第4話 折上と自傷行為のはなし(毒)

 この話は人を選びます。特に今、情緒が不安定な人、不安定になりやすい人は読まないことを推奨します。感化される困るので。

 大丈夫ですか?


 それでは毒入りの話、始めます。

 









 折上には自傷癖があります。何か辛いことがあると、不意に身体を傷つけたくなってしまうのです。

 きっかけはもう覚えていません。ただ何かがとてつもなく辛くて、消えてしまいたくて、中学生の時、初めて掌を傷つけました。冬だったから、学校ではカーディガンの袖で隠して、家に帰ってきたら薄く傷つけることを繰り返していました。

 ある日、それが友達にバレました。咄嗟に、「壁に手をついて擦った」と嘘をつきましたが、多分バレてたんだろうなあ。擦ったような傷じゃなかったから。

 バレて心配されるのが嫌で、その時期はそこで終わりました。


 次は高校生の時。また折上は掌に傷をつけていました。親と喧嘩して、消えたくて、でも手首を切るのは怖くて。ベッドの中でひたすら掌を切っていました。薄くつけていた傷は日に日に深くなり、血が出てくるのを呆然と見ていました。

 今度はそれが、親にバレました。

 必死に隠したから傷は見られてないけど、枕元にあった刃物を見て察したのでしょう。部屋中の刃物を取り上げられました。

 でも不安で、ひとつだけ刃物を回収して心を保っていました。親にバレるとわかった折上は、そこで一旦自傷を止めました。


 一番酷かったのは大学生の時。親元から離れて一人の部屋に住んでいたので、もう駄目でした。話せる人もいなければ、刃物を取り上げてくれる人もいない。バイト先で手の傷は報告義務がありめんどくさかったので、今度は二の腕に傷をつけるようになりました。

 傷が見えなければバレることもない、心配されることもない。そうして自傷行為は止まることを知らずに、エスカレートしていきました。

 高校の時までは、本気で死にたいわけじゃなかった。ただ、意識を逸らす方法としてやってるだけだった。でも、大学の時は違いました。

 車道を走る車を見て、飛び込みたいと思った。ニュースを見て、誰かに殺してもらうことを夢想した。「消えたい」じゃなくて、「死にたい」と思うようになった。

 今までとは違うと思い、慌ててカウンセラーの先生のところに相談に行きました。全部話して、医療機関の受診を勧められました。学校が提携している病院に行って薬をもらい、今も服薬を続けています。

 自傷行為って、薬で治るものじゃないんです。それが癖になっちゃってるから、いくら薬を飲んで心を落ち着かせても、衝動に駆られてしまえばやってしまうものです。


 もし同じ状況の人がいたら、早めに誰かに相談するんだよ。学校の先生でも、親でも、友達でも。折上は助けを求めるのが遅かったから、こんなに長引いてる。

 切る前に相談! 折上との約束ね。

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