第5話 夫の趣味は仕事になる ガーデニング編
そこにある神秘 未知の領域
そこは生命にあふれていて
心に癒しを与えられる
そこが危機が迫ると隠れた殺意が表れる
僕の趣味についてヴェルカに聞かれていた。
特撮の作品を鑑賞した後のこと
「そういえば話の続きだったな。」
「あー忘れていた。」
「ガーデニングだったか。」
そう僕の趣味・・・いや、趣味に近いものになったという表現が近い。
「もともと趣味ではなかったんだ。」
「どういうことだ?」
ヴェルカが首をかしげる。座高が低いから僕を見上げているその瞳が、僕を射止める。おっと危ない、惚れるところだった。
「あ、もう惚れえたか」
「な、なんだ急に」
ヴェルカの顔が急に赤くなる。そして急に音速のごとくこぶしが飛んできた。狙いは腹。受け止める?いや、ムリだ。距離はソファに2人とも座っている状態のため反射神経がいい人なら受け止められるだろう。だが、彼女は力の入れるタイミング、ツボ、速度は暗殺者ということを思い出させる。非力な僕が受け止めようものなら骨が折れるどころじゃすまない。
こういう時は、受け流す。幸い柔らかいソファの上だから無茶な動きもできる。
と思っていたのだが、浅く座っていたのもありズレ落ちてしまった。すると、そこに腹があった場所を的確に拳が当たっていた。ふー、危なかった。比較的今回は殺意のある拳ではなかっt
ジャキンッ!!!
「ヒュッ」冷や汗が額を濡らした。
袖からナイフが出てきた。ソファの綿が飛び出てきた。殺意マシマシだった。
「が、ガーデニングの話に戻ろうか」
庭に出て、ヴェルカを自慢に花壇に案内した。そこには季節の花々や好きな花が咲いていた。一軒家の庭のため、大きさはかなりでかい。さらに海沿いにあるため海が映える。
「いろんな色が窓から見えると思っていたが、よくこんなに育てたな。」
「始めは苦労したけどね。4か月で育てたにしてはよくできているほうだと思う。」
「このガーデニングはなんで育てたんだ?」
「君のためかな・・・」
「私のため?」
「覚えてる?僕と結婚してまだ始めのころ」
君はよく血まみれで帰ってきたでしょ?帰ってきたら次の日までしゃべらない。食事はしてたけど、君自身がただの手順として食べてたから正直、見てておいしそうだとは思わなかったんだ。君自身次の日にならないと暗殺者モードが向けなかったから。
でも、ある日、綺麗な桜の花びらを詰め込んだハーバリウムを結婚記念品として買ってきてて、それを机の真ん中に置いていたんだ。食事を君に元に運んだら、そこには目の輝きを少し取り戻した君がハーバリウムを眺めていたんだ。
「これは・・・なんだ?」
「ハーバリウム。結婚記念に買ってきたんだ。どう?」
「き、れいだな。」
だんだん目に光が宿ってきてね。
「生きる者の輝きは美しい。」
その日の食事はおいしそうだったよ。
「覚えていないな」
「つれないね。でも、その時から君に美味しいご飯をふるまうには、生の輝きを君が受け止めれるものが必要だと思ったんだ。だから、手始めに花を育て始めたんだ。」
「余計なことを」
「でも、窓を見た君の眼には、優しさがあった。そうじゃなくても、色が華やかに咲き乱れて、僕の気持ちも癒されていた。季節に合った色が見えるのは生活に潤いをもたらせた。」
僕自身、血を見るより花の方が仕事がはかどったし。
「花の知識が着いたこともあって、恋愛物語を書けてるし」
「花の知識か。」
「花も頑張って生きてるのを見たら、なんだか愛着がわいちゃって」
そこから、ヴェルカの心を少しでも癒せる物を置き始めたり、行事事やったりした。ヴェルカのために始めたはずのガーデニングはいつの間にか趣味になった。
「長くやってるうちに趣味になったんだ。」
特撮に比べると沈黙が長い。面白くなかったかな?それか、暗殺者の私に嫌味か?とか思ってるのかな。
「綺麗だな。花は良い。私にも潤いがある。」
え?なんか好印象
「ミスターは、ミスターなりに考えて私と結婚しているのだな。」
「み、見直した?」
「ふん・・・」
今日はよく、頬が赤いヴェルカを見れる。
