第3話 復する
気付くと見知った顔が目の前にいる。
「よっ」
そいつは軽い挨拶をして「俺の名前分かるか?」と変な質問をしてきた。
「・・・スー・如月」俺は何の意図があってこんな事を聞いてるんだ?と思いながらも答えた。
「治ったようだな」如月は安堵の様子だ。
「?、治った?」何を言っているのか分からずに椅子に座ったまま事の成り行きを待っている。
「失礼致します」店員が椅子を持ってきて目の前に座る。
「あなたはAMBをし忘れたのでその処置をさせて頂きました」なぜこの場にいるのかを説明されてやっと理解した。
「処置完了の確認として幾つか質問しますので答えて下さい」タブレットを開いて質疑応答が始まった。
Q「あなたの名前は」
A「フォード山岡」
Q「居住区は」
A「D9-3088-AE」
「はい、合っています。身分証をお返しします」
店員から身分証カードを受け取り胸ポケットに入れる。
Q「我々がいるのはどこですか?」
A「第4宇宙移民群 居住艦『カーフンツァ』」
Q「宇宙移民群とは?」
A「私達人類の祖先は人口増加により地球・月・火星にも住める場所が無くなり、新天地を探して外宇宙へ各方面に移民を始めました。私達第4宇宙移民群はケプラー452bを目的地として航行中です」
Q「あなたが行っていたゲームは?」
A「MMOVRAS(マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・バーチャルリアリティ・オール・センセーション)『ユナイテッドバース』」
Q「それはどういうものですか?出来るだけ詳しく」
A「プログラムした世界を全感覚で疑似体験できる機器です。元々は歴史の疑似体験をして、史実確認と再発見を目的に開発されました。そこから監視カメラ・周辺情報を元に事件解決、教育に起用。今では人間以外の生き物の体験もさることながら、空想の生き物・人物になって世界を謳歌できる娯楽として人気を得ています」
Q「あなたが先程、処置を受けたAMBとは?」
A「Auto(オート)Memory(メモリー)Backup(バックアップ)
ユナイテッドバースのプレイが長時間に渡る場合、または、生活に支障が出るような場合例えば、人間以外の動物や昆虫など、記憶の交錯を防ぐ為に保存して切り替えるシステムです」
Q「長時間のプレイをした場合、肉体年齢と精神年齢にズレが起きると思いますが?」
A「Cold Sleep(コールドスリープ)で肉体の活動を脳以外止めて、High Speed Recognition(ハイスピード レコグニション)『HSR』で脳の情報処理能力を上げます。つまり、外の時間より脳内時間が早くなる訳です」
Q「・・・・・」
A「・・・・・・・」
Q「・・・・・」
A「・・・」
Q「・・・・・」
A「・・・・・・・・・」
質問と回答が延々と続いている。
「はい、結構ですよ。これで質疑応答は終わります。次からは気を付けて下さいね」
店員はドアを開けてくれた。
「ありがとうございました」一礼して俺はスー如月と店を出た。
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