第16話 負の連鎖
晩御飯の時にテレビをつけると、たまたまやっていたテレビで、死後の世界と交信できるものがいると噂の南米の民族が取り上げられていた。
「死後の世界との交信か、あれはダメだ、完全に負の連鎖を起こしてしまうからな」
僕がまだ平安にいた頃。
一人での活動を始めて彼と出会ったばかりの時のこと。
彼の出身の近くの村が一つ滅んだ話を聞いた。
『何で滅んでしまったんだい?』
『それはね、そこにいた君と同じ術師の人間が死後の世界とつながる方法を見つけてしまったからなんだよ」
『死後の・・・世界と?』
『僕の村でもかなりの犠牲者が出たぐらいだったからね』
『その術師は死後の世界との交信を成功させた後、みんなにもその術を見せたらしくて、まず最初にその村の村長さんが呼びたい人を呼んだらしいんだ」
『古くからの友人だった人と話をして、すごく感動したらしいんだけど、交信を一度終えてから無気力になって、ついにはその友人に会うために自殺しちゃったんだよ』
『そして次は村長の奥さん』
『村長がいなくなった悲しみから、その術師に交信を頼んで、しばらくはそれでよかったんだけど、やっぱり実際に会いたいって言って後を追った』
『その後は、取り残された子どもたち』
『周りの人達に育ててもらってたんだけど、やっぱり実の親がいないのが寂しかったみたいで二人して自殺』
『次はその息子たちの親友だった子ども』
『ずっと仲良しだった友達だからそのまま後を追った』
『次はその親』
『息子を失った悲しみでそのまま後を追った』
『その次は、その親と仲の良かった同世代の友人』
『この負の連鎖を止めようと最初は我慢したらしいけど、そのうちの一人が断る術師に頼み込んでまた交信したらしくて、そのまま話をした後に後を追った』
『残りの人たちも、芋づる式で後を追ったみたいだしね』
『そしたら次は、その子どもたちも全員また後を追った』
『この辺から、噂を聞きつけた僕の村の人たちでも、その村の人たちと仲の良かった人は最後にどうかって術師に交信を頼んで後を追った』
『その後も、その後も、同世代の友人同士のつながりや親子同士のつながりで負の連鎖は止まるところを知らなかった』
『最後に残ったのは、僕とその術師だけ』
『彼は罪悪感からいますぐにでも死んで償いたかったみたいだけど、唯一後を追わなかった僕だけは育て切ってから死んだよ』
『え、じゃあ君以外はその村も君の村も全滅ってことかい』
『そう言うことになるね』
『でも、君が後を追わなかっただけでも良かったと思うな』
『僕だけ残るか全滅かだったからそんなに変わらないと思って生きることを選択しただけだよ、それに、死ぬこと以外でその術師に償って欲しかったしね』
『君は、優しいね』
『そうかな、どちらかと言うと薄情な方だと思ってるけど』
『そんなことないさ、君はとっても・・・』
「いい奴だったな・・・」
死後の世界との交信なんてのは、絶対にあってはならない。
そんなものができた暁には、彼からその失敗例を聞いた僕ですら死の道を選んでしまいそうなくらい、本当に恐ろしいものだからだ。
生と死の境界は思っているよりも密接な関係だからこそ、これからも気をつけなければならないと、そう思った。
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