UV管理局

第26話 報告会議

居住艦の航行に必要な設備の管理施設が前面にあって、バーススクエアや、モールといった商業施設と公共施設と居住区が層になって1セット。規模はまちまちだが、これが艦後方にある就業施設まで9セット分が続いている。


UV管理局:ユナイテッドバース管理局

その名の通りユナイテッドバースの整備・プログラム等、3局で運用を担っている。

その内の1つが俺の職場だ。

各局ともにバーススクエアの近くが都合が良いって事で、モールの中にある。

昨日、フォードを連れて行った所と作りは同じだがは別の局だ。


受付ルームの横を通り過ぎ、奥の扉から入ると幾人もの局員と行き交う中、挨拶を掛け合いながら各部署との会議に向かう為、出社してそのまま会議室に向かう俺に

「おはようございます。スー・如月補佐」女性局員が挨拶してくれた。

「おはよう」立ち止まって挨拶を返した

「大丈夫ですか?」女性局員が顔を見てくる。

「何がだ?」不思議そうに見てくる。

「凄くやつれた様に見えますが・・・」

「そうか?ちょっと遅くまで起きてたからかな?」自分の頬から顎へさすりながら「ありがとう、もう一度顔を洗ってから会議に行くよ」女性局員と笑いながら別れた。

別れ際に「声もガラガラですよ。ギリギリまで寝てたんですか(笑)?」クスッと笑われてしまった。


トイレの洗面所で顔を洗ってうがいもした。「あ゛~」「あ~」そんなに声がおかしかったかなぁ?と鏡に映った自分を見る。理由は分かっていた。




朝、俺は膝から崩れ落ちて _|―|〇 こうなった。ニュースには特報が流れ、人気俳優とアイドルの結婚に対してのインタビューを受けた一般艦民の声が聞こえている。

「何してるの?」妻が起きてきて、床に伏せている俺を不思議がった。

「腕立て」両腕を曲げ伸ばしして上半身を上下に動かす。

「足は伸ばさないの?」膝を着いた状態だった。

「腰を痛めないやり方だから」フン!フン!と筋トレを続けた。

「ふ~ん」




ショックな出来事を振り払う様に速いペースでジョギングをしながら出勤した為か、ちょっとした疲れと喉が渇いたからだろう。


そんな事を思い出しながら会議室のドアを開けると、すでにテーブルを挟んで2人づつ対面に席に着いていた。

「おはようございます」どっちが先か分からない、お互いに顔を見てほぼ同時に挨拶をして、隅に置いてあるサーバーから飲み物を用意して、開いている席に着いて局長と残りのメンバーを待った。


「そういえば如月さんって笹瀬一華のファンでしたよね?朝のニュース見ました?」

美少年に見えるリーン・橘が言ってきた。

「まぁ、驚いたけども・・・お前だってワン・ルイのファンだろ?」

リーン・橘はボーイッシュな女性である。

「そうですよぅ。笹瀬一華のどこが良いんですかぁ?ただのアイドルグループの1人じゃないですかぁ」上半身をテーブルの上にうつ伏しながら悲観している。


「人気者同士だからなぁ」俺は澄ました顔で一口飲みながら

(はぁぁぁぁ!?一華んの良い所なんざいくらでも言ってやるわ!!演技もズバ抜けて上手いし、神業動画も諦めないで幾つもこなす姿勢に心打たれた人は多いんだよ。それこそワン・ルイとだなんて・・・・・)


リーン・橘はうつ伏したまま

(はぁぁぁぁ!?人気者で片付けないでもらえますか?ワンワンが下積みからどれだけ苦労を重ねてきたと思ってんのよ・・・・・)


「ワン・ルイもバックダンサーグループの1人だったんですよね?共感する所があったとかですかね(笑)?」俺の右隣、リーン・橘の向かいに座っている眼鏡を掛けた、いかにもストレスとかに弱そうな細身の男性。ドエネム・ペイヤがただの世間話として入ってきた。


((はぁぁぁぁぁぁ!?))スー・如月とリーン・橘の内心


アイドル談議に花を咲かせても良いのだが、今は仕事中な上に、会議の前だ。とドアが開いて局長と最後の1人が入ってきて席に着いた。


白髪のショートヘアに口ひげと顎ひげともみあげも白い。お洒落でダンディーなおじさま 局長 が渋い声で「おはよう」

瞬間、空気がピリッと変わった。

その場の全員が『おはようございます』

「これで皆揃ったかな?では報告会議を始めよう」




今回の就職希望人数が前年に比べてどうとか、定期的なメンテナンスを実施して部品交換をしたとか、各部署から報告と要望が出されていった。それらを俺は記録していく。

「最後にCS部から、クレームの報告です」


CS部:カスタマーサポート部からの報告で珍しくクレームが来ているそうだ。


「『勇者になってAMBが作動する前に強いモンスターに出くわしてやられてしまった。ゲームバランスはどうなっているんだ?』だそうです。昨日起きた事だそうなので調査後返答しますと伝えてあります」


AMBやHSRは脳に負担を掛けない様に少しづつ機能していく仕様になっている。故にダイブ直後はまだ仮想空間にいる自覚があるのだ。『AMBが作動する前』というのはダイブしてから時間が経っていない事を意味する。

「それは、バグが発生したって事か?」局長が問いてきた。

「情報システム部です。報告を受けて直ぐに調べましたが異常はなく、ログも確認しましたが正常でした。ハッキングの形跡も無しです」ドエネム・ペイヤが手を軽く挙げて淡々と答えた。

「正常な上で起きうる状況とは?」威圧がすごい。


単純にダメージを負って倒された、としか答えが出なかった。


「はい」俺は挙手して「そのダイブしていた内の1人が自分の友人で、そのバトルは自分もディスプレイで見てました。恐らくその時の事だと思います」昨日のフォードに教えたポイント稼ぎの話をした。裏技でもなくそういうプログラムで運用している為問題はない・・・はず。


「そういう事は何度か起きてるよな?」局長が皆の反応を見る「PvPであればLv.を操作した所で大して意味は無いか・・・マーケティング部、そのバトル含めて使えそうな画像を使ってプロモーションビデオを作って宣伝しようか。まだモンスターもプレイヤーだと認知している人は少ないからな。そのクレーム相手にはポイントを渡してモデルリリースを取れ」

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