第33話 海中探査

目を開けると補給船の操縦席。

俺は横のチティリと後ろのムツミ・カズヤさんに合図を送り合って補給船を発進させる。


重々しく開く格納庫の扉。端の方に傷ができている。

補給船はゆっくりと居住艦から発進。宇宙の中、ワームホールへ向かった。


ワームホールは、水汲みのホース用と惑星との出入り用の2つ。

ワームホールを縦半分にして右側を通るように補給船は惑星内に入って行った。



―――――惑星内―――――



補給船が空中で制止した。


「チティリ、ソナー投下」

「了解」


補給船の下からソナーが落下して海面に浮かぶ。


それを確認して「まずは初日に見つけた島へ行ってみましょうか」


2日目の時、念の為に発信器を設置しておいた。俺はレーダーを頼りに島へ向かった。


島を見つけると「ん~。やっぱり形が変わってる」

昨日と比べれば半分程、初日に比べれば違いが見て取れるほど小さくなっていた。

今は補給船が2台置ける位の大きさになっていた。


「これはまた研究のやり甲斐がありますね」

ムツミ・カズヤさんが興奮気味に島を見つめていた。


「この辺りから行きましょうか」

俺は補給船の高度をゆっくり落として海に着水させた。思ったより揺れが少ない。穏やかな海だ。


「チティリは水中航行の経験はあったっけ?」

「シミュレーションでやっただけですね」

「じゃぁやってみよう、何事も経験だ」

「分かりました・・・・・それじゃ行きますよ」


手順を思い出しながら操作をしていくチティリの手は、たどたどしくも的確だった。

「潜航します」の合図でゆっくりと海中に潜っていく。補給船が潜りきった所で


ザッパァン!!


何故か海面上に出てしまった。


「何かしたか?」チティリに問い掛けると

「おかしいですね、あのまま潜っていくはずなのに」


二人で計器類を確認していると後ろから

「何か黒い物が下にありますよ?」

ムツミ・カズヤさんの一言で、俺とチティリも補給船の下を覗き込む。


黒くて大きい塊に補給船が乗っていた。


「これは・・・・・」


「島だな」

「島です」

「島ですね」


3人が島だと認知した。


「ひとまずサンプルを採取しておきましょうか」

「僕も降りていいですか?」

補給船を降りようとした俺にムツミ・カズヤさんが聞いてきたので

「何が起きるか分かりませんから、すぐ戻れるようにしておいて下さい。チティリはそのまま待っててくれ」


ゴツゴツしている島をゆっくり歩き回って

「本当に溶岩の冷えた塊って感じですね」俺は石を削り取って透明なケースに入れた。


「溶岩だったら黒色なのは分かるんですよ、これが赤茶色になるのか、また別の何かなのかって所ですかね」ムツミ・カズヤさんが高揚した声で辺りを見回している。まるではしゃぐかのように。


サンプルを入れたケースを補給船に収納した俺は「それでは海中探査を続けましょうか」


ムツミ・カズヤさんを呼び入れ、自分も乗り込むと「よしチティリ、もう一度潜航してくれ」GOサインを出した。


さっきと同じように一度海面に着水し直してから「それじゃ行きますよ」チティリの合図で補給船が潜り始める。



ザッパァン!!


黒い塊に乗って海上に出てしまった。


「また!?ハハハハ。こんなに多発してたのか」


初日と昨日で島はそんなに発見できていなかったのに。


「よし、もう一度だ」

気を取り直して




ザッパァン!!


「もういいって(笑)」




―――――海中―――――


煌めいている海面を上にして、下へ行くほど青色が濃くなっていく。


何もない。


生き物もいない。静寂が支配した底も端も見えないほど、ただただ巨大な水の中を、ひたすら下に潜っていく。


「とんでもなくだだっ広いプールって感じですね」

「目印も何も無いんだから、深度計には注意しておけよ」

チティリに緊張感を持たせるように、自分にも言い聞かせるように。


あっという間に光も届かない 闇 の中にいた。


補給船の中は、会話がなければソナーの反響音がやけに大きく聞こえる。

ソナーのデータを元に操縦席の前に映し出されたホログラムは反響音がする度に更新されていった。


「深度5000。班長、ソナーに反応があります」

「近くで避ける様に。俺がライトを当てる」


チティリがソナーを頼りに物体を避ける。それに合わせて俺がライトを向けると、黒い塊が横切っていった。


「海の上で見たのより大きかったですね」

「初日に見つけた島よりデカかったなぁ」

「いったいどこから流れてくるんでしょうか?謎ですね」


3人で上へ流れていく海上に出たら島になるであろう岩をしばらく見送っていた。


潜航を再開すると

「この補給船はどれくらいの距離を潜れるんですか?」

ムツミ・カズヤさんから質問を受けた。


「余裕をもって11000とちょっとですかね」と答えた瞬間。


「ソナーに無数の反応です!!」チティリの声の荒げ方から異常だと察した。

さっきの岩と同じ反応だが数が比ではなかった。


と同時に爆発に似た音が響いて補給船が激しく揺れた。


ただ事ではないと

「俺が操縦する!チティリは深度計を見ててくれ。あと【浮き】の用意」


チティリに指示を出しながら、ホログラムのデータを前面窓に映し出して操縦桿を握り直す。


さっきまで穏やかな海流を表していたデータが強い流れが来るのを知らせている、岩の輪郭をトレースした歪な図形が、正面から無数に迫ってきた。

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