第43話 レース④
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チャポンッ
時折小魚が跳ねる水面が、キラキラと輝いている穏やかな湖に小舟が一艘浮かんでいる。
その小舟から釣り糸を垂らしてのんびりしている。
心地よい日差しと、波風立てない程度のそよ風が、湖周りの草原を撫でていく。
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フォード・山岡が整備を終えた宇宙船の操縦席で目を覚ました。
ふぁぁ~ と大きなアクビをして「んあ?もうこんな時間か」
頭を掻きながら宇宙船から出ると、パネルを操作して格納庫シャッターを閉じると、倉庫が奥の方へスライドしていった。それを見届けるとフォード・山岡はレース会場に向かった。
「No.1チーム。今、ゴールです。タイムは
22分07秒
No.6チームの記録を大きく塗り替えて暫定1位です。
見事なドッグファイトを見せてくれました」
「まぁまぁなタイムじゃないかな」
「続いてはキャツゥレーンインミグラーティ内でもファンが多い、トットファーレが誇る美の女神。No.5 ベル・チョテレ選手の登場です。
・・・が、こちらに彼女からメッセージが届いていますので読み上げたいと思います。
【私達の仕事を色んな視点で理解してもらいたいのぅ、レースではなくショーとして披露したいんだけど良いかしらん?
それに、皆さんも休憩が必要でしょ?ウフンッ】
との事です。
レースではなくハーフタイムショーとして何かを披露してくれるそうです。そして、我々に対する休憩への気遣い。
・・・尊い!!」
「本当にそういうメッセージが来てるの?」
色っぽさを強調して読み上げた所で、課長がテテルの方を覗き込む。
「ちょーーーっと誇張してます(笑)
それでは、お待たせしました。No.5 ベル・チョテレ選手の登場です」
テテルの紹介と同時にスタートしたベル・チョテレの補給船が居住艦と小惑星群の間の宙域で大きく旋回してアクロバット飛行を開始した。
それに合わせて音楽が流れだす。
「宇宙空間でのアクロバット飛行はとても高等技術です、各部分の噴射を使って方向転換や旋回をしなければならない為、カク付いた動きになってしまうのが一般的な操縦免許を持っている方達。
とは全然違う。
【舞う】と言った方が良いでしょうか。
鳥が空を飛ぶ様に、滑らかで優雅です」
「ベル君はウチの中でも1・2を競える程の腕があるからね、まだまだこんなものじゃないよ」
課長は自慢げに語っていた。
補給船の通った後、白い光が線となって残っていた。その線を繋げてマークやら絵を作り出していく。
「あれは数十秒で消える光る粒子を散布してるんだけど、素はペイント弾に使っている塗料と一緒だよ」
無害な物を使っていますと課長は付け加えた。
披露している補給船の後方、星の明かりとして見えていた無数の光が集まりだした。
「これは!?星がベル選手に集まっていく、星までも魅了する女神っぷり。と思いきや実はポッドと補給船でした」
トットファーレの所有するほぼ全てのポッドと補給船が、ベル・チョテレの補給船に集まって大規模な航空ショーとなった。
ガヤガヤと騒がしかった店内の客達、レースを見ていた皆が静まり返ってモニターに釘付けになっていた。
「ブラボーーー。申し訳ありません、魅入ってしまって実況を忘れていました.
それほどまでに素晴らしい美しさでした」
課長が横で小さくパチパチと手を叩いている。
テテルの称賛を合図にショーが終った。
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