憶を捏造して、欠けている何かを補完しようとしているのだ。多分。
そしてやっぱりインターネットで何か活動をしているようだった。Vtuberとか書いてあるけども、聞いたことがない。Youtuberの亜種なのだろうか。何が違うんだろうか。全然知らないけど興味もあまりないし、どうやら顔も出してないから良いこととする。そこまで私の趣味に関与する気は無い。
ただ。
私の目を最も引いたのは最後の一文。
【貴方に身体をお返ししようと思うのですが、恐らく時間がかかると思います。次第に私の意識が保つ時間が少なくなると思うので、それまであと少しの間お借りします】
嫌だ。
反射的に手紙を置いた。
折角私の人生を肩代わりしてくれる存在が出来たというのにあと少しで消える?
それはちょっと虫が良いんじゃないだろうか。私は望んでないし、消えたいのは私だ。灰崎淋初心者の癖になに勝手に先輩より先に行こうとしてるんだ。やっぱりこいつは私の二重人格だ。間違いない。この自分勝手さは正しく私でしかないし、もしかしたら私よりも図太いかも。
ムカムカしたので取りあえず一筆書いて私は不貞寝した。
それから少しの時間が経った。
もう一人の私はあれ以降、針の先を慎重に触るかのような対応を受けている。どうやら私は二重人格の私にヤバい奴扱いされているみたいだ。あまり自己弁護出来る要素も無いけど、少し腹が立つ。
暫くはそうやって他人行儀な手紙を読んでは適当に返してを繰り返す日々が続く。不思議と筆を折ろうとは思わなった。読み飛ばさずに言葉を飲み込んで、感じたことをそのまま文字にした。思えば私が最後に人とコミュニケーションを取ったのはいつだっただろう。
もう一人の私は真面目だった。いや、筆マメというべきかもしれない。
私の意識を浮上した時、必ず机には手紙が添えられていた。起床してすぐに手紙を手に取る。一連の動きが既に新しい私の習慣として一日を肉付けていて、その日々が希死念慮を希釈していたのかもしれない。前みたいに塞ぎこむ時間が明らかに少ないように感じる。
そんな日々が過ぎて、或る日だった。
その日も同じように目が開いた私は、ぐだりと腕を伸ばしたり瞼を擦ったりして意識を起こすと机の上を見た。机の上にはいつも通り置き手紙がある、だけど普段より文字数が少ない。
書かれていたことは一言だった。
【良ければ、パソコンのデスクトップの動画を見てください】
パソコン……?
私は首を傾げる。
パソコンがあるのは知ってる。それは私の意識が無かった頃に買われたもののようで、非常に図体の大きな如何にもハイスペックっぽい見た目をした黒い箱だ。興味無かったから一度も触ったことは無いけど。ネットならスマホで十分なので。
もう一人の私はこれで動画を撮っているらしい。しかもそれで金も稼いでいるとか。社会に適合しているようで何だか眩しい。
マウスを触ってみた。画面がすぐに点く。電源は入れっぱなしになっていたみたいだ。
パスワードは掛かっていなくて、キーボードからエンターキーを探して押してみる。デスクトップ画面は……今表示されている画面でいいのか。
動画があるという話だったけどそれはすぐに分かった。真ん中にそれっぽいものがある。きっともう一人の私が、あまりPCに明るくないだろうと気を遣って分かりやすい場所に置いてくれたのだろう。動画名も【淋へ.mp4】となっている。
二回クリックすれば動画は開かれた。
映っていたのはアニメキャラだ。確か、Vtuberとか言ってたっけ。何となくだけどその見た目は少し気だるげで、厭世的で、でも人を引き付けるような気がすると思った。
『あー、うん。初めましてになるのか。どうも淋ちゃん。お世話になってます。私は冬川のん。改めて初めまして。冬川でものんでも、好きなように呼んで』
喋りづらそうにこちらへ語りかけるもう一人の私、冬川のんは何処となくシュールで面白かった。もう一人の私、こんな感じなんだ。確かに私の声だ。でも私より声が少し低いというか、落ち着いているというか、ちゃんとしてるっていうか。感情の起伏が無い感じがする。
