05.魔物の街

吸血鬼ヴァンパイアちゃ……」


「ん……?」


 歩いていると、一体の魔物にアリシアが声を掛けられる。


「っ……!」


 その相手にクガは度肝を抜かれる。


 <ぎゃぁああああ、出たぁああああ>

 <ミノタウロスやん>

 <え、S級ボス!? 逃げてぇえええええ>


 コメントの通り、それは8体存在するS級ボスのリストに名を連ねる"ミノタウロス"であった。

 巨大で屈強な身体に牛の頭を持つミノタウロスがアリシアとクガを見下ろしている。


 が……


「あ、ミノちゃんじゃん。どしたー?」


「……」


 <ミノ……ちゃん……?>

 <フレンドリーだな>


「あ、クガ、紹介するよ。友人のミノちゃん。こっちは私の何者かのクガだ」


「初めまして、ミノタウロスと申します」

「ご丁寧に、どうもです」


「「……」」


「って、吸血鬼ちゃん……流石に人間連れてきちゃまずいんじゃ……」


 流れで挨拶してくれたミノちゃんは、焦るように言う。

 声が意外と可愛い。


「ん? なんで?」


「なんでって……そりゃ……常識的に考えてさ……初対面ですみませんが、クガさんもクガさんですよ……いきなり魔物の街に乗り込んでくるなんてすごい胆力ですね」


 クガは魔物に常識を説かれる。


 <ミノタウロスの言ってることが正しいな>

 <これはあかん、、、この牛が可愛く見えてきた>


「す、すみません……」


 ひょっとしたら、そうなのではないかと思っていたが、やはりそうなのだなとクガは今更ながら思う。

 しかし、クガにはこちらに来ざるを得ない理由が二つあった。

 一つ目は、本日の善良なパーティの惨殺により、今のクガは人間社会の方に戻るのもなかなかにリスキーであったこと。

 もう一つは、アリシアは恐らくダンジョンを出ることができないこと。


 別々になることも考えられたが、実のところアリシアとクガは現状、連絡手段がないとクガは認識していた。

 待ち合わせは可能かもしれないが、何らかの原因で待ち合わせに失敗すれば、二度と遭うことができないかもしれない。


 などと頭の中で論理を組み立てるクガの思いとは裏腹に……


 <クガが頭おかしいのはクマゼミ時代からだから驚きはない>

 <知的派ぶってるやばい奴>


 ん……? とクガは思う。


「あはははは、なんか言われてるぞ? クガ」


 アリシアが腹を抱えてケラケラと笑う。


「……」


 クガは少しむっとする。


「ところでクマゼミとは?」


「あー、俺の元いたパーティ名だ」


「なるほどなるほど……まぁ、何はともあれ、ミノちゃん、クガは人間だが、私の何者かだ。手出しは許さぬぞ」


「……何者かって何よ……」


 <ミノちゃんが一番常識人>

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