第24話 勘違い
課長とカトル霧島と会議室で別れて、俺は食堂へ向かった。テサラが一人で茶を飲んでいた。
「お疲れ」俺はテサラの元へ行って腕を出して
「お疲れ様です」軽くぶつけ合った。
「ノレイ・ツヴァイさんは?」一緒にいるものと思っていたから、周りを見渡したが姿が見えない。
「彼女はお手洗いです」
「そうか・・・次は五ノ前とヨン・ノレイとムツミ・カズヤさんに一度行ってもらおうと思ってるからテサラと俺はこっちからサポートでよろしく」テサラの向かい側に座ってコーヒーを飲みながら「休憩が終わったら四川と休憩交代してやってくれ」
「分かりました」
予定を伝えて一足先にNo.2のブースに向かって食堂を出ると
「きゃあ!!」
以下省略
「ごっふぅ」
強烈なタックルを受けて相手を抱える様に仰向けに倒れてしまった。
「あっ、山岡さん!雲の中での飛行凄かったです。あんな気流の中を間近で見れてとても貴重な体験ができました。ありがとうございます!」ノレイ・ツヴァイが凄く興奮している。
「ノレイさんの助言があってこそです。でなければ、今頃はまだ雲の中でしたよ(笑)こちらこそありがとうございました」
「そんな!?あたしなんて思った事をただ叫んでただけで・・・」
「それで良いんです。おかげで助かった訳ですし」雷の直撃を避けられたのは本当に彼女のおかげだ。「あっそうだ」ポケットから朝拾った身分証カードを取り出して「朝、顔は見てなかったんですが、曲がり角でぶつかったのはノレイさんですよね?これ、落としましたよ」彼女に渡すと。
「えっ!?」とノレイ・ツヴァイは自分の衣服を探し回り「あっ本当ですね。失くした事も気付いていませんでした」慌てながらカードを受け取りながら「拾って頂いてありがとうございます」安堵した表情が見える。
「今日中に返せて良かった」
『あははははは』何故だろうか。二人で顔を見合わせて笑ってしまった。
「イチャつくのは良いが、まずは立てや」声がして視線の先には崎・クワトロを先頭に各班長がいた。
倒れたまま会話をしていた事に今気づいた。ぶつかって倒れたとは言え通路に男女が重なって笑っていたのだ。傍から見たら滑稽な状況だろうな。
「何でいんの!?」マヌケな質問だった。
「燃料補給と休憩」そのぐらいの時間は経っていただろう。ノレイ・ツヴァイと一緒に立ち上がる。
「若いって良いなぁ」アレーグ・クワーテがガハハハハと笑いながら食堂に入って行く。
「事故だから」イチャついてた訳じゃないから。
「・・・卑猥です」呆れた声でディフリーフォール・シーが捨てセリフを吐いて行く。
「誤解だって」せめてハッキリと馬鹿にしてくれ。
「今度紹介してもらわないと」ベル・チョテレがアラアラと微笑みながら行く。
「そういうんじゃないから」
「まだお昼ですよ(笑)?」ルート・ビアがからかって行く。
「うるさいよ」
「まぁ、冗談で言ってるから」崎・クワトロがフォローしてくる。
「それは分かってる。俺は良いんだが」ノレイ・ツヴァイの顔を見ると顔が真っ赤で俯いていた。「ノレイさん!皆からかってるだけですから!」泣きそうなのかプルプル小刻みに震えている。
「そうだよ、あいつらにはちゃんと話しておくから、大丈夫だから!なっ!?」
男二人で一人の女性を慌ててなだめている。
「あたしは大丈夫です、ちょっと驚いただけですから」深呼吸をしてノレイ・ツヴァイは「山岡さんはオペレーターの四川さんが好きなんですよね?」
「は!?何でそこで四川の名前が出てくるの?」
「変な話にならない様に気を付けますからぁぁぁ!!」走り出すノレイ・ツヴァイを
彼女を引き留めようとしたが間に合わなかった。