『えーと、うん。衝動的に撮り始めちゃったからあまり話す内容決めてないんだよね。今まで相棒と人前で話したことは沢山あるけど、こうしてソロで一人に対して動画で話しかける機会って無かったし……。つまんなかったら閉じてもらってもいいよ。ついでにどこがつまらなかったか手紙に書いて伝えてもらえると助かるかも。ただ私も人間だからさ、あまりにも誹謗中傷されるとちょっと凹むからそこは気を付けて。一週間は引きずる。みこみーからならともかく女子中学生からボロクソ言われて傷がつかないほどメンタル超合金じゃないし私』
ネットで配信をしているだけあって、何も考えず話し始めたとか言う割にはスラスラと言葉が出てくる。私と正反対だ。
画面の中のもう一人の私は少し斜め上を見上げると、手をポンと叩いた。
『そうだ。まず何で動画で伝えようかと思ったかってことを言わないといけないか。今まで手紙でやり取りしてたけど、どうしても伝えられないことも多くてさ。自慢じゃないけど私は文章が上手くないみたいで、堅苦しい上に当たり障りないことしか書いてなかったでしょ。だから動画にすればもうちょっと私の本心というか、考えが伝えられるかなって。そう思って動画にしてます』
もう一人の私は前髪を触ると、言葉を続けた。
『で、最初にこれは言おうとは思ってたから宣言するんだけど。私、冬川のんは何があっても淋ちゃんの味方だから。それだけは絶対に保証する』
……味方?
何と言うか、そんなことを言われたのは初めてかもしれない。友達もいなかったし、頼りになる大人もいなかったから。
『これは私の勝手な想像だけど、淋ちゃんは自己完結しがちだと思ってて。信頼できる人がいないから誰にも話さずに抱え込んで、生きづらいのかなって。もしそうだったなら私に言ってくれれば話は聞くし相談にも乗るし、解決だって手伝う……いつかは居なくなるけど。それまでならどれだけ使ってくれても構わない。寧ろ積極的に迷惑を掛けて欲しい。余計なお世話かもしれないけどそれだけは伝えたい。私は味方だし、淋ちゃんの事情に寄り添いたい』
あまり抑揚が無い声音なのに、紡がれる言葉は温かいもので。仮にお姉ちゃんでもいたらきっとこんな感じだろうか……いやここまでは多分言ってくれないと思う。どちらかと言えば、表現の問題でしかないけどそれこそお姉様というか姉御というか……そんな呼び方が相応しいような気がする。
『だから私は淋ちゃんのことをもっと知りたい……大丈夫かなこれ。女子中学生に対して私ちょっと変態的なこと言ってる気がする……まあいいか。今度、手紙でも動画でも何でもいいから淋ちゃんのことを教えて欲しい。仲良くなりたいと考えてるから、話してくれると嬉しい』
仲良くなりたいなんて、言われたことなんて無かった。
少なくともこの言葉は私に響いたんだと思う。だからもっともう一人の私……冬川のんの話を聞いてみたいと思った。
話題は転換して、日常話や自分の活動に関する雑談になった。みこみー?とかいう私より年上の人とVtuber活動というものをしていて、面白かったこととかちょっとした事件だとかを話し始めた。その口調は生き生きとしていて、とても楽しそうで、だからか私も聞き入ってしまう。
話を聞くうちに思ったのは、もう一人の私は見た目や口調にそぐわず面白い人柄だということだろうか。まるで休み時間にクラスで一人読書を続ける近寄り難い雰囲気を醸し出しているのに、口を開けば良く分からないけどお道化たユーモアを漏らして心の底から愉快な気分になれる。凄い。とても凄い。きっとインターネットでも人気者で、それはもう有名に違いない。言葉には出来ない誇らしさが私の胸に去来して、そんな人に認めてもらえてる自分まで肯定してしまいそうになる。
『あれ。もうこんなに話してたか。淋ちゃん聞いてるかな、私の話。聞いてたらゴメン、長く話し過ぎた』
「あ……」
だからもう一人の私……のんちゃんが動画時間に気付いた時、拒否的な息が漏れた。
ねえ止めないでよ。その感情の薄い顔で、まだ楽しい話を続けていてよ。私のために私のことを考えながらその喉を鳴らしていて欲しいのに。止めちゃうの?
