第9話 折上と天使のはなし

 みなさん、小さい頃記憶で特に鮮烈なものはありますか? 本当かどうかわからない、でも強く記憶に残っているもの。そんなものはありませんか?


 折上は小さい時に、天使を見ました。


 見た、という記憶があるだけで、確証はありません。記憶は薄れるものですからね。思いこめば捏造だってできるし。

 ただ、天使を見たという記憶だけが脳に焼き付いています。

 確か、キリスト教系の幼稚園に通っていた時に礼拝堂で何かしていた時だったと思います。天井から天使が降りてきました。多分光ってた。そんなことをうっすら覚えてる。昔はシチュエーションもほとんど思い出せたのですが、今はこれが限界です。なんの情報も得られませんね。


 折上が通っていたそのキリスト教系の幼稚園は、もう潰れてしまいました。だから、もう一回行ってみることができません。もう廃墟も同然だし、何より保育園より前の出来事なので、どこに礼拝堂があったのかすらわかりません。答えを知る人は誰もいません。


 天使って、なんとなく死ぬ間際の人のお迎えに来るイメージがありますが、まあ礼拝堂という祈りを捧げる場なのであり得ない話ではないですね。でも、なんのためにきたんでしょうね? 


 祈りに応えた? 誰かを迎えにきた? 何かを伝えにきた?

 そもそも。


 本当に天使はいたのでしょうか?

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