【ダンジョン回】執事、ドラゴン娘に出会う

「がおっ!」

「うわっ!?」


 卵から生まれたのは、赤い体に黄色い目をしたミニドラゴンだった。


「がお?」


 ミニドラゴンはこちらを見て、首を傾げている。


「か、かわいい〜!」


 あまりの可愛さに思わずボクはミニドラゴンを抱っこする。ずしりと重さを感じて、見た目よりも重量はある感じだ。


「がお……」


 ぎゅるるるる。ミニドラゴンのお腹から音が鳴る。


「わわっ、お腹が空いてる!? み、ミルクでいいのかな!? と、とりあえずお嬢様に報告をしないと!」





「め、めちゃくちゃ可愛いじゃないか!」

「うわぁ、可愛いですね、兄さん!」


 お嬢様とリコがミニドラゴンを見て、目をキラキラと輝かせている。


「ミルクで問題ないんですよね? お嬢様」

「今、知り合いの上級テイマーから話を聞いた所、人肌に温めたミルクで問題ないそうだよ」

「はい、では……」


 ボクはフチのある皿に、温めたミルクを注ぎ、ミニドラゴンの目の前に置く。


「がお?」


 ミニドラゴンはくんくんと匂いを嗅いだ後、


「がお♪」


 と言ってゴクゴクとミルクを飲みだした。


「兄さん、飲んでますよ!」

「ふぅ、飲んでくれて助かったよ……」

「とりあえずこの子の名前を決めないか? 名前がないと不便だろう?」

「そうですね」


 お嬢様の提案により、ミニドラゴンの名前を決めることになった。


 むむむ、ドラゴンの名前かぁ……。そうだなぁ……


助六すけろくなんてどう?」

「イヤ……がお!」

「──え?」


 今、確かにミニドラゴンから声がしたような……。


「お、おい……まさか、このドラゴン……」

「「「しゃ、喋ったあ!?」」」





「まさかドラゴンが喋るなんてね。私は聞いたことがないな……」

「まさかですね、兄さん」

「うん、びっくりしたよ……」


 少し様子を見てみるが、再び喋る様子はない。


「とにかく名前を考えましょう、兄さん」

「そ、そうだね。なんか案がある? リコ」

「そうですね……。イエローアイズ・レッドドラゴンなんてどうでしょうか?」

「うわぁそれいいね、リコ!」

「イヤ……がお!」

「ダメみたいだね、リコ……」

「かっこいいと思ったんですが……」


 な、なかなか難しいな。


「お嬢様は何か案がありますか?」

「う〜ん、そうだね……」


 お嬢様はあごに手を当てて思案する。


「──ポチでいいんじゃないか?」

「論外……がお!」





 結局、三人であーでもない、こーでもないと考えた結果、光を意味する“ルミナ”と言う名前に決定した。


「よろしく、ルミナ!」

「がお♪」


 よかった、どうやら気に入ってもらえたみたいだ。


「さて、ルミナの世話はどうする?」

「ボクに育てさせてくれませんか? お嬢様」

「ふむ、リオがいいならそれでいいよ。基本はリオ、そして学園に行ってる間は雇ったテイマーに任せる方針。それでいいかな?」

「はい!」

「兄さん、私も手伝います!」

「私もなにかあったらいつでも言ってくれよ? リオ」


 方針は決まった。よし、この子を立派なドラゴンに育ててみせる! 


「今日からはボクは執事ではなく、竜騎士と名乗らせてもらいますね、お嬢様!」

「兄さん、かっこいいいです!」

「ダメだ……」





 ルミナはぐんぐんと大きくなり、今ではボクの背と同じくらいの大きさだ。


「そろそろダンジョンとか行ってみる?」

「がお!」


 そしてついに今日は、初めてルミナと一緒にダンジョンへ行ってみた。すると早速、モンスターが現れる。


「ゴブリン群、およそ30体。やれるかい? ルミナ」

「がお!」


 ルミナは息を大きく吸い込み、灼熱しゃくねつのブレスを吐き出した。


『ギャアアアアアアアア』


 辺り一帯を焼き尽くす業火ごうかが、ゴブリン30体を瞬殺する。


「この威力……。S級モンスターに匹敵するか、それ以上だよ! すごいよ、ルミナ!」


 ボクはルミナをよしよしとなでる。


「がお♪」


 ルミナは気持ちよさそうに撫でられている。





 ボクとルミナは今、屋敷のお風呂に入っている。ルミナのダンジョンでの汚れを、丁寧に洗ってあげている途中だ。


「ふふっ、気持ちいいかいルミナ?」

「がお! が……お?」

「……ん?」


 ・・・おや!? ルミナのようすが・・・!


 ルミナが発光している。


「うわっ、まぶしっ! え?」


 発光し終えるとなんとそこには、燃えるような赤い髪と透き通る黄色い瞳をした美少女がすっぱだかでいるではないか。


「え? ルミ……ナ?」

「ご主人様ー!」

「うわあああああああああああああ!?」


 裸の美少女がボクに抱きついてきた。


「ルミナだよ! 成長して人型に変化できるようになったの! えへへ、ほめて!」

「えええええええ!?」


 するとドアがガラッと開いて──


「リオ、大声がしたがどうした!?」

「兄さん、大丈夫ですか!?」


 アリスとリコがなだれ込んできた。


「………………」

「………………」

「………………」

「…………がお?」


 沈黙が場を支配する。


「うわあああああ! リオが屋敷に女を連れ込んで裸同士でイチャイチャしてるぅ!?」

「きゃあああああ! 兄さん? 嘘ですよね!?」


 2人はボクの裸を見て、指でとっさに自分の目をふさいでいる。あの……指のスキマからこっちを見るのやめてもらっていいですか?


「ご主人様、どうかしたの?」


 ルミナが小首を傾げている。


「あわわわわわわ……」

「ご主人……様? まさか、リオ……君はそう言うプレイが……」

「ち、違います!」

「兄さん……? どうして妹プレイじゃないんですか?」

「なんで!?」


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