なんで私が反省なんて

「――や、めろ。もう、終わり、だから」


 無理やりキスをされた私は、何とか心悠莉から離れようと、精一杯暴れたけど、やっぱり、力では勝てずに、まるで抵抗しちゃダメでしょ? と言わんばかりの目で私を見ながら、そのまま舌を入れられて、私は余計に力が入らなくなってしまっていた。

 そして、心悠莉は満足したのか、キスをやめてくれたから、私は何とかそう言っていた。

 その間にも、力が入らないとはいえ、私は抵抗をやめなかった。……今、抵抗するのをやめたら、惚れ薬の効果が切れた時、あの時もっとして欲しかったの? だから、抵抗をやめたの? とかふざけたことを聞いて、私をバカにしてくるはずだ。

 だから、私は抵抗をやめない。……実際、ほんとにもうやめて欲しいし。


「伶乃、これは、お仕置なんだよ? やめて欲しかったら、ちゃんと言うことがあるでしょ?」

「は? なにッ、んっ」


 何言ってんだよ。そんな感じのことを言おうとした瞬間、心悠莉はまた、私の胸の固くなってきてる部分を摘んできた。

 言うことって、何……分からない。何を言ったら、やめてもらえるの。

 あ……これは、お仕置。だったら、何か、私が悪いことをした? ……そういえば、こいつがお仕置するって言ったきっかけが、キスをする振りをして、歯を磨きに行ったことだっけ? だったら、それを、謝れば、やめてもらえる。




 ………………は? なんで、私がこいつに謝んなきゃだめなんだよ。

 もし、私が謝ることによって、惚れ薬の効果が切れた時、心悠莉が後悔するなら、いくらでも謝ってやる。

 ただ、今私が謝ったところで、こいつは後悔するか? いや、しない。むしろ、あの時謝ったってことは、限界だったんだ。って思われるはずだ。

 

「ふっ、ざけんな。は、なせ」

「……反省、してないんだ」

「当たり前っ、だろ。なんで何も悪いことをしてない、私が、反省しなきゃなんな、いっんっ」


 最後の最後というところで、心悠莉が私の股を開いて、下着越しに、誰にもさわられたことなんてない、私の大事なところを触ってきたから、声が上ずって、最悪な声が出てしまった。


「おっ、い、胸だけなら、まだしもっ、そこ、はっ、ほんとに、やめろ」

「伶乃が反省してないみたいだから。……反省してたら、キスだけで終わってたんだよ?」


 なんで、する必要のない反省を私がしなきゃなんないんだよ。

 

「伶乃、今、謝るなら、許してあげるよ? ……私も、これ以上先は、もっとゆっくりしたいし」


 ふざけてんのか。

 そもそも、これ以上先なんて、お前なんかとするはずがない。

 ……ただ、少し後ろを振り向いて、私は心悠莉の目を見た。

 すると、もし、私がここで謝らずに、反省してないなんて言ったら、本気で、私のことをめちゃくちゃにする気だと悟った。

 どれだけ大嫌いな相手でも、これだけ一緒に過ごせば、それくらいは分かる。

 力じゃ勝てない。……謝らなきゃ、めちゃくちゃにされる。それも、大嫌いな相手に。


「……心悠莉、その――」


 考えて考えて考えた結果、私は心悠莉に謝るような雰囲気を見せて、キスをした。

 そしてそのまま、ベッドに向かって押し倒した。

 いくら力で負けるとはいえ、油断している相手だ。体重を掛けて、後ろに押し倒すくらいなら出来る。

 その瞬間、心悠莉は私が発情でもして、心悠莉のことを襲うとでも思ったのか、私を受け入れるように、両手を広げて、無抵抗なことを表してきた。

 私はそんな無様な心悠莉の姿を適当にスマホで写真を撮って、はだけた服を直しながら、全速力で心悠莉の家を出て、自分の家に帰った。

 

 誰がお前なんかに謝るかよ。

 ふふっ。これでまた、あいつを後悔させられる材料が増えたな。

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