【ダンジョン回】執事、ボスをワンパンする

「だいぶ進みましたね、お嬢様」

 

 ボクがちらりと腕時計を見ると針は12時丁度を指している。


「うん、モンスターの気配もないし、ここら辺で食事といこうじゃないか」

「わぁい! 兄さんの料理の時間です!」


 腹ペコなリコがウキウキとしている。ふふ、待ちきれないのだろうな。


「リコ、結界を頼むよ」

「お任せ下さい、お嬢様。──聖なる光よ、降り注ぎ我らを守りたまえ『不可侵の結界』」


 アリスに頼まれたリコは、モンスター探知用の結界を張る。これでモンスターの襲撃があった際には素早く行動できる。


「ありがとう、リコ。今からさくっと昼ごはんを作るからね」


 ボクはポケットから、調理道具一式と素材を取り出す。今日はメインはスーパーコカトリスを使った鳥料理だ。


「──さて、始めようか」


 ボクは流れるような手つきで、包丁を取り出し、調理に取りかかる。


 トントントントントントントントン!


《調理はやww》

《目で追えねぇよww》

《どんな料理になるんだろ……》





「お待たせしました、お嬢様。こちらスーパーコカトリスの“照り焼きチキン”となります」

「うんうん、ご苦労様。とっても美味しそうだね!」

「うわぁ、いい匂いですぅ!」


 2人はテーブルの椅子に座り、そわそわしている。


「リオも座って一緒に食べよう」

「しかしお嬢様、ボクは執事──」

「執事と同時に、パーティーの仲間でもあるんだ。固いことは言いっこなしだよ?」

「そうですよ、兄さん! 一緒に食べたほうが美味しいですよ!」

「で、では失礼して……」


 ボク達は食事を始める。


「うわぁ、外はカリカリ、中はジューシィ。甘辛いソースが、また絶妙に絡みあっている。うんうん、とっても美味しいぞこれは!」


 お嬢様が目を輝かせて、喜んでいる。よかった、どうやらお口に合ったみたいだ。


「コカトリスの肉で、ご飯が無限に止まりません! 兄さん、おかわりを頂けますか!?」

「はいはい、全くリコはあいかわらずの食いしん坊だな」


 リコはバクバクとコカトリスとご飯を頬張っている。


《すげぇうまそうww》

《ジュルリ……》

《リコちゃん、毎度毎度食いすぎだろww》

《なんで太らないんだ?》

《胸に行ってると思われ》

《飯テロやめろww》

《スーパーコカトリスなんてめちゃくちゃ貴重食材だからなww》

《うおー食いてぇ!》





 着々とボク達はダンジョンを踏破し、ついに最下層の手前──つまりダンジョンボスがいる直前のエリアまで辿りついた。


「リコ、ありったけの補助魔法をみんなにかけてくれるかい?」


 お嬢様がリコに言う。


「承知しました。攻撃バフ、防御バフ、スピードバフ、全てをパーティー全員にかけます」

「ありがとう、リコ。力が沸いてきたよ」


 ボクはリコに礼を言う。


「さて、確か情報によると、ここのエリアボスは白銀竜だったな。危なそうなら撤退する。みんな、くれぐれも無茶はしないでくれたまえよ?」


「「──承知しました」」


「フフッ、じゃあ行こうか」


《うおーついにボスか!》

《浅いダンジョンとは言え、これほどの踏破スピードとは……》

《ボスなんかやっちまえ!》

《気をつけてね、みんな!》





 最下層にたたずむは白銀竜。そしてその周りには、何十匹ものシルバーワイバーンが主を守るように飛び回っていた。


《うわあああああ、やべええええ!》

《シルバーワイバーン一体ですらS級モンスターだぞ!?》

《これは無理だ!逃げろ!》

《もう終わりだぁ……》


「ふむ、まずは雑魚散らしといこうじゃないか。────น้ำแข็งเลือดมา」


 アリスが詠唱を始めると、気がついたワイバーンがアリスに殺到する。


「『“多重”アイススピア』」


 氷で出来た何千本もの槍がワイバーンの群れを容赦なく、蹂躙じゅうりんする。


『ギシャアアアアアアアアアアアアアア!』


「うんうん、中々の威力じゃないか! ドラゴンに負けっぱなしは癪だからね。鍛錬の成果が出たようだ」


《あの上位魔法を多重詠唱で!?》

《S級モンスターが粉々じゃねぇか!?》

《やはりこの世に七人しかいない“億超え配信者”の1人は違うな……》

《とんでもねぇな……》

《アリスお嬢様、お美しい……》


「さて、前座は終了。今日は君が主役だ。後は任せたよ、リオ」

「──承知しました」


 ボクは黒刀をゆっくりと鞘から抜く。


『グオオオオオオオオオオ!』


 仲間を殲滅せんめつした怒りからか、白銀竜は咆哮ほうこうする。


 そして飛び上がったかと思うと、息を大きく吸い、特大のブレスを放ってきた。


《アレはやべぇぞ!?》

《避けろ執事!》

《うわあああああああ!?》


 ボクは跳躍し、刀をきらめかせる。そして、ブレスごと切り裂き、そのまま白銀竜へと迫る。


『グオオオオオオオオオオ!』


 白銀竜はそのままボクを噛み砕こうと、迫ってくるが──


 ────ザン


『グオオオ……オ?』


 ボクは一太刀で白銀竜を切り伏せる。すると、傷口から黒い炎が現れ、そのまま白銀竜を包み込み、跡形もなく燃やし尽くす。


『グオオオオオオオオオオ……』


《すげええええええええええええ!》

《白銀竜をワンパンwww》

《やばすぎでしょww》

《あの傷口から出た黒い炎……なるほど、アレは黒刀の効果ですか……》

《ワンパン気持ち良すぎだろ!》


「ご苦労様、リオ。さすが私の執事だよ!」

「ありがとうございます、お嬢様」

「兄さん、カッコよかったです!」

「そ、そうかな?」


 ────どすん。


 白銀竜が倒されたところに巨大な金の宝箱が現れる。ダンジョンの踏破報酬だ。


「リオ、君が倒したんだ。君が開けたまえ」

「兄さん、早く!」

「分かりました」


 ボクは宝箱をそっと開ける。そして中には──


「……卵?」


 白銀の色をした巨大な卵がそこにはあった。



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