第46話 レース⑥ー2

「まずまずじゃないか?皆、一先ずお疲れ!反対側にあるチェックポイントとゴールの間に移動して待機」


崎・クワトロがNo.2チームを見送ると、全員に次の指示を出す。指示を受けた補給船、ポッドが、最終チェックポイントになるであろう反対側の端とゴールの間に向かって、大移動を開始した。


「さっきの作戦をまたやって終わりっスか!?」


崎・クワトロの隣で操縦桿を握っているルート・ビアが、皆に続こうと移動しようとしていた。


「ちょい待ち、この角度でストップ」


旋回途中の補給船を止めて、崎・クワトロがボタンを押した。ミサイルが1発、小惑星群に向かって発射された。


「今のってもしかして!?」


「のんびりチェックポイントを通過できると思うなよ」


ニヤリとあくどい笑みを浮かべた。


「どんだけ勝たせたくないんスか」


良し、移動しろと合図を受けたルート・ビアは半ば呆れた風に笑いながら補給船を皆の向かった方へ飛ばした。


「序盤も序盤から白熱した展開でしたが、一旦小休止と言った所でしょうか?No.2チームを小惑星群に見送ると、妨害チームはそそくさと大移動を開始しました。ここでも統率の取れた動きは目を見張るものがあります」


「去り際に何か撃ってたよねぇ」


「確かに、ミサイルの様に見えましたが」


「崎君も奮発したねぇ、あれはフォード君の船の周波数やら熱量やらを記録させて障害物を避けて自動追尾するやつだよ」


1つ目のチェックポイントを通過したフォード・山岡達はポッドの燃料節約の為、イグニスの推進力だけで飛行していた。


「班長あっという間でしたね、もっと時間が掛かると思ってました」


「2人のおかげだ、このペースなら勝てるぞ。甘い物食べ放題だ」


「班長、何かが接近してきます」


周囲を警戒していたフォイドから通信が来てフォード・山岡がレーダーを見ると小惑星を避けながら近づいてくる反応があった。


「誰かが追って来てるんでしょうか?」


「補給船とポッドのスピードじゃないな、動きからして自動追尾のミサイルだ」


「迎撃しますよ」


チティリが迎え撃つ準備に入ろうとするのを遮った。


「いや、このまま逃げ切る。チティリ、何度か座標を送るからそこにワイヤーアンカーを撃って俺達を引っ張ってくれ」


大きめの小惑星の円周に沿って「今だ」


合図でチティリがワイヤーアンカーを小惑星に向けて撃ち出す、ワイヤーがピンッと張ったタイミングでイグニスのエンジンを停止させた、と同時にデコイを前面に撃ち出した。


次々と送られてくる座標にワイヤーアンカーを撃っては引っ張るを繰り返してその場を離れて行く。


後方ではデコイに向かってミサイルが飛んで行ってからしばらくして、とてつもなく明るい光が周囲を照らした。

画面越しにその光を浴びたテテルと課長があまりの眩しさに目を細めていた。


「崎・クワトロ選手の放ったミサイルが命中しました、凄まじい光とノイズですのでしばしお待ちください」


(果たして命中したのかな)


課長はニヤリとしていた。


「アレ絶対設定値をイジッてますよね」


チティリがワイヤーアンカーを収納しながら通信していた。


「まぁ光だけだろ、2つ目のチャックポイントへ向かうぞ」


イグニスのエンジンを点火させて小惑星を周回しようとした時、括り付けていたワイヤーが切れてポッド2機が離れてしまった。


「!? 2人共大丈夫か?」


「自分は大丈夫です」


フォイドが噴射を使って姿勢を制御していた。


「僕も大丈夫です・・・あれっ、あれ~~?」


チティリのポッドがどんどん離れて行った。


「さっきの爆発の影響かもしれない。フォイド、チティリを捕まえて先にゴールで待っててくれ」


「分かりました、最新のデータだけ送っておきます。あとを頼みます」


さっきまでのデータをレーダーに受け取ったフォード・山岡はイグニスを発進させてポッドと離れた。


フォイドはチティリに近づいてワイヤーで牽引してゴールへ向かった。


「さぁ、大規模な爆発の影響で復帰に時間が掛かってしまいました、まだ多少ノイズがありますが実況を再開しましょう。No.2チーム誰も撃墜扱いになっていません、こちらの機械の故障なのかあの爆発を躱していたのでしょうか・・・!!・・・たった今、第2チェックポイントの通過を知らせる信号がきました、という事はNo.2チーム全員健在のようです」


「崎班長、ポッド2機がゴールへ向かってます、撃墜しますか?」


班員の1人がチティリとフォイドに気付いて指示を仰いだ。


「気にするな、フォードを止めれば俺達の勝ちだ」


崎・クワトロは最後のチェックポイントを通過した後の事へ気合いを入れ直させた。


第2チェックポイントを通過して最終チェックポイントへ向かっていたフォード・山岡はレーダーに近づいてくる反応に気付いた。


「またミサイルか?・・・!!いや違う!」


急旋回してペイント弾を避けると、蒼い宇宙船が隣に並んできた。


「流石に避けられるわね(笑)」


ボイスチェンジャーで隠しているが女性の口調だ。


「そんなもの出してきてどういうつもりだよ?」


フォード・山岡の顔が引きつって余裕の表情が消えていた。


「たまには動かさないと、船も私も錆びれちゃうじゃない、という事でゲームをしましょう。【最後のチェックポイントを先に通過した方が勝ち】でどう?」


「・・・分かった、今度こそ勝たせてもらう」


一方的に提示された勝負にフォード・山岡は賛同した。


「それじゃ、よーいドン」

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