『げ、30分経ってるし……流石に聞いてないよなこれ』
「き、聞いてるよ。聞いてるから、た、楽しい話、続けてよ」
『まあ、聞いてる体で言うか。どうでも良い話ばっかしちゃったけど最後に、さっきの私の言葉が届いていればいいなって思ってる。今度は淋ちゃんの話、是非聞かせてくれると私も嬉しい。それが何も出来ない私が出来る唯一のしょ……恩返しでもあるし』
「の、のんちゃん……」
『じゃあ後は、そうだ。このVtuberとしての姿の感想とか聞かせてくれたら私は喜ぶ。どうかな。私は良いと思ってるんだけど。うん。そんな感じで今日は終わりってことで。聞いてくれてありがとう。冬川のんから淋ちゃんへのメッセージでした』
私の願いは通じずに動画は止まる。シークバーは最終位置で静止していた。当たり前だ、動画なんだから私が何を言おうがのんちゃんが言葉を変えることは出来ない。
すぐに私は未練がましくシークバーを戻すと、何度かのんちゃんの話を聞いた。聞き入るように聞いた。そこでのんちゃんは自分の話をするときは前髪を撫でるように指を滑らせる触る癖があることに気付いた。些細なことなのに、私はのんちゃんの事を知れたみたいで何だか嬉しくなった。
でも何度聞いてものんちゃんは同じことしか語らない。悩ましい。私はもっとのんちゃんの話を聞きたいのに。
「あ……そうだよね。のんちゃん、動画とか、上げてるんだよね」
動画サイトで検索。
拙い指で「ふゆかわのん」と打てば、上の方にすぐのんちゃんの顔がメインの動画が出てきた。チャンネル登録者は13万人……凄い多い。13万人ものんちゃんを好きな人たちがいるなんて、昔クラスにいた人気者の男の子の何万倍も人気者だ。ただ何か知らない女の子もいるけど……私はのんちゃんにだけ興味あるんだけど……いいか。我慢しよう。
身体中の熱がのんちゃんの一挙手一投足へと注がれる。のんちゃんは色んなことをしているみたいだった。ただしゲームや雑談が中心みたいで、初期の物から順々に私は動画を見ていく。途中でライブ配信もしているみたいだと気づく。え観たい。観るよ。次は今日の18:00かららしいしその時間に起きれるよう準備を……って無理じゃん。のんちゃんは私が寝てる間に起きてる訳で、私がのんちゃんの配信を観ることは出来ない。惨すぎる。私が何をしたというのだろう。ホント、なんで、もう……。
非常に残念な気持ちで胸がはち切れそうになったけど、徐々に眠くなってきたから気持ちを切り替えることにする。既に午前1時半とかで、きっと私が寝ないとのんちゃんの生活にも影響が出る。だから夜更かしは出来ない。
でも手紙は返答しないとね。
そう思い私はノートを開く。シャーペンの進みが人生で一番いい。頭が悪くてテストの成績悪かったって言うのもあるけど、自分でも訳が分からないくらいのんちゃんに対する感情が紙に乗ってしまっているみたいで。
こんなに書くならのんちゃんみたくビデオを撮る方がいいかもしれない。そうすれば今後ものんちゃんは動画で返答してくれそうだし。
だけど私はそうしなかった。
私の声は小さくて聞きづらいし、話す機会が無くてどもりがちだし……あまり自信がない。
何より自撮りの動画は流石に、恥ずかしいもん。
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