他の奴隷たち

 学校に来ると、まずボクが連れてこられたのは、『奴隷待機所』と呼ばれる空間だった。


「ここ、なに?」

「あんたを預けておく場所。学校にきたら、ここに通うことになるから」


 自動ドアが開く。

 中には、ロビーのように椅子がいくつも並べられ、談笑するスペースが設けられている。他にはガラスの仕切りがあって、その中にはジムがあるらしく、体を鍛えている人が何人もいる。


 会食をするスペースはあるし、自販機まである。


 およそ、奴隷が過ごすための場所とは思えない、充実した空間だった。


「じゃあ、わたし教室に行くから。良い子にしててね」

「あ、うん」


 フーさんと別れ、ボクは中に入る。

 中にいるのは、ボクと同じチビな男か、マッチョな男。

 隅っこには、汗だくのおっさんがいる。


 みんな外国人ばかりだし、さっそく居た堪れない気持ちになった。

 想像してほしいのだが、外国人を前に仲良くなろうとした場合、何を話せることがあるんだろうか。


 文化は違うし、人によっては暴力的。

 挙句に、宗教の違い。


 ようは壁が多すぎて、どう接していいか、まるで分からない。


 ボクが迷っていると、身長が二メートルくらいはある、褐色の肌をしたおじさんが声を掛けてきた。


「よお。新入り。新しく買われた奴隷か?」


 白い歯を見せて、二カッと笑う。


「あ、は、はい」


 背は高いし、体はデカいし、声の覇気に押され、ボクは思わず二の腕を抱いてしまう。


「そう硬くなるな。こい」


 ボクが連れていかれたのは、奥の会食スペースだった。


「みんな! 喜べ! 新入りだ!」


 大きな声で呼びかけると、わらわらと男たちが集まってくる。

 ガムを噛んでいるチャラいお兄さん。

 汗だくのおっさん。

 汗だくのマッチョ。


「おぉ。小さいの連れてきたな」

「どこのお嬢さんが買ったのやら」

「よろしくな」


 多くの男たちと握手をして、ボクは一緒に食事をすることになった。

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