第2話 登場人物達の距離の縮め方

-擬似恋愛三日目-

 

私は昨日、流石に小説を書かないといけないことを思い出して、朝の6時から小説を書き始めた。体調もかなり良くなってきていて、書き初めは絶好調だったのに…

今は全くペンが進まない。

あぁこんな時ナイフさえあれば…

小説が書けなくなると数々の自傷行為に手を出してしまう私をみかねたのか、私の病室には刃物やひも、薬なんてあったもんじゃない。

早く続きを書かないと…

私は重い手を机の上に置いて、小説に立ち会った。


『書けてますかー』


『!!!』


『そんなにビックリしなくてもww』


『光輝!急に声かけるの辞めろとあれ程…』


私が喋っている声も聞かず、ズケズケと病室に入っていく光輝、お前の耳には都合の悪いことは聞こえないシステムにでもなっているのか?

光輝は持ってきてくれたルイボスティーを私の机の上に置いて、椅子に座った。


『で、何が原因で進んで無いんですか?』


『ぬ…ば』


『え?』


『ぬぇば…』


『もっと大きな声で言ってください』


『だから!濡れ場だよ!濡れ場!何回も言わすな!』


そう、私は濡れ場という未知の世界の場面に立たされている。

私は生涯でキスをした事もなければ、告白もされた事がない、だから当然28歳になった今でも、夜の営み?などをしたことがない、実際に体験したことがないと文字に起こせない私にとって、最大の難所だった。


『じゃあ、やりますか。俺と』


もうコイツの訳のわからない提案にもだいぶ慣れてきたな…


『先生、しょうがないみたいな顔してますけど、濡れ場作ってるの先生ですからね?そこんとこ理解してます?』


分かってるよ!分かってるけどさぁ!私が光輝に抱かれる…ビジョンが見てこないんだが、でも実際に体験しないと文字には起こせない。

けど編集者とそうゆう事をするのは私のプライド的にちょっと…


『先生、覚悟を決めてください!』


『なんだよ覚悟って⁈』


『先生は俺に処女を奪われたんです!』


『ウルセェ!』


『わかりました!まずはバックハグから始めましょう!』


もうヤダ…と思ったが小説を書くためだと思い、光輝に私にバックハグする事を承諾した。


『じゃあ、行きますよ』


『いつでも来い!!』


私の首から光輝の手が伸びてきて、私の手を握る。

私はベットに座っているから、光輝が後ろから覆い被さる形になった。

元々人に触れられることが苦手な私だが、小説を書く為、必死で恋愛感情と言われるものを頭の中で探した。


『せーんせ♪無理に探さなくても良いんですよ〜ほら、リラックスしてください』


光輝が私の頭を撫で始めた、これはこれで悪くない…落ち着くというか

なんというか…安心する…

主人公はこの様に考えるんだな、母親にやられていただけあって、抱き合うのはまだ出来る。人との接触に多少の自信がつき安心していると突然、光輝が私のうなじにキスをし始めた。


『ちょ…!おm//んぁ.ッッ辞めろヒッ』


『いいじゃないですか。俺たち恋人ですよ…』


『ちがぁ、気持ち悪いからッッ怖いから…やめて、ほんとに』


キスをされた途端、悪寒が走ったというか…されて嫌なわけじゃないのが怖かった。今後ろに居るのは人間じゃないのかもしれない、もしかして自分が人間じゃない?嫌だッッ…無理無理!怖い…!!

体から血が吹き出しそうなくらい熱い、今すぐにでも水に入りたい。

蒸発して私が消える?その方がいい?嫌だ…


『ぃやだ…』


『⁈』


いつのまにか、私は光輝の顔を思い切り掴んでいた。光輝はとても焦った顔をしていたが、存在価値が分からなくなっている私の精神状態では、相手の気持ちを察するなど、到底出来なかった。


『死ね…本当に…う゛あ゛ヒッ…まだ触れる消えてない…嫌ダァ、』


『あぁ先生、ごめんなさい!まさか泣くなんて…大丈夫ですから、落ち着いて…消えてませんから!』


そう言ってまた、私の頭を撫でる光輝

だが人に触れられる事の恐怖がフラッシュバックした私にとって、その行動は狂気でしかなかった。


『嫌!無理!触んな!』


『先生!駄目ですよ。そんな腕を強く掴んだら!』 


私には、静止の声すら聞こえてなかった。窓もないこの部屋だと逃げる事も出来ない…


『先生!すみません!』


光輝が私の両手を片手で掴み、私の事を抱きしめた。最初は暴れたが徐々に落ち着きを取り戻してきた。


『…』


『落ち着きました?』


『何が落ち着きましただ、私を殺す気か?』


『すみません、頭が撫でられたから…』


頭が撫でられたからって、何処でもいけると思うなよ!と思ったが確かに頭を撫でられるのは、心地よかったから。まぁ許してやろう…


『まぁ、頭を撫でられるのは悪くなかった…』


『えっ本当ですか!』


『調子に乗るなよ…』


『ハイ』


色々あったが、必要な感情的なものは掴めたから、小説の続きを書くのには困らなさそうだな…








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語彙力がない小説家が、擬似恋愛始めました!! (´・∀・`) @yamahatarinyu

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