もしかして副作用?

 最悪……もう、なんで私、こいつと手なんか繋いだまま、教室に戻ってきてるんだよ。

 ……はぁ、もうそれはいいとして、早く授業、終わらないかな。終わったら、真っ先に手を洗いに行こう。

 何をとち狂ってたのか、今の心悠莉と手を繋いでたなんて、頭おかしいでしょ、私。

 




 そう思いながら、授業を受けていると、チャイムが鳴った。

 

「伶乃」


 私が急いで手を洗いに行こうとすると、心悠莉に声をかけられた。

 

「……何?」


 無視しようかと思ったけど、周りの目を気にして、私ら返事をした。

 イライラしてたら、無視してたかもしれないけど。


「次、移動教室だから、一緒に行こ?」


 ……嫌だけど。

 はぁ、嫌だけど、一緒に行くか。……今の我慢なんて、惚れ薬の効果が切れた時、直ぐに比べ物にならないくらいの利益付きで返ってくるんだから。

 

「まぁ、いいよ」

「やった」


 私が頷くと、私にギリギリ聞こえるような、小さな声でそう言っていた。

 

「先にトイレ、行ってくる」

「私も、行く」


 ……いや、なんでトイレまで、お前と行かなきゃダメなんだよ。……あー、でも、ちょうどいいのかな。トイレ行ったら、流石に手、洗うと思うし。……私の家で洗ってなかったけど。それは自慰行為で洗う習慣がないだけでしょ……多分。まぁ、普通は自慰行為こそ……いや、どっちも洗うべきだな。


 そう思いながら、心悠莉には手を洗って欲しかったし、わざわざ来るなって言うのもめんどくさかったから、特に何も言わずに、トイレに行くために教室を出ると、心悠莉は私の隣に並んで、歩いてきた。


 そして、トイレに着いたから、当然、別々の個室に入って、トイレを済ませた。

 トイレを流して、個室から出たんだけど、心悠莉はまだ出てくる様子は無い……どころか、私が個室を出てから、トイレを済ませてる音が聞こえてきた。

 ……もしかして私の音聞いてた? ……いや、そんなわけないか。心悠莉はあくまで、惚れ薬の効果で私を好きになっただけで、変態になった訳では……ない、ことも無いな。

 変態じゃなかったら、人の家で自慰行為なんてしないよね。……もしかして、あの惚れ薬、そう言う副作用でもあったのか? ……お互い嫌ってるとはいえ、長い付き合いだし、そんな変態では無いことは知ってるはずだし。

 

「そ、そこで待ってたの」


 そんなことを考えていると、トイレを流しながら、個室から出てきた心悠莉は顔を赤らめながら、そう言ってきた。

 最初はなんで顔を赤らめてるのか分からなかったけど、さっきまで考えてたことを思い出して、察した。

 いや、私は別にお前のトイレの音を聞いてたわけじゃないぞ?! 誰かさんみたいな変態と一緒にするなよ! ……多分、副作用だろうけどさ。


 もういいや。否定するのもなんか、逆に怪しく感じられるだろうし、さっさと手を洗って、戻ろう。早く戻んないと、移動教室なんだから、遅刻しちゃう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る