弥生の歌 ~そして、凪~

三月七日

祖母逝きて介護用品返却す

ベッドなき部屋 寂しく広く


ずいぶん長く借りていた杖も、車椅子も。そしてベッドや自動体位変換

のシートや、移座えもんなど。一割負担でレンタル料金は二千円ちょっと。大変お世話になりました。



三月八日

片付けしベッドの跡に花飾り

祖母の遺影を陽光照らす



三月九日

祖母去りし庭の餌台春迎え

小さな白き花群生す

 

 いつもみかんの食べかすが落ちるあたりに、

 可憐でかわいい白い花がたくさん咲きました。



三月十日

何気なくスマホを開きアルバムに

変わらず並ぶ祖母の笑顔よ


三月十二日

祖父祖母の俳句と短歌読み返し

人亡き後も歌は残れり


 祖父は俳句を、祖母は短歌を作っていた遺稿を読み返す。

 人はなぜ、誰のために歌うのか。誰も読み返さないとしても、

 人は歌を綴るものなのかもしれない。



三月十四日

杏咲きメジロ歌ひて祖母を呼ぶ

人は去りても季節巡りぬ


三月二十日

祖母の物 すべて「遺品」となりにけり

服を畳めば なじみのにおい



三月二十二日

手を合わす 桜咲きたる初彼岸

彼の地で祖父と再会如何に

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