囚われの探偵

状況確認編

 町田探偵が目を開けると、そこは探偵事務所ではなく、四方を真っ白い壁で囲まれた奇妙な部屋だった。


「あれ……ここはどこだ?」


 確か昨日は仕事が長引いてしまって、1階のジムで筋トレを始めたのが夜遅く。そのまま2階の事務所に戻ってプロテインを補給して、自宅に帰らずにソファで寝たはずだったのだが……。


「夢かな?」


 町田探偵は、夢かどうか確かめるためにスクワットを行ってみた。ほっぺをぎゅーっとつねるのではないのだ。スクワットをするのだ。それで筋肉に心地よいハリを感じたら現実。疲れを感じずに何度も行うことができるなら夢。


「ふーっ……これは現実か」


 スクワットを十数回行って太腿の血流を感じながら、町田探偵はこれが夢ではなく、実際に起きた出来事だと言うことを認識した。



「誰かいないのか!」

 ――いないのか、いないのか、ないのか……

 部屋の中に町田探偵の声がこだまする。


「萌花くん!」

 ――萌花くん、萌花くん、萌花くん……

 やはり返事はなく、ここには自分一人なのだと言うことがわかった。


だったら――

「プロテイン!」

 ――プロテイン、プロテイン、プロテイン……。

 町田探偵はちょっとだけ楽しくなってきた。


「マッチョォ!」

 ――マッチョォ、マッチョォ、マッチョォ……。



 誰もいないからとはいえ、町田探偵もさすがに恥ずかしくなって、変なことを言うのをやめた。

 そして改めて、町田探偵は部屋の様子について確認してみることにした。



 まず、部屋は窓がなく、真っ白い壁に囲まれている。


 天井に空調用だろうか、格子状に穴が開いている。残念ながら届く高さではない。

 あるのは、寝ていた白いソファとその隣に置いてある机。机の上には4桁のダイヤル式の鍵がついた箱が置いてある。


 右の壁には白いキャンバスに、ピンク、緑、茶色で塗られた絵画がかけてある。その反対、町田探偵から見て左の壁には鹿の剥製が堂々と飾られてあった。


 そして、真正面の壁には扉。どうやらここが出入り口のようだ。町田探偵はすぐさま扉に近づき、ドアノブを回してみる。


 ガチャ、ガチャ。


 当然、鍵がかかっていて動かない。



「なるほど……これは俗に言う脱出ゲームってやつだな!」

 町田探偵が呟くと、どこからともなく声が聞こえてきた。人間の声を機械で加工し、誰のものかわからないようにしてあるようだった。


「君はこの部屋に閉じ込められた。脱出したければ、この部屋の謎を解き、鍵を見つけなければならないのだ!」

「なぜだ! なぜこんなことをする! それに、お前は誰だ!」


 残念ながら録音による音声のようで、声の主は町田探偵の質問に答えることなく、話を続けた。



「君の頭脳が勝つか、それとも謎に屈するのか……楽しみにしているよ。それでは、健闘を祈る!」


 果たして、町田探偵は数々の謎を解き明かし、部屋から脱出することはできるのだろうか!

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