第二章 (タイトル未定)

第1話 息の届く距離

 朝の光が窓から差し込む。

 ヴィクトルは目を開け、隣に寝ているアリアの顔を見つめた。

 彼女の碧い瞳はまだ閉じられているが、その美しさは眠っていても際立っている。



――― ああ、君の寝顔、本当に可愛いな。



 心の中でそう思いながら、アリアの手をそっと握る。

 無意識のうちに、アリアもその手を握り返す。そして、うっすらと目を開け、ヴィクトルに気づくと、微笑み返した。



「おはよう、ヴィクトル。」



「おはよう、アリア。君と一緒に目覚める朝は、何よりも特別だよ。」



 しばらくそのまま、寝起きの温かい手を握り合いながら目を合わせる。

 何も言わずとも、その視線だけで多くのことを語り合っているかのように。


 ヴィクトルの手がアリアの手を握りしめると、その温もりが二人の心を溶かしていく。アリアはヴィクトルの目を見つめ、その瞳に映る自分自身を認めた。



「君の瞳は、僕が地底から逃げ出して初めて見た夜空に似ている。それまで知らなかった美しさと希望が詰まっていて、だから僕は君に出会えて本当によかったと思うんだ。」



「ヴィクトル……」



 その言葉に、アリアの心は朝からぴょこんと高鳴った。

 何かが起こる、そんな予感と期待が彼女の胸を満たし、その緊張感が二人の間に微妙ながらも確かな電流を流す。


 ヴィクトルはゆっくりとアリアに近づく、その動きはまるで時間がゆっくりと流れるかのよう。

 指先をアリアの頬に沿わし、首筋に触れる。

 互いの掌を合わせるよう、指が絡み合う。

 気が付くと、ヴィクトルがアリアの上から見下ろしていた。



――― 浜辺の時と、上下逆だ。



 唇が触れそうな距離まで近づいた時、アリアもその瞬間を心から待ち望んでいた。

 浜辺で交わした一度きりの口づけ、その感触が今でも彼女の心に鮮明に残っている。



――― もう一度、その温もりと甘さを感じたい



 そう心の底から願った。


 瞳を閉じると、痛いくらいに心音が高まっているのを感じた。

 息が少しくすぐったい。

 絡み合う指を、ギュッと握る。


 二人の唇が触れ合うその瞬間、ちょうどその時――



 突然、部屋の一隅に静かに置かれた結界の石が、明るい閃光を放った。

 その光は瞬く間に部屋全体を包み込み、まるで夜空に輝く流れ星が突如として舞い降りたかのような幻想的な美しさを放っていた。



「何が起きたんだろう?」


「結界が何かに反応したんだわ。」



 アリアの碧い瞳は、その驚きの表情と共に、閃光に照らされて更に鮮烈に輝いた。


 一体何が起きたのかと、外へと急ぐ。

 そして、玄関の扉を開けた瞬間、30センチほどの小さな竜が、結界に絡まっているのが目に入った。

 竜は二人と目が合うや否や、その小さな口から「たすけてー」と声を漏らした。



  ・

  ・

  ・



「助けていただき、ありがとうございます。初めてのお使いだったので、無事着けたことがうれしくて、気を緩めていたら結界に絡まってしまっていました。」



 小さな翼をぱたぱたとあおりながら、小さな竜は面目なさげに話した。



「僕はフレイムリトルと言います。ノクタリナ様から言付けを預かってきました。」



 そして、二人が寝間着姿であるのを見て、ちょっと驚いたように言う。



「あれ?もしかして、起こしちゃったかな?」


=====

エ様『……あといっぽ。』

門東『何がですか!』

エ様『して、竜は何を伝えに来たんじゃ?』

門東『アイザックが「元気」になったんで、穴塞ぎミッションの伝達ですね。。』

エ様『となると、以前話していたあそこか。』

門東『あの地では色々頑張ってもらいましょう。』



『ぼく食べ』と異なる時代の同じ世界が舞台のお話、公開停止になったアイザックとレイラが大活躍するお話、『巨根ハーフ』R18版はこちら(↓)での連載となります。

もしよろしければ、お越しください。

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