第25話 第二陣

昼食を済ませて、五ノ前、ヨン・ノレイ、ムツミ・カズヤが乗る補給船が他の班の宇宙船と一緒に惑星を前に横一列に並んでいる。

俺はそれをモニター越しから指示を出していた。

「聞こえるか?常に風が吹いている状態だからバランスは崩さない様に気をつけろ。突風が来ても落ち着けば大丈夫だ。今日は飛行に慣れるのが目的だから、五ノ前の判断でヨン・ノレイにも操縦してもらう」

「了解」「分かりました」五ノ前とヨン・ノレイが返事をした。

「ムツミ・カズヤさんも折角なので乗ってもらっていますがご希望なら明日以降も直接乗って研究指示を出してもらって構いませんので(笑)」

「分かりました。よろしくお願いします」初めてなのかワクワクした声が聞こえた。


「あ~あ~、No.1から各班へ」崎・クワトロの声が響いた。「フォード・山岡班長のおかげで順調にいけば余裕をもって一週間で補給作業は終われそうだ。各班、研究員の方達に存分に協力できるものと思う。今日は周辺探索が目的だがNo.1に水質調査の方がいるから俺達の補給船は今から水質調査を行う。他の班も可能であれば帰り際に水を運んできてくれると助かる。以上だ」崎・クワトロの通信が終わった。各補給船から「了解」の返事と共に一機づつワームホールに入って行った。


「うおっっと」五ノ前の驚いた声がスピーカーから聞こえた。

「大丈夫か!?」

「こんなに風が吹いてるのか!?」

「必要なら気流を可視化して飛んでくれ」

俺が雲を抜ける時に使ったプログラムは全ブースにも送ってある。


しばらく様子を見ていたが、五ノ前も順調に飛行していたので「少し別の事をするから、何かあったら呼んでくれ」テサラにサポートを任せて隣の机に向かった。


惑星に突入した所から雲を抜けた所までのデータをまとめて報告書として課長に送信した。

同じデータから飛行データと気流のデータを移してUV管理局にも送信したら、1分もしない内に電話が掛かってきたから、俺はブースを出ながら通話した。

すれ違いにノレイ・ツヴァイがコーヒーをトレイに乗せて人数分持ってきてくれたのを見て、ありがとうございます。と一礼した。


「早いな、デスクワーク中だったか?」

「・・・・・」

「? 声が擦れてるけど風邪か?」電話相手の声がガサガサに聞こえた。

「・・・・・」

「お前もか。結果として雲は無事に抜けて、今は補給作業の準備中だ」

「・・・・・」

「ありがとう。じゃまたな」通話を切って、ブースに戻ると、さっき、ノレイ・ツヴァイが用意してくれたコーヒーが置いてあった、まだ誰も取っていないようだったので、一つ貰ってグゥゥっと流し込んだ。「!?」コーヒーを半分ほど残して飲むのを止めた。カップを覗くと普通のコーヒーなのだが、口の中にいつまでもコーヒーが残っている感覚があった。飲めなくはなさそうなので飲み切ってから「ノレイさん、ちょっとよろしいですか?」とコーヒーを全部持って。

「はい、何でしょうか?」ノレイ・ツヴァイをブースに隣接している給湯室に連れて行った。


各ブースには給湯室が隣接している。簡単な飲み物とかならここで用意できる。


「さっきのコーヒーに砂糖は入れてくれたんですか?」

「入れました。これです、あっ!!」


手に取った袋はコーンスターチだった。


「あたし、またやっちゃいましたね」シュンとしている。

「ちょっとトロみがありましたけど(笑)気にしなくていいですよ。害の無い物ですし、コーヒーは美味しかったです。口の中に長く残るんだからコーヒー好きには好評でしょうね(笑)」やり方を変えればいいんだと気付いた俺は「ノレイさん、もう一度コーヒーを淹れてもらっていいですか?」俺はトレイに人数分のコップを乗せてノレイ・ツヴァイに淹れてもらった。

「あの、砂糖とミルクは?」一つづで良いんでしょうか?と聞いてきたから。

「全部ブラックで」砂糖とミルクを適当にトレイに乗せて「では行きましょう」とブースに持って行った。「コーヒー淹れたからここに置くぞぉ。砂糖とミルクは自分で入れてくれ」

机の端に置いた。


「ノレイさん、明日から本格的に研究の作業も入ってもらいますが準備の方は何か手伝う事はありますか?」コーヒーをどうぞと手招きしながら

「準備はできてます」コーヒーを手に取りながら答えた。

「じゃぁ今日はゆっくりしてもらって、今惑星に行ってるメンバーが戻ってきたら今日の作業は終了です」あと1時間位だろうか?と話をしていたら五ノ前から通信が入ってきた。


「五ノ前だ。これと言って変わったものは見られない。ヨン・ノレイに何度か交代で操縦してもらっているが、技術は申し分ないぞ。燃料も半分程になったから、このまま水を運んで帰還しようと思うがどうだ?」

「了解した。戻ってくる時は格納庫にぶつけない様に頼むぞ」誰もが一度はやる、補給船の破損事故で多いのは格納庫に入る時なのだ。

「誰に言ってるんだぁ班長?」五ノ前は失敗しないと言いたげだそうだ。

「この前ガリガリっと擦った五ノ前にだが(笑)?その経験を生かしてアドバイスしてやってくれ。ヨン・ノレイ、格納庫まで操縦してみなさい」

「分かりました。やってみます」声から緊張が伝わった。

「失敗しなきゃ上手くならないんだから、ぶつけて構わないぞ。気楽にやってくれ」

「班長!!俺の時と対応が違くないか!?」

「あっあれ?・・・よく聞こえない・・・電波が・・電波が・・・」マイクを指で突っついてとぼけて見せた。

「班長、こっちのマイクで丸聞こえですからね」テサラのマイクは良好だった。

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