もっと笑顔になって欲しいけど、まだ無理かな。
「今はどんな花を育てているんだ?」
「夏だから向日葵とか、アジサイとかハイビスカス、フヨウとか」
「ただ植えるだけではないのだな。」
「アジサイは咲く時間も限られてるから、今は咲いていないけど。」
「いつ咲くんだ。」
「朝だね。」
「では、明日早く起きて見なくてはな」
フッと笑うその顔は、破壊力がとんでもなかった。
花を見せることは意外とよかったのかもしれないな。
「そうだね。僕のお気に入りを見せてあげるよ。ちょっと待ってて」
僕は部屋に戻って、ある花を庭にいるヴェルカのもとに持ってきた。
「不思議な花びらの花だな。血のようだ。」
「僕が好きな花なんだ。ちょうど球根を今の時期に植えるんだ。」
「なんていう花なんだ?」
「これは彼岸花。茎に毒があるからちょっと危ないけどね。これは1年中育てている 農家さんから買ったものなんだ。9月になれば庭にもいっぱい咲くよ。」
「そしてこれにはいろんな別名がある。彼岸の時期に咲く花でも、あるから幽霊花とか死人花とか。・・・地獄花とか」
気が付くとそこにあったものは命を失った。
手向けられたのは赤くて美しい彼岸花だった。
妻視点
ミスター柊は私のことを想って、花を植えてくれていたのか。
たしかに結婚したては、ミスターのことはただのターゲットだった。そんな者が作る料理はいつも警戒して食べていた。食べなければ、結婚したものとしては不自然過ぎたからな。でも、味はしなかった。
あのハーバリウムはよく覚えている。彼なりの愛情だと思った。煌めいていたピンクの花びらは、私に生きていていいと許されているような気がした。
彼が作った花壇は、銃の手入れをしているときや、情報収集しているときも、ふと目をそらせば、人間に引き戻してくれた。
私のためだなんて、好きになってしまう。
いやいや、そんなものではないはずだ。ただ、鼓動がうるさいだけだ。
「僕が好きな花なんだ。ちょうど球根を今の時期に植えるんだ。」
そこにあったのは美しい血だった。そして生命を感じた。不思議な花だった。
「なんていう花なんだ?」
「これは彼岸花。茎に毒があるからちょっと危ないけどね。これは1年中育てている 農家さんから買ったものなんだ。9月になれば庭にもいっぱい咲くよ。」
私でも触れていいと。生きているものを愛でてもいいと語りかけてくれているようだった。
「そしてこれはいろんな別名がある。彼岸の時期に咲く花でも、あるから幽霊花とか死人花とか。」
地獄花とか
景色が暗転したかのようだった。覚悟していたはずだった。
『おまえはいつか地獄に落ちるぞ!!!』
私が人間をやめた日
私は忘れたはずだった。
『地獄で待っているぞ!!!さすが私の!!!』
「やめろ!!!私は地獄になんか!」
その手にはナイフが握られた。手をただはらったつもりだった。
だが、目の前には、黒くて醜い彼岸花が咲いていた。
それが、ミスター柊の血だと気づいたのは遅くなかった。
ナイフはどこに行った?手からは離れていた。
見渡すと彼の後ろの花壇の向日葵が何本かナイフで切断されていた。ミスター柊の腕もぱっくりと傷口が開いていた。
気づいた時には遅かったのだろう。
彼は無言でしっかりとゆっくりと無残な姿になった向日葵に近づいた。
ただ黙って花に手を添えた。まるで死人を手向けるかのように
「み、ミスター」
気づいてしまった。彼は今どんな顔をしているのだろう。とんでもない殺気を放っていた。私ですら足が動けなくなるほどに
「ごめんなさい」
ふつうの声のはずなのにその声はどす黒く、殺意であふれていた。
「謝る相手は僕じゃないだろ?」
「花も生きてるんだ。僕のことはどれだけ殺しに来てもいいし、傷つけていい。君ほどじゃないが動けるから、ナイフを向けられても避けれる。物だっていくら壊してもいい」
だれが僕以外を殺していいと言った?
その目は私を殺した。
私は彼の逆鱗に触れてしまった。
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