「・・・・・」呆気に取られている俺に。
「そうなのか?」崎・クワトロが聞いてきた。
「な訳ないだろ!どっから出てきたんだそんな話」
「何の騒ぎですか?」テサラが食堂から出てきていた。
「ん?いやっ大丈夫だ。ノレイ・ツヴァイさんが勘違いして走って行っただけ」
「はぁ」何の事やら、と言った感じだ。
「テサラ、第二陣は他の班と時間を合わせて昼食後にする。それまではさっきのデータのまとめと準備。これを皆に伝えてくれるか?」
「分かりました」テサラがこの場を離れていく。
「大丈夫なのか?」崎・クワトロが追いかけなくて良いのか?と心配している。
「まぁ大丈夫だろ。どっちにしろブースに集まるんだから」俺は頭を掻きながら崎・クワトロと別れてブースに向かった。
「班長!どういう事ですか!?私と班長が付き合ってるって話が出てるみたいじゃないですか!!」
・・・大丈夫じゃなかった・・・
ブースに戻った俺に四川が食って掛かってきた。この短時間・・・いや短距離で随分話が進んだなぁ(汗)
俺はノレイ・ツヴァイさんが思い違いをしている事を伝えて、四川からもちゃんと否定しておくようにと念押ししてからこれからの予定の話をして、休憩に行くように言った。
「ハッキリと【そんな関係じゃない】と言ってありますし、班長はベルさんと付き合っている事も言ってありますから」そう言って四川はブースを離れて行った。
・・・お前も違うよ~ベルとはそんなんじゃないよ~・・・
やれやれと。
ブースにはチティリとフォイドも戻っていた。
『お疲れ様です』
「お疲れ~」二人に労って「皆この後の予定は聞いてるな?それまでのんびりやっててくれ。テサラとノレイ・ツヴァイさん。ちょっと」補給船に一緒に乗った二人を呼んで。
「ノレイさん、俺と四川ってそう見えます?」思い違いを払拭しておかないと
「えっ!?補給船の中で言ってましたよね?【四川、お前が好きだー】って」
?????
俺とテサラはお互いに 何でだ? と首を傾げた?
「通信は出来なかったけど、録画はされてるはずだ。テサラ」
「はい」テサラがパソコンを操作して録画した動画を出す。
「俺はどの辺で言いました?」ノレイ・ツヴァイに問うと
「雲を抜けて通信をしようとしていた時です」
テサラが動画画面を動かしてその辺りに合わせていく。
補給船内部のカメラで録画した動画だから俺達の声も聞こえる。
≪≪≪≪≪≪≪≪
「No.2補給船、雲を抜けたぞぉ」
「・・・褒めてくれぇ」
「もしもし?四川?」
「・・・お前が好きな相手は~」
≫≫≫≫≫≫≫≫
・・・・・
「あたし、勘違いして変な事言っちゃいましたね」
「これは俺が余計な事を言ったからですよ。申し訳ない」
「そうですね、班長の悪ふざけが招いた結果かと」
「はい、すみません」
「でもさっき聞きました。本当はベルさんって方だと」
「それも違います」俺は即否定した。
「そうなんですか!?」驚くノレイ・ツヴァイ。
「その話もどこから出てきたんだか」俺は半ば呆れた。
後ろから「皆言ってんスよ。あの二人距離近くねぇ?って」チティリが手を頭の後ろに組んでいた。
「そうか?そんなつもりはないんだけどなぁ」
他にもこういう時にああだ。ああいう時にこうだ。怪しいと思われている話が班員からここぞとばかりに浴びせられた。
ヨン・ノレイとノレイ・ツヴァイは恋愛ものに対しての女の子の様に、はわわわわと顔を赤らめていた。
俺はそれらを真摯に聞き入れてから断固として全否定していった。
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