惚れ薬

「どうも」


 そう言って、私は宅配屋さんを見送った。


 届いた。惚れ薬が。

 私は早速袋を開けて、惚れ薬を見てみたけど……うん。ただの水にしか見えない。

 ……まぁ、いいや。あいつに、心悠莉にこれを飲ませるだけだ。





 私が心悠莉が来るのを待っていると、インターホンが鳴った。

 やっと、来た。


「心悠莉?」

「ん」


 ……別にいつもの事だから、もういいけど、一言って。そんなに、私と喋りたくないのかよ。……別に、私も同じだから、いいけど。と言うか、話すのが嫌なら、煽ってきたりすんなよ。

 私は内心、悪態をつきつつ、扉を開けた。


「お邪魔、します」

「うん。そこ、座って。お茶、出すから」

「あ、ありがと」


 ? よく分からないけど、心悠莉は緊張してるみたいだった。まぁ、心悠莉が緊張してようが、私がやることは変わらない。




「はい」


 そして、私は惚れ薬を入れたお茶を心悠莉の方に置いて、私の方には何も入れてないお茶を置いて、座った。

 ただ、なかなか心悠莉が惚れ薬入りのお茶を飲み出そうとしない。……なんで? 気が付かれた? いや、そんなわけない。


「交換、しない?」


 私がバレたのかと不思議に思っていると、私の方に置いてあるお茶を指さして、そう言ってきた。

 は? 気が付かれてるってこと? 


「もう飲んだから、無理」


 私は目の前でお茶を飲んで、そう言った。

 なんでもいいから、早く飲んでくれないかな。


「……何か、入れてる?」

「ッ、は? 私がなにか入れるように見えるの?」


 実際入れてるんだけど、私は早く飲んでもらうために、怒ったように、そう言った。

 こうしないと、何かを入れてると言い当てられたことに動揺して、バレてたと思うから。


「えへへ、そっか」


 すると、何故か心悠莉は嬉しそうに、急に笑いだした。

 ……え、きも。なんなの、いきなり。早く飲んでくれない?


 そう思っていると、心悠莉はやっと、惚れ薬入りのお茶を飲んだ。

 飲んだ! 効く、かな。……いや、ありえないだろうけど、妄想は捗るなぁ。ふふっ、これだけでも十分だ。

 ……うん。要は済んだし、もう帰ってくれないかな。嫌いだし。心悠莉も私のこと、嫌いだと思うし。


「……好き」

「は?」


 え、何? 今、心悠莉、なんて言った?


「好き、大好き、伶乃、大好き!」


 私が戸惑っていると、心悠莉はそう言って、顔を真っ赤にしながら、いきなり抱きついてきた。

 

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