上履き――柴田翠

「うーん、ないねー……」


 私達は、上履き探しに苦戦していた。


「家に持ち帰った、とかない?」

「持ち帰ってないです……」


 やっぱり隠されたとは言えない。


「あっ!」


 俯いていると、星宮さんが声を上げた。


 驚いて顔を上げると、彼女はごみ箱の中に手を突っ込んでいた。


「え、なにしてるんですか……⁉」


 私が声を上げると、星宮さんは手をごみ箱から出した。薄汚れてしまった彼女の手に握られているのは、私の上履き。


「こんなところに……星宮さん、ありがとうございます」

「どういたしまして。どうしてこんなところにあったんだろうね……?」


 不思議そうにそう言う星宮さんに、私は首を傾げることしかできなかった。


「あ、探してたらもうこんな時間……早く教室行かないと!」


 星宮さんが「一緒に行こう」と私に微笑みかける。


 私は戸惑いながらも、小さく頷いた。

 彼女の笑顔が、何よりも眩しかった。

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