そんな話してないだろ
「……ご馳走様」
羞恥心を耐えきり、サンドイッチを食べ終わった私は、手を合わせてそう言った。
「美味しかった?」
「早く、心悠莉も食べたら?」
すると、またそんなことを聞いてきたから、私はそれを無視しながら、私に食べさせてばかりで全然食べ進んでない心悠莉弁当を見ながら、そう言った。
「……伶乃も、私に食べさせてよ」
……ふざけてるのか? なんで、私がお前にわざわざ食べさせてあげなくちゃならないんだよ。
いや、さっきの羞恥心がなかったら、こいつを後々後悔させるためにも、食べさせたかもしれないけど、今は私が恥ずかしい気持ちでいっぱいで、無理。
「無理」
「ッ、そっか……」
あぁぁ、もうっ。ほんとに、うざいな。……今、そんな顔されたら、私がそんな顔をさせたみたいになるだろうが。……実際、私のせいかもだけど、もともと、こいつが私に食べさせるって話で、私がこいつに食べさせるなんて話してないだろ!
「……ほらっ、これでいいでしょ? だから、そんな顔するな」
私は心悠莉から箸を奪い取って、心悠莉の弁当に入ってたおかずを掴んで、それを心悠莉に食べさせるように手を伸ばしながら、そう言った。
「……いいの?」
「早く食べろよ」
「うんっ」
すると、さっきまでの顔が嘘みたいに、心悠莉は笑顔になって、私にあーんをされて、弁当を食べ始めた。
……はぁ。ほんとに、うざい。……まぁ、これも、惚れ薬の効果が切れたら、心悠莉は後悔するはずだから、別にいいか。
「はぁ、美味しい?」
一応、心悠莉が何度も聞いてきてウザかったから、私もそう聞いた。
「うんっ。美味しいよ」
すると、そんな笑顔のまま、そう言ってきた。
あっそ。それはただ、お前の料理が上手いってことだろ。
……どうでもいいけど、こいつ、私のことを好きになってから、随分表情豊かになったよな。……どうでもいいけど。
「伶乃、ありがとね」
「ッ、もう絶対しないから」
私は早く食えという意図を込めながらそう言って、早く終わらせるために、いっぱい食べさせた。
「はい、これで終わり」
「うん、ご馳走様。……伶乃に食べさせてもらったから、いつもより美味しかった」
「……あっそ」
そんなわけ、ないでしょ。
普通に美味しい食べ物だったら、どんな食べ方をしようが、基本的には美味しいに決まってるだろ。
「戻る」
私はそう言って席を立って、弁当を仕舞ってる心悠莉を置いて、教室に戻った。
……戻ったんだけど、心悠莉は直ぐに弁当を仕舞って、私の隣に並んできたから、置いていった意味が全くなくて、普通にまた、一緒に教室に戻ってしまった。
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