7/28 苦労と火遊び

(BLです)






 こっそり、大人に内緒で、誰も来ない裏庭の隅で、何度か火遊びをした。

 身を隠して、ドキドキする気持ちでライターを持つ。

 火をつけた瞬間の、パッと姿を現す炎の揺らめきに、高揚で胸が弾んだ。

「すごいね」

 隣で、キラキラと目を輝かせる男の子。

 お隣の家の、オレと同じ年の友達。

「キレイだろ?」

「うん」

 二人で、しばらく火を眺める。

 大人に隠れて悪いことをするのは、ちょっとした冒険だ。

 必ず見つかって雷を落とされるのに、すぐに忘れて、また同じ過ちを繰り返す。

「あ、きえちゃった」

「もういっかいな」

 カチッとスイッチを押すと、また火がつく。

 だけど、ずっと点けてると熱くなってくる。

「ボクもやりたい」

「いいけど、気をつけろよ」

「うん」

 ライターを渡すと、彼は目を大きく見開いて、ライターを眺める。

 どうして火がつくのか、不思議でたまらないという顔だ。

「はやくしろよ。見つかっちゃうぞ」

「うん」

 彼は緊張した様子で、カチッとスイッチを押した。

 小さな炎が一瞬にして現れる。

「うわぁぁ」

 歓声をあげる彼に、なんとなくいい気分だ。

 普段は、危ないからという理由で、手の届かないところにあるライターを、苦労して取ってきた甲斐があった。

 彼が喜ぶ顔は、ライターの小さな火よりもずっとキレイだ。

 何度もカチ、カチと火を点ける姿を、ずっと眺めていた。




 やがて父親にみつかって、ゲンコツと雷をくらうのだが、後悔はなかった。

 またいつか、彼に見せてあげよう。

 そんなことばかり、考えていた。




(終)




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