【ダンジョン回】執事、初ダンジョン配信で無双する


 ──ついに今日はボクの人生初のダンジョン配信となる。


「準備はいいかい? リオ」

「は、はい、大丈夫です。お嬢様」

「兄さん、リラックスリラックス」

「わ、分かってるよ」


 初めての配信でどうしても緊張してしまう。


「フフッ、じゃあ撮影を開始するとしよう」


 お嬢様がスマホを操作すると、なんとスマホが宙に浮き、撮影を開始した。


「やぁやぁみんな! 今日は、天王寺社の新製品、自動追尾型スマホで撮影しているよ! 事前予約絶賛受付中! 冒険者の人は要チェックだ!」


 お嬢様がスマホに向かってウィンクする。


《わぁすげぇーな!》

《ダンジョン産のアイテムとテクノロジーの合体……ですね》

《めちゃくちゃ欲しいんですけど!?》

《バイト増やすか……》

《お嬢様今日もかわいいー!》

《わぁーリコちゃんこっち向いてくれー!》


「それと今日は告知した通り、世間を騒がせてたこの執事──“夜桜リオ”も私のパーティーに加入してもらったよ!」


 アリスがジャンとボクの方に手を向ける。


「よ、よろしくお願いします」


《うわあああ、例の執事だああああああ!》

《天王寺のやべー奴》

《きたきたきたきたきた!》

《同接やべぇぞw》

《ぎゃああああああああ》

《ふん、お前の実力、見せてもらおうか……》

《きゃー、リオくんカッコいいー!》


 自動音声出力されるコメントがすごいことになっている。


「今日、挑戦するダンジョンは『異界の森』だ。フフッ、みんな応援よろしく頼むよ?」


《異界の森ダンジョンか……》

《なかなかの難関ダンジョンだな》

《確か未だに踏破されてないんだよな》

《浅いダンジョンの代わりに、浅いところから高ランクモンスターが出るんだよな》

《執事の腕前を見るチャンス──か》


「行きましょう、兄さん」

「うん」


 ボク達はダンジョンに潜って行く。このダンジョン内には不思議な木々が辺りに生え、まるで森の中にいるような錯覚を覚える。


「兄さん、敵です!」


『クケッーコココー!』


 目の前にはS級モンスターの“スーパーコカトリス”が出現した。ニワトリとドラゴンを掛け合わせたような見た目の強敵だ。


《うおっ、いきなりS級モンスターのスーパーコカトリスかよ!》

《さすが難関ダンジョンだな……》

《前アイツに全滅されかけたよ……》

《アイツはやべぇぞ!》


「フフッ、さぁ君の実力を見せる時だよ、リオ」

「兄さん、やっちゃって下さい!」


 ボクはふぅーと息をはく。


「────承知しました」


 ボクはゆっくりと黒い刀のさやつかに手を添える。


「そう言えば兄さんのあの刀は──」

「フフッ、この前の邪竜のボスを倒した際に現れた踏破報酬、“黒刀・邪竜”さ」


《うおおおおおお、あれがダンジョン踏破報酬の激レアアイテムか!》

《すげぇ……、なんてまがまがしいオーラだ……》

《あれはやべーぞ!》

《売れば数十億だろうな……いや下手したらもっと……》

《fantastic!》

《あのー大切にするので無料でもらうことってできますか?》


 ボクは黒刀のさやから刀を抜く。その0、2秒後にボクは刀を鞘に戻す。


 ────チンという刀を鞘に戻した音だけが辺りに響き渡る。


『コケええええええええ!?』


 その瞬間、スーパーコカトリスは真っ二つに切り裂かれ、絶命した。


「え? 兄さん、今、攻撃……した?」

「さすがだな、リオ!」


《えええええええ!?》

《何が起きた!?》

《S級モンスターを瞬殺!?》

《これは本物だああああああああああ!》

《シークバー戻してスローで見てみろ!》

《うわぁ、ほんとだ一瞬で切ってる!》

《なるほど、目にも止まらぬ居合という訳ですか……》

《コケえええええwww》


「あっ、みなさん見てくれました? 漫画とかでよくある、鞘と刀をチンって鳴らした瞬間に、もう敵を切ってる──みたいな技あるじゃないですか? アレ、ちょっと夜な夜な練習してみたんですよ。技名は『さやチン』です!」


 ボクはちょっぴり得意げに解説してしてみる。


「う、うん、私はいいと思うぞ……その技名……」

「兄さん、技名がダサすぎます! エターナルフォースライジングブラック〜黒の一閃〜と名付けましょう!」

「うわぁカッコいいなぁ、リコ! ボク、それにするよ!」

「えへへ、カッコいいでしょ! 兄さん!」


 リコはえっへんと胸を張っている。


「似たもの兄妹だな……」

「じゃあ、このコカトリスは回収しますね〜」


 ボクはポケットにコカトリスを収納する。


《え? あれどうなってんの?》

《物理的に入らないような……》


「あっ、この不思議ポケット、修行中にダンジョンボス倒した時の報酬なんですよ。異空間になんでも収納できて、食材の保存も出来るから、とっても便利なんで愛用してます!」


《修行中にダンジョンボス倒すなww》

《やばすぎて草》

《めちゃくちゃ激レアアイテムじゃねーか!》

《うわぁ便利そうww》

《マジでウチのパーティーに来てくれないかなぁ……》

《私、リオくんに収納されたい……》

《marvelous!》

《すげえええええええええええ!》


「み、みなさん応援コメントありがとうございます……」


 みんなから褒められて、ボクは顔が真っ赤になってしまう。


《褒められて照れてるw》

《か、かわいいw》

《やべぇ、ドキドキしてきた……この感覚は一体?》

《もっと褒めて真っ赤にしたいww》


「フフッ、こういうところも兄妹そっくりだな」

「まったく、兄さんは照れ屋なんですから〜」


 り、リコにだけは言われたくないぞ! よし──


「リコ、今日は一段と可愛いね!」

「きゃあああああああああ!」


 リコの顔がボンっと真っ赤になり、卒倒しかける。


「ほらみろ、リコだって照れ屋じゃないか!」

「兄さん、い、いきなりはずるいですよ!」

「君たちは一体、何をやっているんだ……」


《なにこの可愛い兄妹……》

《まるで鏡合わせのケンカだなww》

《コントかな?》

《もぅマヂ無理 尊い》

《これは推せる》

《お嬢様、こんな可愛い従者がいてうらやましいww》



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