第4話 悪魔狩り
雨に打たれた
単なる
この
一方、いきなり人に雷撃を
(困っているのはこちらだ、可愛い顔をして無茶をする! ここまで高度な戦闘技術を使った学生同士の喧嘩があるものか)
ユストゥスは戦闘に関しては
しかし、ひとまず拘束するにしても、相手は壊れそうなほど華奢な少女だ。触れるのを
それが合図だったかのように、黒髪の少女はやにわにユストゥス目掛けて駆け、そのまま彼の横をすり抜ける。瞬間、二人の視線は
(なんだ、あの瞳は――?!)
少女は
靴の
ユストゥスは制止の声をかけるが少女は当然止まらない。
「待て! 危ないっ」
その跳躍は、猫科の獣の優美でしなやかな動きを思い起こさせた。
長い髪が、強く吹き上げる風に
重力の存在を無視した軽やかさだった。
逃げた少女をユストゥスは反射的に追う。しかし、伸びやかなその動作は肉付きの薄い少女らしい体型を
「くそっ! はしたないぞ!」
ユストゥスは、思わず頰を引き
だが、小さな背を追ううちに、ふとユストゥスに
(――よく、こんな風に振り回された)
全身を包む、
忘れていた、いや、封じ込めていた大切な記憶が胸を焦がす。
薄い背で跳ねる長い髪、小さな足。
重力などなきもののように軽やかに弾む華奢な体。
記憶にのみ残る姿が視界の先で駆ける少女と重なり、ユストゥスは心をざらりと擦られる痛みに強く奥歯を噛み締めた。
「姫様!」
不意に鋭い女の声がした。
少女は目線の先の
「まさか、
武器に魔術付与する攻撃武術、
つまりここにいるのは、
ユストゥスは強い疑念を抱く。常人を遥かに超える戦闘力を持つ少女の姿をしたもの、
少女の
「
この世には見えぬ無数の穴が空いている。時空に空いた穴はいとも
そこに善悪の差はない。
白刃を中心に少女周辺の魔素が収束し始める。七色の透きとおる魔力の流れが
(虹色の魔力!? ――まさか、まさかそんな)
虹の光をまとった少女は宙に躍り、陽光を受けて白く輝く刃が
少女は静かに空を見上げ、再び虚空に向かい白刃を構えた。流水のごとくしなやかながら
ユストゥスは呆然とただ見つめていた。
夜の底へ永遠に失われたと思っていたものが目の前にあった。
八年前に殺された――
「もういない。――は、もう八年も前に死んだ」
あのひとは死んだ。ユストゥスの代わりに殺された。
だから、彼はこの国を滅ぼそうとしたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます