第14話 月曜日の妖怪

週初めの打ち合わせの日。


「月曜日ってなんでこんなにやる気が出ないんですかねぇ」


「僕から見たら君はいつだってやる気ないように見えるけどな」


「随分ないいようですけど、私結構取材のネタ提供とかお手伝いしてますよねぇ?」


「別にそれがなくたって書いてるよ」


「やな感じぃ」


そんなことを話していると、突然あたりが真っ暗になり、僕以外のカフェの客、店員など全てがいなくなった。


「なんだ急に?」


「おい」


背後から話しかけられ、僕は瞬時に後ろを向いて身構えた。


そうして振り向いた先には、人型で。全体的に月をモチーフにしたアクセサリーのようなものをつけ、指の先端が丸く曲がってdの形で、額にはMの字を携えた訳のわからない奴がいた。


「お前もなのか?」


「お前もってなんのことだ?」


「お前も月曜日が嫌いなのか?」


「は?」


「仕方ない、まず先に俺が自己紹介してやる」


「俺の名は月曜日の妖怪こと、焦日月モンディーだ」


「お前らが勝手に月曜日から学校とか働くとかって決めたせいで、理不尽に月曜日のことを忌み嫌ったせいで生まれたのさ」


「はぁ、なるほどね」


正直、めちゃくちゃ笑いそうだが、とりあえず堪えて冷静に話を続ける。


「それで、僕の前だけに姿を現してどうするつもりだ?」


「交渉しに来たのさ」


「交渉?」


「あぁ、今お前と一緒にいたそこの女は月曜日が嫌いと言ったよな?」


「確かに言ってたな」


「だから今すぐにでもこの腕のムーンナイフで首を掻っ切ってやりたいところだが、たまたま見かけたからと言う理由で殺すのは俺も心が痛い、だから交渉だ」


「だがその交渉の前に、貴様が月曜日が嫌いか嫌いじゃないかで話は変わるのだ」


「なるほど、僕は月曜日は別に嫌いじゃないよ」


「小説家だから仕事のタイミングは曜日で決まってないしね」


「なるほど、合格だ」


「これより交渉の内容を話す」


「お前がこの女の月曜日嫌いを治すことができたら殺すのは勘弁してやろう」


「なるほどな、わかったよ、受けてたつ」


「よし、じゃあ俺はこの世界で見てるから、お前だけは現実世界に一旦戻れ!」


そう言われると、さっきまでいたいつも通りのカフェに戻って来ていた。


「あー、君、いきなりなんだけど、その、なんだろうか」


「月曜日嫌いというのは改めた方がいい」


「えー、なんでですかぁ?」


「それはだなぁ、えーっと、かわいそうじゃないか?」


「どういうことですかぁ?」


「何というか、人々が勝手に月曜日から学校とか働くとかって決めただけだから、月曜日を嫌うんじゃなくて、あくまでタイミングをここにした人を恨めと言うかなぁ」


「なんかぁ、よくわからないですぅ」


「まぁ、だよな」


「じゃあここからは真面目な話だぞ?やはり月曜日が嫌とばかり言っていてはその後に控えている四日でもやる気なんて出せないと思うんだ」


「だから、そのー、休んでからまた働くと言うのは嫌気が多少あるかもしれないが、一番力を出せるタイミングって考えれば少しは前向きに働けると思うんだよ」


「なるほどぉ?」


「それに、働き始めから嫌だと言って仕事をするよりも、今日からまた頑張ろうと引っ張れるような人になって欲しいと思っているんだ」


「君、最近後輩が入って来たんだろう、なら尚更だ、君はー、その、いい意味で少しおっとりでマイペースだから後輩に変に舐められる可能性があると思うんだよ」


「そうするといいように扱われるかもしれないし、また新しく入って来た後輩にもそう教えられたら困るじゃないか、だから少しだけでも意識改革してみたらどうだい?」


「確かにぃ、舐められるのは嫌ですねぇ」


「少し考えてみまーす」


「想いが伝わってよかったよ」


「それにしても先生、なんか熱血教師みたいでしたねぇ」


「そ、そうかい」


「月曜の熱血教師、ふふっ、ドラマにありそうですねぇ、視聴率悪そうですけど」


「最後の一言は余計だよ」


その後は普通に打ち合わせを終え、帰ろうと席を立つと、また背後から声がした。


「合格だ、なかなかの月曜日愛を感じたぞ、またどこかで会えたら会おう」


打ち合わせから家に帰ってきて、僕は思いっきり爆笑した。


「ま、まさか現代にこんな形で妖怪が生まれるなんてねぇ」


「それにしてもすごい見た目だった、何度思い出しても吹き出してしまいそうだな」


「・・・でも、説得のために矢継ぎ早に言葉を並べてたが、休息の後の始まりからやる気を落としてちゃダメだよなぁ」


天気予報によると、今日は満月らしいので

少し外で月を見ようと思った。

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