第38話 告白

「ヨン・ノレイは俺がもらう」


唐突に崎・クワトロが口火を切った。


「いいえ、私の班に来てもらいます」


崎・クワトロの発言に対して反論するディーフリーフォール・シー。


「俺の班にも紅一点が欲しいんだけどなぁ」


アレーグ・クワーテが2人の仲を取り持ちながら自分の意見を伝える。


「間を取ってオレの所でイイんじゃないっスか?」


『お前はいいんだよ!!』


崎・クワトロとフォード・山岡がルート・ビアの発言を一蹴する。


「当たりがキツくないっスか!?」


たじろぐルート・ビア。


少し離れた所でそんな班長らのやり取りを、ベル・チョテレは楽しそうに見ている。その横でヨン・ノレイが困った顔をしていた。






(こんなに揉めるとは思わなかった)


事の発端は30分程前になります。


15:00に会議室に集まるようにと課長からの通信を受けたので、ルート・ビアさんと一緒に向かいました。


15:00まであと10分といったところでしょうか。会議室にはすでに、班長の皆さんが来ていました。と思ったらフォード・山岡さんがまだみたいなので皆さんで談話しながら時間になるのを待ちました。


時間ギリギリでフォード・山岡さんが入室してきました。急いで来たのか、顔が少し赤くなっている様に見えましたが大丈夫でしょうか。全員揃ってからやや遅れて、奥の扉から課長が入室してきました。


「皆集まってるねぇ、ヨン・ノレイ君は全部の班を回ったのかな?」


「はい、今日ルート・ビアさんの班を最後にお邪魔してました」


さっきまでNo.6にいたのでそのまま答えました。


「うんうん、補給作業も順調に進んでいて良かった。・・・さて、貯水メインタンクが満タンになってあとは予備タンクだけになったのだけど、新人も入った事だしチームワークを強めるって事で・・・」椅子の上に登ってポーズを決めて。


「班対抗のレースを開催します!!」ゆっくりと椅子が回転して課長の背中がこちらを向いてしまいました。それを崎・クワトロさんが戻して課長と全員が向かい合う形になります。


「うん、ありがとう」課長が決めポーズのままお礼を伝えて「どう!?」とその場の全員に問いかけてきました。


「勝てば何かあるのですか?」アレーグ・クワーテさんが質問をしました。


「もちろんあるよ」


課長は身分証カードからホログラムを出して「D区の43階にオープンしたスイーツ店【甘美甘味】(かんみかんみ)のどれでも一品無料券」チケットの画像が浮いています。


「を50枚」課長がホログラムをスワイプするとチケットの画像が会議室に広がりました。


「わぁ」

「悪くないですね」


2人の女性班長は歓喜の声を出していました。


『おおぉ』男性陣も喜んでいる様に見えます。


(欲しい)私も声には出さないにしても目で追っていました。


「そして、副賞として~」課長が勿体ぶりながら。


「じゃーん」


取り出したのは、ちょっと大きめで厚みのある冊子の様な物でした。


遠目でも分かります、鮮やかな色合いの装飾がされていてちょっとした絵画として部屋に飾ってあってもおかしくない品でした。


その品が姿を現した瞬間、場の空気がピリッとなるのを感じました。


隣のルート・ビアさんの表情が緊張している様に見えます。他の班長の方達も強張ったり、引きつった表情が見られます。ベル・チョテレさんは・・・微笑んでいました。


「あの~それは何ですか?」私は気になって課長に聞きました。


「これはね、僕の作ったポエム集。巷じゃちょっと有名なんだよ?さらに、まだ市場に出てない最新版(^^♪」


「はぁ」


何と言って良いのか分からないまま相槌で終わってしまいましたが、実は課長はもの凄い人なのでしょうか?でも、皆さんの反応が不釣り合いな気もします。


「見た目も綺麗ですし、ちょっと欲しいかも」独り言のつもりが課長の耳に届いてしまったようで。


「そう?じゃぁ頑張って1位になってね!応援してるよ」課長は嬉しそうな表情を浮かべて「ヨン・ノレイ君をどこの班にしようか悩んでるんだけど、折角だから皆で相談してくれるかな?班の人数に偏りがあっちゃ困るけど、そういとこ含めて話し合ってね。研究チームの人達にレースの事はカトル・霧島君を通して伝えてあるから、観客も期待していなさい。時間は追って連絡するよ。じゃっ、( `・∀・´)ノヨロシク」


