ランナーズ・スクランブルーー栄光を求めて

ガミル

そしてレースが始まる

 さあさあ、今年も開催されました。遂にこの日がやってきました。

さぁ、今回のメンツも去年に劣らず華やかなものになっております。

では特に注目の選手をピックアップして紹介します。


 先ずは注目の第一走者から!キルメア大陸からやってきた、世にも恐ろしいヴェノムドラゴンのギトシン選手。口から漏れ出す金属をも溶かす猛毒で、こちらまでどうにかなりそうです。


 次は……待っていたぞこの男を!我らが英雄、サナド大陸から来た自称無敵の男剣闘士のジャオンです。その身に宿るハイパーマッスルパワーで圧倒的な力を見せつけた去年の大会のチャンピオンです。さて至上初の二連覇達成となるでしょうか。期待が高まります。


 第三走者から、遥か東の国からやって来た謎の機械人形。ぜんまい仕掛けの海坊主、灯念です。本大会は初出場とのことですが、果たして無事走り切れるのでしょうか。解説はそこが非常に気になります。


 最後に本大会で地味に注目されているであろうこの人、ドロニー星からやって来た羊型エイリアン、スルゥードさんです。その体中に生やした毛皮が暖かそうで羨ましいですね。


 その他6名が本大会の決勝に残りました。



*** *** ***



 そして、クソだるい宣誓式が終わり、ようやくレースが始まります。

解説の田辺さん。やっぱり注目はスルゥードですか?


「そうですね。彼は本大会に参加するために惑星破壊兵器で母星を滅ぼしたそうですからね。覚悟本キマリですよ。勝つためならなんでもしますよ彼は――いやぁ末恐ろしいよ全く」


 それは、すごい覚悟ですねぇ。是非優勝してもらいですが……果たしてそう上手くいきますかね?なにせ今回もあの男が参加していますよ。我らがヒーロー、無敵の英雄ジャオンがね!



「ジャオンか。彼もすごいが……覚悟が足らんよ。だって、スルゥード自分の母星消しちゃってるんだぜ。ヤバくない?もう帰るとこすらないんだよ?」


 そうですね。……おやレース序盤から大きく動きを見せている選手がいますよ。あれは――灯念選手です。なんと、背中が開いて……あれは何でしょう――ロケットです。ブースターのロケット噴射で超加速しています。体が追いついてないのでしょうか。あちこち黒焦げになっています。そして、体の節々から聞いたことがないような激しい機械音が聞こえています。


「ありゃ、もたんね。後数刻の命だわ……南無三」


 後ろからヴェノムドラゴンのギトシンさんが追い上げています。口元から零れ出た猛毒の液体によって、地面が不毛な大地に変わっています。後、選手が三人くらい彼に捕食されていたみたいですが、この後の処理について本大会はノータッチだそうです。



*** *** ***



 レースも終盤に差し掛かりました。現在トップはジャオン選手、そしてその後ろをスルゥード選手が猛追しています。おおっとあそこで体からけたたましい火柱を挙げて倒れ伏しているのは灯念選手です。名前に違わず、とても明るいですねぇ。

 そして、ヴェノムドラゴンのギトシンさんは、惨劇を見兼ねたベテランハンターに無事ハンティングされちゃいました。いやぁ世知辛いですね。

 田辺さん、実質二人の争いとなりましたが、どちらが優勝すると思いますか?


「決まっているだろう。スルゥードだよ。なんたって彼は自身の星——」


はぁい。田辺さんはスルゥードさんが勝つと信じて止まないようですね。それも仕方ないでしょう。彼はスルゥードさんに全財産ベッドしているのです。負けてしまったら破産なのです。終わりです。絶望なのです。

 ――よっしゃ、ジャオンそのまま勝ち抜け!!


「おい!さっきから見ていたら、君ィ失礼じゃないかい。大体昔から君は――」


            一旦CM入りまーす。



*** *** ***



 そしてレースは遂に終局を迎える。ジャオンとスルゥードは一進一退の攻防を続け、そして……そして……最後にゴールテープを切ったのはなんと、なんと


 盛大にドラムロールがかかる。思わずファイナルアンサーと言いたくなるくらいの長い溜時間が静寂を奏でる。そして――







 今回優勝したのは、もぐらのジョージです。いやぁ。穴掘りのプロは違いますね。

こちら、優勝賞品の駄菓子、もろこし乱太郎100袋です。おめでとうございます。


 では、今大会はここまで。皆さまご参加ありがとうございました。



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ランナーズ・スクランブルーー栄光を求めて ガミル @gami-syo

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