【学園回】執事、学園に行く
「さて、今日手に入れたこの卵どうしようかな……」
大きい白銀の卵の前で、ボクは自室で1人で悩んでいた。
お嬢様には「君が倒したのだから君のものだ」と言われたものの、卵なんてどうしたらいいのか分からない。
ガタガタガタ!
「え? 反応……した? これ生まれるの?」
しばらく様子を見てみると、その後はシーンとしている。
「もしもーし」
ボクは試しにコンコンとノックしてみる。すると──
コンコン!
「うわぁ! ノック返ししてきた! こいつ只者じゃないぞ……」
中々の知能指数を持った生物だとボクは推測する。
「多分、モンスターなんだよな……」
ボクはうーんと悩む。モンスターだとしたら、周りに被害が及ぶ可能性もある。だとすると放っておく訳にもいかない。
「でも──」
しかしこの子はまだ“産まれてもいない”のだ。
犯罪者の子供という理由だけで、決して迫害をしてはいけないように、モンスターの子供という理由で、産まれる前に駆除するのはいかがなものだろうか。
「まだこの子が人に対して、害をなすと決まった訳じゃない……よね」
でももし、人に対して牙を向くようなら、その時はボクが──
さて、眠くなってきた。明日も早い。そうだ、最後に卵に質問をしてみよう。
「────温めますか?」
ガタガタガタ! ふむ、反応あり。
「今日は卵を抱いて寝てみよう……かな?」
♢
ボク達はそんな学園の校門前に下車し、3人で登校する。
「きゃああああああ! アリス様よぉ!」
「今日もお美しいですわぁ!」
「なんて麗しいんでしょう……」
「リコちゃーん! 今日も可愛いね!」
「リコちゃん、こっち向いてくれー!」
「みなさま、例の執事ですわ!」
「あの方が噂の……」
「要チェックですわね……」
校門を抜けると生徒からの熱烈な歓迎を受けた。
「やぁ、みんなおはよう」
お嬢様は慣れたもので、にこやかに生徒に手を振っている。辺りは生徒達はキャーキャーと黄色い声をあげている。
「例の執事様と目が合いましたわぁ!」
「なまらめんこいですわね」
「ドチャクソさわやかな顔でしたわぁ!」
「はぁ……ごっつたまらんですわぁ……」
♢
ボク達のクラス分けはアリスとリコが同じクラス。そしてボクは別のクラスだ。そのまま別れて、ボクは自分のクラスへと入ると──
パンパンパンと激しいクラッカー音が教室に鳴り響く。
「──え?」
「「「「「リオ! チャンネル登録者数1000万人越えおめでとう!」」」」
なんとクラスのみんながボクを囲んで、お祝いしてくれた。
「へへっ、クラスのみんなでよ、リオをお祝いしようって、メッセージアプリで計画してたんだぜ?」
「リオ、お前すげーじゃねーか!」
「チャンネル登録しといたぜ!」
「リオくん、カッコよかったよー!」
「俺もダンジョン配信者にいつか、なってみせるぜ!」
「今度、俺に修業つけてくれないか?」
「フン、やっと俺様と同じステージに立ったようだな……」
クラスのみんなのサプライズに、思わずボクはうるっとくる。
「み、みんな、ありがとう。ボク、これからも頑張るよ!」
「へへっ、楽しみに待ってるぜ!」
「あんまり、無理しないようにね?」
「リオのあの伝説の黒刀、今度見せてくれよ」
「ねぇねぇ、写真、一緒に撮っていい? SNSに上げたら超自慢できるし!」
「リオくんの使った料理、今度食べてみたいなぁ……」
「フン、せいぜい足元をすくわれぬよう、気をつけることだ。我が永遠の宿敵よ……」
クラスのみんなの声援に、心が温かくなる。ボクはいいクラスメイトに巡り会えたなぁ。
「そこまでですよ。はいみんな、席に着いて下さいね」
「「「「「はーい」」」」」
「リオくんは、ちょっと先生のところまで来てくれますか?」
「あっ、はい」
一体、なんだろう? すると先生は頬を赤らめながら、ヒソヒソと耳打ちをする。
「こ、今度、よかったらリオくんのサインをもらえませんか?」
「ボクなんかのサインでよろしければ、いくらでも!」
「やった!」
先生は小さくガッツポーズをする。
「(配信のアーカイブ見ながら、キャッキャッしてるなんて、絶対に本人には言えませんね……)」
♢
「すやすや……」
ボクは卵を抱いて温めながら、就寝についていた。
ピキピキッ!
「……ん?」
ピキピキピキピキッ!
「……え?」
パカーンという音と共に
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