第10話

 震災が終わった。

 シンイチは、妻のリノと娘を連れて、再び、東京へ向かった。

 娘は、私立の中学校へ行かせた。そこは、学生寮があった。

 いや、震災の避難所で歌ったシンイチは、かっこよかったと思った。

 それで、妻のリノは、思った。

 そうだ、と。

 結婚前の夫のシンイチは、こんな風に歌が好きだったと。

 そして、思ったのは、夫のシンイチは、歌手になった方が良いと思った。それで、妻のリノは、夫のシンイチのマネージャーになろうと思った。

 そして、こう妻のリノは、夫のシンイチに言った。

「あなた」

「何?」

「あなた、もう歌しかないと思う」

「え…」

「だから、私、マネージャーになる」

「え」

「仕事のことは苦労しなくて良いから」

「…」

「ボイストレーニングを受けたら?」

「そう?」

「その方がいいわ」

 妻のリノは、夫のシンイチに、マネージャーになると言った。それは、夫婦で、自営業をすると言った。

 それは、何年か前のアニメ化されていた漫画『パリピ孔明」と同じだと思った。ただ、あの漫画は、歌い手の月見英子は、女性で、孔明は、転生ものだったけど。いや、そうだったとも思った。

「妻のリノは、若い時、シナリオライターになりたかった。

 そうだ、と。

 シナリオライターになれなかったけど、脚本学校に通っていた時のことは、役に立ったと思った。

 そうだ、と。

 自分たちの人生は、ドラマよりも面白くないといけないと思った。

「あなた」

「何?」

「『パリピ孔明』の漫画みたいね」

「ああ、あの歌手の漫画か」

「そう」

「一緒に観たね」

 夫のシンイチは、ゲームよりも、ドラマが好きだった。

 そんなモテなくて、だけど、少しロマンティックなところがあって。

 そのまま、と思った。

 夫のシンイチは、ボイストレーニングへ向かった。

 いきものがかり『ブルーバード』をやはり、歌っていた。

 世間は、まだ、首都直下型地震の影響があったけど、彼らは、たくましく生きていた。歌が恋人のように。

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Music is lovers. マイペース七瀬 @simichi0505

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