第22話 一仕事終えて
ワームホールを抜けると数分前までいた宇宙に戻って来た。
他の班の補給船が横一列に並んでいる中を居住艦に向かってゆっくり飛んで行くと
「ひとまずのお疲れだな」崎・クワトロからの通信だった。
「あぁ、どっと疲れたよ(笑)少し頼む」
「任せろ」そう言って崎・クワトロ率いるNo.1がワームホールに入って行く。
後を追う様に
「でかした」
「少し休んでて下さい」
「かっこよかったわよ」
「凄かったっス」
皆が一言添えてワームホールに入って行った。
格納庫に補給船を着艦させると、テサラとノレイ・ツヴァイに先に戻るように言って、俺は補給船を出て後ろに回った。
人の半身位の野太いコードを補給船に繋げてスイッチを押すと燃料の補給が開始された。
補給船から採取した赤茶色の石を格納庫の壁にある取っ手を開いて中に入れて閉じた。緑のランプが赤ランプに変わった。
俺は補給船に戻って操縦席に深く座って長めの瞬き程度に目を閉じた。
目を開けると、白い空間にいて、目の前にはハッキリとは見えないが女性の様な人物がこちらに振り向きながら ≪また会えたね≫ 笑顔なのは分かったが、何かおかしいと思ってもう一度目を閉じて開くと、
白い空間・・・いや白いカバーがされていた。カバーを開けて外へ出るとNo.2のブースに戻ってきていた。
モニターから振り向いて四川が「お疲れさまでした班長。記録はしていたんですが音が途切れていたみたいで」さっきまでの報告をしてくれた。
テサラとノレイ・ツヴァイの姿が見えないが休憩に行っているんだろう。
「こっちでも呼びかけてたんだが機器類も問題なかったから雲の影響だろうな」
体を伸ばしボキボキと音を鳴らしながら「ワームホールを繋げたからもう大丈夫だろう。チティリとフォイドに連絡は?」
「他の班と一緒に探索してます」四川の報告を聞きながら五ノ前と腕同士をぶつけてハイタッチの様な合図をした。
「あいよ。ヨン・ノレイさんも」俺は腕を上半身前に斜めになるように彼女に向けて待つ。
「お疲れさまでした。凄かったです」腕をぶつけ合いながら称賛してくれた。
「ちょっと課長に報告してくる」ブースを出ようとしたら
「凄いです、宇宙船ってあんな飛び方も出来るんですね!!」ムツミ・カズヤが興奮していた。俺の手を両手でガッチリ握ってきたので
「ありがとうございます。上手くいって良かったです(笑)」両手で握り返す。「あっそうだ!!ちょっと待ってて下さい」俺はブース奥にあるドアを開けて一室に入って行った。
壁に赤ランプが点滅している取っ手を引いて開けて、透明なケースに入ったさっきの赤茶色の石を取り出した。
「本格的な補給作業と、研究協力は明日からなので研究する時にケースから出して下さい」
ムツミ・カズヤに手渡すとすごく喜んでくれた。
「30分位で燃料が満タンになるから、五ノ前。ヨン・ノレイさんとムツミ・カズヤさんを連れて一度行ってくれ。問題なければヨン・ノレイさんに操縦してもらっても構わない。免許持ってるんですよね?」ヨン・ノレイさんが慌てる前に念押ししたつもりだったが
「分かりました」という彼女から返事がきた。
会議室のドアを開けると、課長とカトル霧島が出迎えてくれた。
「お疲れ様。いつもながら見事だね」笑顔で言ってくれた。
「素晴らしかったです。おかげで研究も大いに進みそうです」
「ありがとうございます。これしか能がないもので(笑)」と握手をした。
この人は笑う事があるのか?と不安になるほど無表情が強い印象がこの数時間でついてしまっていた。
「失礼します」事務員の方がコーヒーを三人分持ってきてくれた。
課長が窓側に俺とカトル霧島が対面するように三人が席に着いて
「では、フォード山岡君、簡単で良いから報告を」
「はい、ではまず雲の厚さは地球の直径の2倍、気流が凄まじく最大風速10万km/h。100㎞毎に層に分かれていて風向きが変わっています。地表に近づくにつれて雷が多くなってきたように感じました。雲を抜けた先は一面海です。赤茶色の岩石でできた島を一つ発見しました。一部を採取して、ムツミ・カズヤさんに渡してあります。明日から本格的に作業に入ってもらいますので、今から補給船に慣れてもらう為に一度惑星の方に行ってもらおうと思っています。雲の下でも風は吹いてますが航行不能なほどの強風は無く穏やかでした。通信が出来なかったようですが雲が関係している事と思います。ワームホールを繋げたので問題ないです。厚い雲なのに朝なんでしょうか、明るくなってきたんですよね?ここら辺はぜひ研究結果を聞かせて頂きたいです」以上です。と報告を終わらせた。
「うん、ありがとう。他の班からも後で報告を聞くとして、ちょっと休みなさいね」
課長はそう言うと「ちょっとトイレ」会議室を出て行った。
俺とカトル霧島の二人が残った。
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