第2話 目覚め
「誰じゃ?ここは?」来た事ない空間に見知らぬ人が出迎えている。
「俺は、ってお前!AMBを入れてなかったのか?」その人は聞き慣れない単語を言って驚いている。
「エンビ?・・・塩化ビニール?」何とか知ってる単語を捻り出したが違うみたいだ。
「AMBでエンビ!って言っても分からないか、とりあえず付いて来い。歩けるよな?」
変な球体?カプセル?から出た儂は辺りを見回して
「そうか!ここは天国だ!そんであんたは天使さんじゃろ?」合点がいったように問い質してもその人は「天使じゃない・・・いいから付いて来い」しか言わない。
「仏頂面な天使さんじゃの」・・・「ははははは」天使なのに仏頂面。違う宗教を混ぜてしまった事に笑い出す。
「おじいちゃん、もうすぐ人が多くなるからはぐれないでねぇ」すごい作り笑いで連れて行こうとする。
広大な部屋なのだろうか、空ではなく天井がある。窓はなく壁だけがある白い空間。
周りには似たようなカプセルが等間隔で並べられている。蓋が開いているもの、閉まっているもの。入っていく者、出てくる者。皆、遊園地のアトラクションを楽しんでいるように見える。
息子や孫を遊園地に連れて行った時の事を思い出す。が、そんな人達を尻目に儂とその人は白い空間一帯を抜け、商店街の様に店が並んだ通りに入った。
上下に何階層もある、端が霞んで見えない程広大なショッピングモールの様な空間。の内の一つの階層にいる。
賽の河原は?三途の川は?もう渡ってしもうたのかの?
キョロキョロと見回す。
野菜?だろうか見た事がない物ばかり並んでいる。隣の店には挽肉を練ってまとめたような状態で並んでいる。向かい側は雑貨屋だろうか。どの店も見慣れない物ばかりだ。物珍しそうに見ていると
「おい、迷子になるなよ。ちゃんと付いて来い」
(儂は享年90越えだぞ。少しは敬え)ありがたい事に体は軽やかに動く、まるで若返った様だ。思っていた死後の世界とは大きくかけ離れている景色の中、さっきの人に追い付くと自動ドアが開いて中に入って行くので付いて行く。
携帯ショップか銀行の様な店である。
待合席のソファに座って待っていろと言われたので座って待っている。
その人は窓口に呼ばれたのでそっちに向かった。
「いらっしゃいませ。ご用件は?」
「AMBをし忘れたらしくて」
「では係りの者がご案内致しますのでしばらくお待ち下さい」
ものの数秒でその人は窓口から隣のソファに戻ってきて座った。
「お待たせ致しました。準備ができましたのでこちらへどうぞ」
店員さんに案内されるがまま別室に移動すると、殺風景な小部屋に装置付きの椅子があるだけだった。落ち着く様にクラシックが流れている。そこへ座るように促される。
頭を覆う様にカバーがされる。パーマをかけられるようなイメージだ。
「それでは始めます。目を閉じてリラックスして下さい」
部屋の隅にある装置を店員が操作すると高周波の音がして視界が真っ白になった。
「AMB終了しましたよ。お疲れさまでした」
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