第14話 仕事内容

新人に対して説明口調で

「知ってると思うけど、俺達『トットファーレ』は一つでも得意分野があれば、受けた依頼に対して適材適所で人選して斡旋する。いわゆる【何でも屋】な訳で。居住艦の至る所に事務所が散在してる。政府公認の何でも屋だと思ってもらえれば簡単で良いんじゃないかな?そして、今回の様な艦外活動は俺達に声が掛かるんだけど、君は艦外活動ができる資格とか持ってるの?」ふと疑問が浮上してきたので話の流れで問いてみた。

「はい、中型輸送艦の操縦免許を持ってます」そこそこ大きい宇宙艦の操縦ができるらしい。

『おお~』周りが騒めく。

「頼りになるなぁ。で、今回は水の補給作業になるんだけど雲が厚くて、乱気流が凄まじい。この雲を抜けてワームホールを繋げない事には補給作業に入れない。これが第一段階」

「その雲って晴れる時はあるんですか?」チティリが軽く手を挙げて言った。

「四川、画像を出してくれ」四川が拡大した惑星の画像を皆に見せた。

「今、宇宙に出たらこの惑星が目の前にあるんだけど、大きさは直径が木星の約二倍、宇宙から地表?水面?までが地球二個分という距離らしい。往復しただけで補給どころじゃなくなるな(汗)そして全面雲に覆われて白い。事前調査で探査機を無理やり落として、やっと得た情報が【水が豊富にある】だから、晴れるとかは期待できないな。四川、気流を可視化できるか?線と矢印とあと風速別に色分けして俺のバースに送ってくれ。」四川は早速データのまとめ作業に入ってくれた。

「そして雲を抜けてワームホールを開通出来たら、いつも通りの作業に入ってもらうんだけど、ニュースでもやってたな、今回は研究チームも加わる事になっているからその人達の協力もよろしく」

「具体的には何を?」テサラが仏頂面で聞いてくる。

「色んな分野の人が来るって事だからなぁ、各ブースでやる事は変わるんじゃないか?作業開始前に研究チームの人が来るからその時に聞いておくよ」


「ちょっといいかな」ブースの出入り口に課長が立っていた。

「はい、課長。どうぞ」皆が課長の方を向くと、課長の他に男二人が一緒に立っていた。一人はさっきのカトル霧島。もう一人は知らない。

「こちらで皆さんとご一緒させてもらう研究員の紹介をさせてもらいに来ました」カトル霧島が隣の同じ位の身長の男を紹介しに来た。

「どうも、ムツミ・カズヤと言います。地質調査を担当します。水の惑星と言う話ですが陸地が存在するのであればご協力をお願い致します」

「陸地が存在したとしてどの様にすれば?」俺はテサラの疑問をぶつける。

「私が指示した箇所の採取をお願いしたいです」屈託なく答えてきた。

「分かりました。遠慮なく言って下さい。皆も良いな?」班員の顔を見て念押しする。嫌がるような奴なんていないのは分かってる。

「では次の班に行きましょうか?」課長がカトル霧島を連れて行こうとブースを出ようとしてブース外に数人の影が見えた。他の班への研究員だろうか?

「あ!あの」俺は二人を引き留めた。二人も俺の方に振り向いて?マークを向ける。

「研究員の方は二人でしたよね?」朝礼の話を思い出した。

「もう一人は遅刻です。実力はあるのですが自由気ままと言うか、後ほどご挨拶に戻ります。悪い奴ではないのでよろしくお願いします」こちらに申し訳なさそうな顔が見えるんだが遅刻している相手にだろう、イラッとした顔が見え隠れしている。管理職は大変だよね。

「分かりました。本格的に研究の協力が出来るのは明日からになると思うのでお気になさらず」俺は何とかカトル霧島に落ち着いてもらって遅刻した人が怒られない様に祈った。


ムツミ・カズヤだけがその場に残った。


「新人がいるので説明を続けさせてもらいますが、よろしいですか?」ムツミ・カズヤに断りを入れたら快諾してくれたので、ヨン・ノレイに説明を続ける。


「これ」目の前の白いカバーがされた椅子を指さす。「簡単なユナイテッドバースだと思ってくれれば分かりやすいと思うんだけど、これで格納庫にあるロボットを介して補給艦を操縦します」なんかもうザックリな説明になってしまった。


「何か質問はある?」ヨン・ノレイに聞く。


「ユナイテッドバースなら直接補給艦として動かせば手足の様に作業できると思うのですが?」

彼女が言うのは補給艦そのものになれば楽なのにロボットを介する意味を問いて来ている。

「補給艦が故障して動けなくなったら?そのままだろう?その場で修理する為に人間が行けば良いんだろうけど安全面の話で人間と同じ動きが出来る媒体が必要なんだよ」

「プログラミングとAIで対処は出来ないのですか?」

あらかじめ用意したプランとAIの応用力で人間は管理していればいいのではないか?だそうです。

「・・・・・機械に無くて生き物にあるものって何だか分かるか?」

ヨン・ノレイは考えて「寿命?ですか?」

「機械も壊れるよ?」

彼女が悩んでいるのを見て「いや、悪い(笑)・・・俺個人の考えだから一概に言えないけど『欲』だと思ってる」

「欲 ですか?」

「どんなに高性能な機械でも・・・違うな。高性能な機械だからこそ計算して出た答えが【駄目】なら諦めるだろう?生き物は傷ついても死ぬまでどうにかして生きようとするもんだ。上手く言えなくて悪いな。特に今回みたいな未開の惑星なんだからプログラムなんて立てられないしな(笑)話がズレてしまった。あと一時間ちょっとだから、皆と一緒に準備の手伝いをしてもらえるかな?ムツミ・カズヤさん。何か聞きたい事があったらここのメンバーに何でも聞いて下さい」

ヨン・ノレイとムツミ・カズヤさんに声を掛けて俺は一度ブースを出た。

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