トットファーレ
第31話 経過報告
政府公認の人材斡旋企業『トットファーレ』
私が入社して3ヶ月、様々な業務説明と研修を経て、取得している資格から、艦外活動(宇宙空間での作業)に関する管理を一手に担う事務所の一つに配属が決まった。
そこは6つの班に分かれて業務を行っている、今回は実地作業として久しぶりに艦外活動があるという事でメンバー全員が顔を合わせる事になった。
それを機に私の紹介もしてもらった。
初日はNo.2 フォード・山岡さんの班に入るように課長さんから朝礼前に言われていた。
1日毎に順次、班を回って行く形になった。
今回の補給作業は水の確保。
難題は地球2個分もある厚い雲を抜ける事。
フォード・山岡さんの操縦技術には全幅の信頼を寄せられている様で、雲の中、とてつもない乱気流を縫うようにして、わずか10分程で抜けてしまった。
モニター越しに皆称賛を浴びせていた。私もモニターに釘付けだった。
もし彼が失敗していたら、ものすごい安全運転で6日程掛かるプランになっていたと聞く。
通信障害が起きたものの無事にワームホールが開通。
昼食を挟んで、午後から私も補給船の操縦をする事になった。
惑星内も強くはないが、常に風が流れている。
補給船の操縦はオートバランサー任せにしないで、船体を安定させる事を意識すればさほど難しくはなかった。
そのまま周辺を探索。
大陸...まともな陸地は見当たらず、フォード・山岡さん達が発見した島以外にも幾つか見つけた。どれも同じような岩でできた島だ。
あとは一面、海。
厚い雲に覆われているのにとても明るい穏やかな星というのが初日の印象だ。
1日目はワームホールの開通に成功と各班の調査準備・私の簡単な操縦テストも兼ねていた。結果は及第点として詳細は伏せておく。
2日目
私はNo.1 崎・クワトロさんの班へ。
初日の水質調査の結果、生命に必要とされている主要元素の半分以上が無い事から、我々以外の生命体の期待は希薄なものになった。
ただし、生活用水としては申し分ない結果も出た事で補給作業は大々的に開始される事に決まった。
大々的にというのは、居住艦の貯水タンク。予備を含めてすべて満水にする手筈で行う事だと教わった。
補給船は小回りが利く分動きがシビアだからと、こちらの班でも操縦を教えてもらう事ができた。
この班は皆、スポーツマンといった感じだ。
朝、作業前には円陣を組んで声を掛け合っていく。
私と研究員の方はタジタジしながらも加わっていた。
3日目
本格的に補給作業が開始された。居住艦から伸びた太いホースがワームホールを通って海水を汲み上げていく。
宇宙空間では各班の護衛ポッド達が、岩石や恒星からの熱でホースが破損しないように。また、破損したら直ぐ補修できるように巡回している。
ホースに危害が出るほどの大きさの岩石は撃ち砕くか、軌道を逸らす。
熱が掛かっていれば冷却していく。
宇宙の脅威は対処可能なレベル、惑星内も脅威が無いと判断した為、各班1台づつ交代で出動していた。
No.3 アレーグ・クワーテさんの班はアレーグさんの大きな声の影響なのか。皆声が大きい。私もつられて声を大きくして話をしていたつもりなのにかき消されてしまう。それに並んで賑やかな班だ。
補給作業は順調に進行中。今日から半日で班を移動する事になったので、自己紹介と班の雰囲気を感じ取る程度で終わってしまった。
No.4 ディフリーフォール・シーさん
見た目通りテキパキ仕事をこなす仕草と的確に指示を出している。班員の方もお互いにカバーし合って動きに無駄が無かった。
質問したら直ぐ答えてくれる。質問し終わる前に答えてくれる素振りも見えた。
4日目
No.5 ベル・チョテレさん
班の皆、女性でとても綺麗な方達だった。
香水は付けていないだろうけど、ほのかにいい香りがブース内を漂っていた。
振舞われた飲み物もコーヒーではなく紅茶とお菓子。
女子会と勘違いしてしまいそうだったが、今は仕事中。
そして作業も丁寧にこなして、優雅だった。
自分の女子力が霞んでいくように思えた。
そんな中でもベル・チョテレさんはズバ抜けて所作も見た目も美しかった。
女の私でも惚れてしまいそうな美貌なのだから、男性なら尚更だ。
そんな彼女と親しい仲なのに恋人じゃない。フォード・山岡さんはどこかおかしいんじゃないかと疑ってしまう。
No.6 ルート・ビアさん
おしゃべりな人で会話が絶えない。たまに崎・クワトロさんや、フォード・山岡さんから通信で注意を受けている。それでもにこやかに明るい班だ。
この経過報告は新人研修報告書の下書きを兼ねた私、ヨン・ノレイの個人的な日記の様な物なのであしからず。
―――――――――――――――――――――――――――
補給作業が始まってから明日で5日目になる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます