第12話 船旅には絆を
信じれなくともそこにはある
目に見えないけどそこにある
それはとてもはかないけど
つながりは強い
「ボスも太っ腹ですよね。日本に帰るまでの三日は船旅になるから休暇にしてくれるなんて」
「私としては、たった三日で日本につくこの船が気になるところだがね。」
私達は船旅を楽しんでいた。
というのも先の任務で、助けた少女たちを、依頼人のMs祭が船で国から脱出させた。
その際、護衛として私たちもついてきたのだ。
1日目の夜
何気なく外に出て、風に当たっているとルカと会った。
少し冷える風に当たりながら、何気ない会話をしていた。
「あの時は先輩もさすがに死んだと思いましたよ。」
「最後に置きあがってきた黒服のことか?あれが避けれずに殺し屋を名乗れるか。」
「いやー、ホントすごいですね。僕には無理ですよ。」
「こんばんわ。」
ふわりとした優しい声が呼びかける。
振り返ると依頼人の波森祭が立っていた。
「眠れませんか?」
「いいえ。ただ、風に当たりたくなっただけだ。」
「僕は、お察しの通り眠れなくて」
祭は、クスリと笑って提案する。
「もしよろしければ、温かいホットミルクはいかがですか?」
3人は船の中に入り、ホールのような場所に移動した。
ヴェルカとルカは座って待っていた。
「お待たせしました。こちらをどうぞ。」
祭はホットミルクが入ったマグカップ3つをテーブルに並べる。
「ありがとう。いただきます。」
「ありがとうございます。」
ヴェルカは一口飲んで、祭に質問した。
「少女たちの様子はどう?」
「大半の子は、私のことを信用してくれました。今も皆、リラックスして眠っています。」
「良かった。慣れない環境ではなかなか眠れないものですからね。」
「はい。でも、まだ警戒している子もいます。そういう子にも信用してもらえるよう努めます。」
「愛ですね~。祭さんのような方でしたら、みんな安心ですね。」
「そうだといいですね。」
「ルカ、そんなこと言っているが、何か悩みがありそうだな。」
私には見えている。ルカが愛想笑いするときの癖が。
まぁ、原因は見当がつくが
「あの18歳の子か。」
「先輩はなんでもお見通しですね。あの子、話してくれないから、名前も分からない。」
祭も少し困った顔をしている。
「私もあの子が心配です。余ほど大人が信用できないんだと思います。」
ヴェルカは思ってることを話す。
「大人だけじゃない、奴隷だった女の子のことも怖がっている。そして一定の子にはもっと。奴隷商品のリストも確認したけど、一番新しい子の様で、写真しか情報がなかった。」
「もしかすると、あの子だけは私のことを一生怖がるかもしれません。」
「・・・」
ヴェルカは考える。そのときホールの扉が開く
「祭…さん。みんな寝たわよ。」
「フィオネちゃん。もしかして、みんなを寝かしつけてくれてたの?ありがとう。あなたがいてくれて助かったわ。」
「ど、どう、いたしまして。ていうか寝かしつけはあなたの仕事なんじゃないの?」
「そうね。でもまだ、私といるより、フィオネちゃんと一緒にいるほうが落ち着く子もいるから。ありがとう。」
フィオネ。奴隷だった少女。船に乗った時から率先してみんなのまとめ役になっている。ほかの子にとって彼女はお姉さんのような存在になっていた。
祭のことはまだ警戒しているが、心が強いからか、「私が何とかしないと」という気持ちで、みんなのリーダー的立ち位置になっている。
「でも、もう10時よ。フィオネちゃんも寝ましょう?」
「私はまだ寝ない。私が見てないところであなたが皆に手を出すかもしれないもの。」
「そんなことしないわ。約束する。朝言ったように、私は皆のことを本当の姉妹や子供のように思ってる。私はあなたたちを愛してる。」
祭がフィオネの頭をなでる。
「でも、団体にはあなたのようなお姉ちゃんが必要よ。それは私には務まらない。これからも、みんなのお姉ちゃんでいてくれる?」
「しょうがないわね。」
そう。船で脱出したのが夜。朝になってみんな起きるとホールに集められた。
そこでMs祭は、自分の過去や目的などすべて話した。
私達が知っているMs祭に関する情報もすべて、自らの口で説明した。
本来なら隠すようなことも、「まずは信じてもらうため」といってすべて話した。
そのうえで、この船のルールを教え、子供たち一人一人に役割を与えて、集団で生きることについても教えていた。
そこで、フィオネにはみんなのお姉ちゃん、つまりリーダーという役割を与えた。
「じゃあ、お姉ちゃんがみんなの手本にならないと。」
「ほんとに今日はもう何もしなくていいの?私は夜まで働いていたからまだ働けるわよ!」
「あなたたちの仕事は、よく遊んで、よく学んで、よく食べて、よく寝ることよ。だから、しっかりお眠りなさい。夜更かしはダメよ。」
「分かったわよ。」
祭は、フィオネを連れて行こうとした。
「少し待って」
ヴェルカはフィオネを呼び止めた。
「レディフィオネ、あなたは一番年上の黒髪の子についてどう思う?」
「あの人ですか?…いつも怯えてて、ブツブツ言ってて、みんな怖がってます。だけど」
「だけど?」
「意外と面倒見がいいですよ。」
「え?!」
ルカは少し驚いていた。
彼女の勇敢な姿を見たと言っていたルカでも少し驚いているということは、やはり大人の前では見せない姿があるのだろう。
「ありがとう。おやすみなさい、レディフィオネ」
「おやすみ」
私はルカと別れた後、用意された自室に向かっていた。
すると、すすり泣く声が聞こえた。
声のするほうへ行くと、泣いている少女と噂の黒髪の子がいた。
「大丈夫、怖くないよ。大丈夫」
黒髪の子が少女を抱きしめ、頭をなでながら、落ち着かせようとしている。
私は二人に近づく。
黒髪の子が私に気づき、顔を上げると、その顔は少し泣きそうになっていた。
おそらく自分でもどうしたらいいのかわからず、抱きしめるという選択肢になったのだろう。
「レディ、どうした。」
「あ、あの、この子。暗いところが怖いみたいで・・・寝れないみたいで・・・」
「この廊下を進んで突き当りの部屋が、少し明かりをつけて寝る子たちがいるところだ。そこに行けば何とかなるだろう。」
「あ、ありがとう、ございます。行くよ。歩ける?」
次の日
午前中のホール
皆が朝食をとっている。私はMs祭のもとに行って一枚の名刺を差し出した。
「ここに連絡しろ。私の夫だ。」
「まぁ!どうして」
「あの黒髪の子、夜にあった。あの子の行動にMs祭が重なった。」
「私に?」
「あの子は優しい子だと思う。しかし、大人には相談できない悩みがある。それはおそらくMs祭、あなただけではおそらく解決しない。だが、私の夫なら解決できるかもしれない。」
「そうですか。では、日本のついていろいろ落ち着いたら伺いますね。」
日本につくまであと2つ日
あっという間だな。
僕は妻の暗殺対象 兎速 香声 @uhayakasei0423
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