第25話 二つの望み
竜の目は深遠で、その瞳には無限の可能性が広がっている。
その目が私を見つめる。
「他に望みはあるか?」
竜の声が静かに響く。
私は一瞬、迷う。
ヴィクトルのために何ができるのか。
何を願えば、彼の心も、そして私の心も満たされるのか。
「ヴィクトルはね、とっても食いしん坊なの。だから彼が飽きないよう、いろいろな料理を作れるようになりたい。」
竜は微笑む。
「うむ、容易い願いよ。お主に、必要に応じて様々なレシピが浮かび上がる書を授けよう。腕自体は自分で磨くがよい。」
私の心が躍る。これでヴィクトルを飽きさせずに喜んでもらえる料理を作れる。でも、それだけじゃない。もっと、もっと彼に近づきたい。
「それと、お祖母様のお家があるんだけど、そこを私とヴィクトルだけが入れる特別な場所にしてもらえるかな?」
「うむ、静かな巣が欲しいというわけか。子々孫々の繁栄を願うのであれば、それも道理。許可されぬものが近づけないように制約を定義しよう。他には?」
私は頷く。
「ううん、大丈夫。竜さん、ありがとう。あなたのお願い頑張るわ!」
「よろしい、契約は成った。永きにわたる大変な役目だが、よろしく頼む。」
竜の瞳に新たな光が灯る。
「では、先渡しの報酬だな、まずはその肉体と魂をつなぐとしよう。」
私は深呼吸をする。
ヴィクトルを取り戻すんだ。
その瞬間、目の前で竜の巨大な姿が微妙に揺れ動き始める。
その動きは繊細で、まるで時間がゆっくりと流れるかのよう。
そして、ほんの一瞬後、その容貌は角の生えた女性のような美しい姿へと変貌を遂げた。
「あの......あなた女の子だったの?」
「うむ?あぁ、お主の姿から、この姿としたのだが、何かおかしいか?作業を行うため、先ほどの姿ではちと面倒なのでな。」
私は笑う。
何もおかしくない。
これが竜の選んだ姿なら、それでいい。
「では魂の宿る石を、この肉体の胸に押し当てよ。」
私は宝玉を手に取り、ヴィクトルの胸に押し当てる。
その瞬間、宝玉を握る手に重ねられた竜の手から、力が流れ込み私を満たす。
「これよりお主に、『可能性』たる混沌の力を流し込む。それを用いて、この肉体と石を結びつけることをイメージをするのだ。そうすることで石はその機能を残したまま、肉体の中へと取り込まれる。」
頷き、目を閉じ、イメージする。
ヴィクトルの笑顔、そして私たちが過ごす未来。
「加減を間違えると、肉体が爆散するので注意して行うのだぞ。」
突然の警告に、心臓が跳ね、一瞬の緊張が体を貫く。
驚きで目が見開かれ、手がわずかに震える。
「なに、肉体などただの入れ物。魂は傷付けぬよう気を付けるし、失敗した場合は替えの肉体を用意してやるので安心せよ。では、行くぞ!」
言い返す前に、竜からの力が再び流れ込む。
それは、未知の領域への一歩を踏み出すような感覚だった。
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最初に感じたのは、懐かしい香り。
長い眠りから覚めたかのような、ぼんやりとした感覚。
薄く目を開ける。
そこにあったのは、見つめ返す瞳の碧。
――― 碧い瞳、海の碧
眠りにつく前の最後の瞭然とした記憶が、ぼんやりと蘇る。
瞳と瞳が交錯し、肉体が一つに融合する感覚。
「――― ヴィクトル?!」
声が響いた。
少女の声、愛おしさが滲むその音に、記憶が蘇る。
――― そうだ、僕はアリアと一つになって......宝玉になったんだ。
胸に柔らかな重みが広がり、首筋にくすぐりが走る。
アリアが泣いている。
声をかけようとするが、何も言葉が出てこない。
両腕で彼女を強く抱きしめる。
――― アリアを泣かせてしまったな。
その瞬間、自分の頬が濡れていることに気がついた。
=====
エ様『魔法のレピシ本は、食べられるものなら何でも調合方法が分かる優れモノじゃ。例えばマカとか、うなぎパイとか、、、』
門東『冷え性・肌荒れに効くと聞きますものね。』
エ様『ヴィクトルの身体、何回爆散したのかのう。』
門東『一回でうまくいったみたいですよ。』
エ様『さてと、そろそろ別れの時間かのう。』
門東『そうですね、連れていけませんものね...』
『ぼく食べ』と異なる時代の同じ世界が舞台のお話、公開停止になった性と愛の女神エロティア様が大活躍するお話、『巨根ハーフ』R18版はこちら(↓)での連載となります。
もしよろしければ、お越しください。
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