第10話 妻の長期任務 前編

根回し 情報収集 努力

考え、あらゆることを想定して準備せよ

さすれば物事は望む道となる

これが私の仕事だ


とある富豪の豪邸の客室

壁にはいかにも高そうで趣味が悪い絵が飾られている。

この家では、多くの少女の奴隷が働いていた。

客室では、豪邸の持ち主である男とスーツ姿のヴェルカとルカが話をしていた。

「では、ここの子供奴隷をすべて回収するというのですね?」

「その通りです。」

「では、今まで奴隷共がやっていた仕事はどうなるのです?」


ヴェルカは堂々と答える。

「我がゴールドジン社が補填として代理の奴隷を派遣します。それと、」

ヴェルカがルカに目線を送ると、ルカが大きなアタッシュケースを開ける。

そこには大量の札束が入っていた。

「おおぉ!」

いくら富豪と言ってもこの男は金に目がないのは情報通りだな。

「こちらを給付しますので新しい奴隷をもうすぐ開催される、例のオーディションでお買い上げください。」

「ムフフ、いいだろう。連れていけ」


とある港

先ほどの富豪の使いが檻に全ての少女を閉じ込めた状態で二人に渡した。

二人は使いの者が去ったことを確認すると、ヴェルカはルカに説明を任した。

「みんな、お疲れ様。僕たちは君たちを助けに来たんだ。君たちを奴隷ではなく、家族として迎え入れてくれる人のところに案内するから、もう少しだけ我慢してもらっていいかな。」

少女たちは、完全ではないが警戒を少し説いた。

数人に至ってはルカのイケメンさに思わず顔を赤らめる者もいた。

「君が女たらしだという美沙の言葉はホントかもしれないな」

「そんなわけないでしょ。」


二人はまた離れた港まで、少女たちを連れて行っていた。

「なんで檻から解放したのに、手足を縛ったんですか?」

「こうしているほうが奴隷商人のように見えるからだ。ここだけの話。ここは富豪が集まっているだけに奴隷は当たり前の存在だ。だから、奴隷商人が歩いていても何の疑いも持たれない。ここの富豪たちは普通の通行人に扮した奴隷商人を見分けることができる。だからあえて、その奴隷商人に見えるように歩いているほうが、彼女達も安全だ。」


「あ、お待ちしてました。皆さん無事ですか?」

目的地の港に、その女性がいた。

服装は花柄のゆったりとしたワンピースをしており、頬には人身売買時代につけられた傷がついていた。

彼女の相手は主にルカが担当している。

「大変お待たせしました、波森 祭さん。これで、過去に売られた子供たちは全員です。」


そう、彼女こそ依頼人の波森祭。彼女の後ろには大型の船が何層も止められており、これで、子供たちを日本に連れていくとのことだ。

「みんな、この人がみんなを助けてくれた波森祭りさんだ。これからみんなのお母さんになる。この船に乗ってね。」

ルカがそう言うと、今回助けたこの中で一番年上でリーダー格の女の子が前に出た。

この子は、今回の任務で出会ったどの子よりも一番警戒している。

「あなたは本当に信用できるの?私たちはオークションで売られた。そこの二人だって、私たちをあのじじいから買ってた。あんたたちはあの男と何も変わらない!」


そういうとMs祭がその子に近づき、目線を合わせる。

「私は波森 祭。あなたは?」

「フィオレ。」

「フィオレちゃん。花を意味する名前ね。いい名前ね。」

「だから何よ!」

「私もあのオークションで売られたの。この傷は、その時につけられた傷。」

フィオレと名乗った少女は、少し目に憐みの色を浮かべる。


「私も買われた。でも私を買ってくれた人は助けるために買ってくれたの。その人は私の家族になってくれた。無償の愛を与えてくれた。だから私もあなたたちを助けたい。幸運なことに私の家族はあなたたちを助けれるだけのお金を残してくれた。悲しいことにオークションで売られたあなたたちを助け出すには、お金で解決しなくちゃいけあい部分が大きいことは確かなの。」

「結局同じじゃない!」

「否定しないわ。私はあなたたちを買ったわ。それにこれから、あの人たちにお金を払って、オークションで売られる子たちを助けてもらう。決してきれいな手ではないわ。でも、全員助けるって決めたの。」

祭さんは立ち上がり、手を差し伸べる。

「すぐに信用してだなんて言わない。でも、あなたたちを家族にするってい持ちに嘘わないわ。フィオレちゃんはみんなのお姉さんなのね。長い船旅になるの。みんなを助けてあげて。」

「分かった。まだ信用はしないけど、みんなを守るためにあなたを利用する。」

そういうとフィオレは手をにぎった。


フィオレの指示で皆が船に乗り込む。

私はMs祭に話しかける。

「よく丸め込むことができたわね。尊敬する。」

「信用してもらうために寄り添っただけです。少し強引でしたけど。」

「…本気なんですね今回の依頼。まさか依頼人本人が現地に来るなんて。」

「私は愛を与えたいだけです。愛を知らない子たちに、私も与えてもらった愛を。そのためなら今回の依頼にお金は惜しみません。」

「愛?私は愛というものが分かりません。そんなものは存在しないとさえ思っています。」

「そうなんですか?結婚とか、されてはいないんですか?」

私の頭にはミスター柊の顔が思い浮かぶ。

「やっぱり!こんなにきれいな人なら結婚されてると思っていたんです。」

Ms祭は柔らかく笑う。

「ご想像にお任せします。」

「なれそめをお聞きしたいですが、さすがにはしたないですね。」

「個人情報ですし。仕事上簡単に明かせれませんね。それに好きだとか愛とかは都合よく作られた言葉だと思っています。」


「都合よくていいんですよ。私は愛したいから、あの子たちを愛する。これは私の都合にすぎませんから。」

Ms祭はふわりと笑っていた。


ある通りのカフェ

「よくあんな作戦を思いつきましたね。」

「私たちが今回のターゲットの会社の名前を使って奴隷を回収していると言う。ここまでならだれでも思いつく。」

「だからあの大金で、ホントだと思わせる。でも、偽札じゃなくて本物渡しちゃってよかったんですか?」

「あの手の富豪は、鑑定士がいる場合があるからあえてな。それに今回の依頼人は、この依頼にかなり力を入れていて、あの大金以上の金が報酬になっている。黒字は目に見えている。」

「なら僕たちも本気で行かないとですね。」

「では早速だが、明日のオークションのために情報共有と確認をしよう。」






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