長女

反省の色なし。……だが

 フーさんは腕時計型の端末を弄り、「んー」と唸っていた。

 この時代の端末はスマホのような四角いやつではなく、腕にハメるタイプのようだ。


 小さな液晶をタップすると、空間にスクリーンが浮かび上がり、その半透明なスクリーンをタップして操作する感じ。


 スクリーン越しにフーさんはボクに目を向けた。


「ねえ。爆弾って作ったことある?」

「ねえよ」


 何言ってんだよ。


「そっかぁ。平和ボケ社会の生まれだもんねぇ」

「あのさ。今日、色々フーさんの話聞いたんだけど」


 きょとん、とした顔になったフーさんは、「噂?」と首を傾げた。


「え、同級生の腹に風穴空けたの?」


 ぶっちゃけ、サイコパス過ぎるエピソードにボクはドン引きしていた。


「あー。……あれは、空気圧弄る機械使って、釘を飛ばしたんだよ。聞いて。酷いんだよ。わたしが足トロいからって、みんなで笑って。水までぶっかけてくるし」


 腕を組む姿勢で大きな胸を持ち上げ、頬を膨らませる。


「わたしだって、辛かったんだよ。笑うのやめてって言っても聞いてくれないし。だから、叩いたの。そしたら、突き飛ばされたから、自衛権行使できるなって思って」

「風穴を空けたと?」

「まあね。ただ、学校って医療科目があるから、手術室あるの知ってたし。急所は外したもん」

「もん、じゃねえよ。何してくれてんだよ。おい。少しでもお前に同情したボクがバカだったよ」


 こいつ、狂ってんな。

 それとも、この世界の常識はボクの知ってる世界とどこか違うのかもしれない。まあ、風穴を空ける事自体は、おかしいって認識に変わらないけど。


「ふふん。でもでもぉ、あんたがわたしの味方になってくれてよかったわ」

「そのことなんだけど……」

「今日ね。水上訓練があったの。ぷぷ。相手のボートに穴空けてやったわ」


 この後、ボク達はお姉さんに説教を食らう。

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