第30話 不調?

UV管理局:ユナイテッドバース管理局。

その名の通りユナイテッドバースの整備・プログラム等、運用を担っている。


昼夜問わずの管理業務なので交代制である。


他の企業から情報を提供してもらいプログラムに加えて、疑似体験の多様化を広げていく事が通常業務の一つになっている。


娯楽として広めているのが一般的だが、若い年齢層に早い段階でスキルを身に着けてほしいという企業の考えもあるのだろう。




スー・如月は情報システム部へ向かっていた。


(今回の目玉はフォードの補給船の動画だろうなぁ)


帰る局員・出社してくる局員とすれ違いながら

「ドエネムさん!!ちょっとよろしいですか?」


俺は帰り支度・交代の為の引継ぎをしている局員達の中、眼鏡を掛けた細身の瘦せこけた男、ドエネム・ペイヤの近くへ行き声を掛けた。


「あぁ如月君、いらっしゃい。さっきのメールの話だね?」

机周りを片付けて、帰り支度をしていたドエネム・ペイヤがその手を止めてスー・如月と椅子に座ったまま向き合った。


「帰り際にすみません」

「大丈夫だよ。それこそ後は帰るだけだから(笑)それでこの・・・『アダルトな一夜 short version』のマスターの挙動がおかしいっていうのは・・・」


周りからクスクスとした声が聞こえたが俺は気にしないようにした。


「これに限らずshort version関連は本人以外はNPCだけなんだよ。沢山のパターンを組み合わせてるんだけど、君のダイブしていたログからマスターの行動パターンを確認したらね、一つづつの動作パターンはプログラムとしてあるみたいなんだよね」


「つまり、問題は無いと?」


「無いね。ただ、お客にお酒を掛けた事象がパターンに無いみたいで、『躓く』と『こぼす』が重なった後、設定通りの行動をして、危害を加えられた相手が君に突っ掛かってきて騒ぎになるから外へ行けって感じになっちゃったのかな?・・・けど、レアな体験だよ?」


「そういうパターンの対処も作っておいて下さい」俺は力強く伝えた。


「分かった(笑)それと、この『ジョリ』っていうこっちの方が怪しいね。君・・・ダイブしてる時に髭は生えてた?」顎を手で摩りながら


「髭ですか?毎日剃ってますけど?」俺も顎を手で摩りながら


「そう?ユナイテッドバースの中でも体からの干渉が起こる時があるから。特にAMBが起動していない時は」


「実はあの女性客は男性がダイブしていたとか?」

「一人がダイブしたらシャットアウトするし、ハッキングの跡も無いんだよねぇ。もう少し調べてみるけど」


「そうですか、ありがとうございました。自分からの報告はこれだけですかね」


「はい、ご苦労様でした。では、帰りましょうか」とドエネム・ペイヤも立ち上がって「でも、君ぐらいだよ、こういうちょっとした事でも報告してくれるのは」


スー・如月とドエネム・ペイヤは一緒に帰路に発った。


「気になったもので、クレームで来るよりは良いでしょ?」

「他の人達ももっと報告してほしいんだけどねぇ」

「それだけ不備が無いって事じゃないですか?ドエネムさんはやり手だから(笑)」

「後任の教育の為にワザと簡単なトラブルでも起こしてみようかなぁ」

「それも有りですけど・・・その時は事前報告をお願いします」

「ハハハ。そうれはどうかなぁ?」悪戯しようとしている笑顔がチラホラと。

「本当にお願いしますよ?」俺はちょっとドキッとした。


勘ぐられたのか「大丈夫だよ。それより動画だけど、ご友人にお疲れさまでしたとお伝え下さい」


「あぁ、その事なんですけどね・・・・・」

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