課長はそそくさと出て行ってしまいました。




少しの沈黙を挟んで




「ヨン・ノレイは俺がもらう」


唐突に崎・クワトロさんが口火を切りました。


「いいえ、私の班に来てもらいます」


崎・クワトロさんの発言に対して反論するディーフリーフォール・シーさん。


「俺の班にも紅一点が欲しいんだけどなぁ」


アレーグ・クワーテさんが2人の仲を取り持ちながら自分の意見を伝えてます。


「間を取ってオレの所でイイんじゃないっスか?」


『お前はいいんだよ!!』


崎・クワトロさんとフォード・山岡さんがルート・ビアさんの発言を一蹴しました。


このお2人はルート・ビアさんに厳しいです。


「当たりがキツくないっスか!?」


たじろぐルート・ビアさん。


少し離れた所でそんな班長らのやり取りを、私の横でベル・チョテレさんは楽しそうに見ていました。


「どこの班がマシか決めたか?」


ベル・チョテレさんと私を挟むように隣に来たフォード・山岡さんに尋ねられました。


「この事だったんですね」


初日に聞かれた事を察した私は「ほとんどの班は半日だったのでまだ何とも言えません」


キッパリと答えさせてもらいました。


「だよなぁ。人数としてはNo.1・No.3・No.4・No.6が少ないんだけど、ここで仕事してみたいとか本人の希望があればそれを優先する」


「抜け駆けして口説いてんじゃねぇぞフォード!」


口論が白熱してきたのか崎・クワトロさんは、大きな声で私達の方を指さしてきました。

フォード・山岡さんが私を勧誘してると思ったみたいです。


「希望があるか聞いてただけだ、本人の意思を尊重しなきゃだろ?それじゃ、簡単に各班の紹介をしておこうか」


そう言うと、フォード・山岡さんは、各班の役割を説明してくれました。


「まず、No.1:作業目的に対しての作戦・立案をまとめて他の班に振り分けたり、全体を見る。つまりはリーダー格な班だ」


「ヨン・ノレイが来た時、他の奴以上に素質があると強く感じた。ウチに来てくれ。俺は、お前が欲しい」


崎・クワトロさんが頭を下げて腕を伸ばしてきました。


「No.2:俺の班は一芸に秀でた奴の集まりかな?今回は俺を頼りにしてもらったって事で、あとNo.1のサポートだ。


No.3:大まかだけどガンガン作業を進めてくれる。行き詰まった時とか流れを変えたりしてくれるイメージだ」


ガハハハと大笑いしながら「女の子がいるってだけで、あいつらももっとやる気が上がると思うんだ、よろしく頼む」アレーグ・クワーテさんも頭を下げて、腕を伸ばしてきました。


「No.4:本当にNo.3のサポートって感じだ。取りこぼしたものを細かく片付けてくれる」


ディーフリーフォール・シーさんが眼鏡をクイッとしてから「あなたの勤勉さは他の班には勿体ないです、私の所へ来て下さい。どうしても嫌ならその時に離れてもらって構いませんので、まずは数日だけでも」頭を下げて、腕を伸ばしてきました。


「No.5:班全体を色んな角度から見て、抜けがあったら指摘・修正をしてくれる」


ウフフフと笑みを浮かべているベル・チョテレさんが手を軽く振っていました。何をやっても絵になります。


「No.6:え~・・・・・以上だ」


「ちょっと!流れ的に分かってましたけどね。ちゃんと紹介して下さい」


ルート・ビアさんはこのやり取りに慣れてるんでしょうか?間が絶妙です。


「No.6:No.5の指摘した所を一緒に修正・改善して、班全体のサポートが主だな。あとは、・・・ムードメーカー?」


ルート・ビアさんは腑に落ちないようでしたけど。


「初めて会った時から 良いな と思っていました、班員とは友達の様な班作りを目指してます。ヨロシクお願いしまス」勢い良く頭を下げて、勢い良く腕を伸ばしてきました。




目の前に頭を下げて、腕を伸ばした4人の方が、私が自分の手を取るのを待っています。

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