07.お買い得
「ごめんなさい、今朝、味見したあの味が忘れられなくて……」
アリシアは幾分、しおらしく俯いている。初めて戦闘した時に、アリシアはクガの左肩に傷をつけた後、なにげなく、その血を舐めていた。味見とはそのことだろうか……とクガは思う。
そういえば、その直後からドローンのことなどを聞いてきたが……。
まさか……この吸血鬼、その他諸々は実はどうでもよくて俺の血の味が気に入っただけということはあるまいな? と少し疑心暗鬼になるクガであった。
「あのなぁ……言ってくれれば……血くらいだったら死なない程度ならやるよ……」
「ほ、本当か!? 恩に着る」
アリシアは目をうるうるさせて喜ぶ。
その後、アリシアは本当にほんの少量の採血をし、指に落として、ぺろりと舐める。
「……~~!」
アリシアが口角が上がるのを必死に押さえるような顔をするものだから、クガは心の中で少し笑ってしまう。
「そんなもので大丈夫なのか?」
「あぁ、これだけあれば十分だ」
「ちなみに直接、噛みついたりはしないのか?」
「それは色々とまずい」
「そんなものか……」
「あぁ、君は私の何者かであっても、眷属ではないからな」
「……」
その後、再び就寝するのであった。
◇
翌日――。
「ぎゃぁあああああああああ」
紅の刃で上半身と下半身がお別れした探索者が消滅する。
「うむ。これで二六人目だ!」
昨日の四人にさっきの四人を加えて計八人であったが、過去にアリシアが狩った人数が一八人いるらしく、これで二六人目ということであった。
つまるところSS級ボスになるための条件一つ目である〝侵略者を三〇人狩る〟の達成まで、残すところ四人となったわけだ。
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【SS級ボスになるには】
・侵略者を三〇人狩る ←現在、実施中
・A級パーティを狩る
・S級パーティを狩る
・眷属を従える(S級ボス)
・ボスの城を構える
・SS級ボスの枠を空ける
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【乙でーす】
【昨日のパーティよりあっさりめだったな。残念……】
【あと四人、がんばー】
「お、おう……」
コメントは早くも探索者狩りに適応し始め、普通に応援メッセージなどが来ている。勿論、嫌悪感を示すコメントもそれなりに多い。
さて、次の標的を探そうかという時……。
「どうもー、こんにちはー」
「「……!?」」
第三者が二人に声をかけてきた。
二人がその方向を見ると、身軽な装備で短剣を携えた男がヤンキー座りで微笑んでいる。その男に加えて、後方に盾役と思しき男性一名、魔法系職と思しき女性二名……計四人がいた。つまるところ典型的な一パーティだ。
【モンスタースレイヤーだ】
【モンスタースレイヤー……】
「どうも初めまして、わいらは〝モンスタースレイヤー〟っちゅうパーティですわ」
コメントの認知のとおりの自己紹介をされる。
【こいつら、S級パーティ、イビルスレイヤーの弟分のA級パーティだぞ】
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【四組のS級パーティとその配信スタイル】
①ルユージョン……正統派
②あいうえ王……ソロダンジョン籠もり
③デュエリスト……プレイヤー間の決闘を好む
④イビルスレイヤー……猟奇的モンスター狩り
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その四番手とされる〝イビルスレイヤー〟は積極的かつ
「お二人さん、随分と面白いことやってるみたいですねー。結構、注目浴びてますよ?」
「へへ、そうか……?」
そんなことを知らないアリシアはなぜか頭を搔くような仕草をして照れている。
【吸血鬼さん、気をつけて! 彼らは好戦的なパーティですよ!】
「っ……!?」
警告の直後、炎の弾が飛んでくる。
「あらら、避けられちゃいましたか」
短剣の男はニヤニヤしながら言う。
「ふむふむ、クガ、あいつらA級といったな?」
「あぁ……」
「なるほどなるほど、確かに活きが良さそうだ。しかし、なんて運がいいのだろうな……」
「え……?」
「SS級ボスになるための条件……一気に二つ埋められるではないか。お買い得だ」
アリシアもまたニヤリとする。
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【SS級ボスになるには】
・侵略者を30人狩る ←現在、実施中
・A級パーティを狩る ←NEW
・S級パーティを狩る
・眷属を従える(S級ボス)
・ボスの城を構える
・SS級ボスの枠を空ける
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